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恋愛短編集「ダメな恋ほど愛おしい」

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ハウコレに連載していた恋愛短編集に、未公開分を追加したものです。 小説、またどこかで書きたいな・・
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#恋愛小説

永すぎた春

永すぎた春

彼は、もはや恋人と言う存在を超えていた。

何も言わずに気持ちが伝わって、別に何か特別なことをしなくても、一緒にいれば安らげた。これが、結婚というものなのかな、と真由は思っていた。だから、あえてその一歩を踏み出すことに、必要性も感じなかったのだ。ずっと。

奏多と一緒に暮らしだして、もう5年経っていた。

付き合いはじめてすぐに、奏多のアパートの更新時期が来たので、「お金がもったいない」という理由

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身の程知らずの恋

身の程知らずの恋

自分の人生に爽やかなイケメンが絡んだことがない。それは、ハッキリ断言できる。別に、面食いではないし、アイドルおたくとかでもないので、男性の顔立ちに何か執着があるわけではないのだが、思い返すと、小学生のころから中高大、そして就職した今に至るまで、イケメンの彼氏はおろか、イケメンの友人すらいたことがない。

何をそんなに避けられているのかわからないけど、自分の周りにいた男性たちは、すべからく、中の下か

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誰かと誰かと私のあなた

誰かと誰かと私のあなた

記念日は、嫌い。あなたの誕生日はとくに、嫌い。
あなたと一緒にいられないから、じゃない。
あなたが、誰かひとりといっしょにいるから。

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今日も、彼は、来なかった。

来週は必ず行くから、と約束したのに。彼の職場の近くに借りたこの小さなアパートの一室に、彼は顔を見せることもなかった。

もしも、電話をくれたら、すぐにでも車で迎えに行って、彼の家でも、どこへでも、送って行くことだってで

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