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7.南極(The Last Desert)2022 / Day7: Deception Island


今日のレースの舞台はデセプション島。

Racing The Planet公式サイトより


南極半島沖のサウスシェトランド諸島にある活火山を擁する島で、地熱で雪が溶け剥き出しになった黒い地面、(世界最南端の)温泉、灰をかぶった氷河など独特の景観が広がっている。

馬蹄の形をしているこの島は、水没した大きなカルデラがあり、Neptunes Bellowsと呼ばれる狭い水路を抜けて上陸する。

昨晩から未明にかけて、朝4時頃にNeptunes Bellowsを抜けて、カルデラの中に入るまでが大変だった。海が荒れていて、船がとにかく揺れまくるのだ。

南極に向かう途中にドレーク海峡という荒々しいところを通ったのだが、その時と同じくらい(体感的にはそれ以上)激しく船が揺れていて、2段ベッドの上に寝ていた私は気を抜いたら下に落ちてしまうんじゃなかろうかと気が気ではなかった。故に、寝不足である。

レースは6時頃にスタート、終了は14時頃、8時間の予定のロングステージだ。
コースは2.5kmで、緩やかなアップダウン、積雪は少ないので軽アイゼンの装着は不要とレース前に指示が出た。

黒い地面が剥き出しになっている
昼頃には地面の雪もほとんど解けてしまった


8時間に及ぶロングステージとなると、今までのように補給なしという訳にはいかない。何か食べる場合はゴムボートまで移動しなければならず、時間のロスになる。しかし、サーモで何か飲む場合はゴムボートに行かなくて良いとなった。

と、私が取った補給の方法は、サーモにホットチョコレート、更にウシュアイアで購入していたパウンドケーキを細かくちぎって入れて流動食にしちゃえ作戦だ。
(結局、レース中に補給することはなかった。)


最終日のコースも良かった。
積雪は少なく、走りやすい。時が経つにつれ、太陽が出てきて地面に積もっていた雪は(しかもさほど深くない)だんだん溶け始め、黒い地面が剥き出しになってきた。一部のコースは雪解け水でびちょびちょになっていた。

Photo Credit: Masato Wada
写真の取り合いっこした
Photo Credit : Racing The Planet
暖かくなってきた
Photo Credit : Racing The planet
今までで一番走りやすい足場だった



レースが始まってすぐにトラブル発生。
3周目を終えて戻ってきて、カードに3周目のパンチを押してもらおうとザックにつけていたカードを出そうとしたら、ないっ!!


強風で飛ばされてしまったようだ。


これは流石に焦った。
まず、プラスチックのカードを故意ではないとはいえ南極のどこかに捨ててしまったことになる。環境保護の観点からも大問題である。そして、自分の周回記録はどうやって取る?よりによって、ロングステージで自分が何周したかって数えるのはきついんだが、、。スタッフは既に「3周?4周?」なんて言っているし。


とりあえず、カードなしでレース続行となったが気が気ではない。


が、神は見捨てなかった。
次に周回スタート地点に戻ってきた時にはスタッフの手には私のカードが!
「見つけたわよ!」とスタッフも誇らしげで、私もホッと安堵した。今度は強風でも絶対に飛ばないように、ザックにしっかり装着する。これで一安心だ。


最終日、初っ端から出鼻をくじかれた形になったが、とにかく、今日は時間いっぱい、ゆっくりでもいいからコース上を周回していれば「完走」できるのだ。

これで今年1年かけて、世界のあちこちで連戦した4 Deserts Grand Slam Plus の旅が終わるのかと思うと、何だか寂しい気持ちになった。2019年にやると決めて、エントリーしたが、まさか足掛け3年のプロジェクトになるとは思ってもみなかった。

と、色んなことを考えながら、そしてデセプション島の壮大な景色を堪能しながら走ったり、歩いたりしていたら、あっという間にその時がやってきた。


あと1周で終わりと13時頃に周回のスタート地点で告げられる。よし、最後の1周はゆっくり楽しみながら行こう。

と、後ろを振り返ってみたら、私より後にたどり着いた選手たちは「これで終わり(=完走)」と告げられたようで、歓喜の声が響き渡る。


うわ、、、また私が最後なんだ、、、。


まあ、最終ランナーもいいかもね、と思い直すが、その後、前を歩いていたシンガポール人選手に追いついてしまった。追い越す時に、「あなたが最後のランナーになるからね。」と告げた。

すると、彼女は後を振り返り、スタッフがマーキングを片付けている姿を目にすると、「ええええーっ!私、嫌なんだけど!」と言う。そんなん言われても、、。
「じゃあ、一緒に歩きましょうか。」と一緒に歩くことになった。

そして、更に前を歩いていたインド人選手に追いつく。同じことを告げると、結局、3人で一緒にゴールすることになった。

ゴールが近づくにつれて、どんどんテンションが上がっていく。その様子を見たシンガポール人選手が私に言う。

「You have a full of energy.」

そう、この言葉はどのレースでも必ず誰かに言われていた。だって、苦しい時もあるけど、楽しくてしょうがないんだもん。ステージレースは楽しい。

Photo Credit : Racing The Planet
ビデオ撮影でGrand Slam Plus Tick! ってやった時のポーズ


ああ、レース終わっちゃったなあ、、、。


今までで一番長い時間周回したねえ


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