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2.テクニカルチェック(6)/サハラマラソン2019

「もう私、戻りますね・・。」
これ以上付き添う必要はないと判断し、みんなの所に戻ろうとしたその時、
「あ、あの、、寝袋、、。」
と、念を押すように言葉を発する彼。

何のことかというと、テクニカルチェックに付き添っている間に彼がずっと気にして、私に聞いていたことが2つあった。

1つは、いつ自分の荷物がビバークに届けられるのかということ。
某航空会社がワルザザードに荷物を届けてくれると信じている彼は、荷物がワルザザードに着いたら、大会スタッフがそれをビバークに届けてくれると思っている。大会スタッフとそういう話になっているのかと聞くも、私が知りたいはっきりした答えが返ってこない。もちろん、私はシャルルドゴール空港で、国境なきランナーズの現地スタッフの方に彼の件を丸投げした後は何もしていない。

もう1つは、寝袋である。
ほぼ手ぶらの状態でビバークに来て、あの寒い夜をどう過ごしたんだろうと思っていたら、スタッフが寝袋を貸してくれていたのだ。
その寝袋は大会スタッフが使っているだけあって(*1)、コンパクトに収まる寝袋とは言い難く、例えるなら、ボクシング用の(小振りの)サンドバッグか?というような代物である。
どうもこの寝袋がお気に召さないようで、他にないか聞いていたのだ。

それをなぜ、大会本部テントにいた時に聞かなかったんでしょうか?
まあいいや。

「じゃあ、この後、大会本部のテントに行って、そのことを伝えておくので、(その後にGPS取付け、写真撮影等)終わったら、大会本部のテントに寄って行ってくださいね。」とだけ伝えて、その場を後にした。


ということで、大会本部テントに顔を出す。
「最後までは付き添わなかったけど、後は私がいなくても大丈夫だと思うから戻って来ましたー。」
「助かったよ、ありがとう。」とノベルト。
「ところでね、彼から頼まれたんだけど、、」
と最後まで言い終わらないうちに、ノベルトが被せ気味に、
「これ以上、俺たちに何して欲しいんだ!?」

「いや、もうちょっと軽量でコンパクトな寝袋はありませんか?って」
「・・・・。」
「とりあえず、伝えたんで!彼が終わったらここに寄ると思うんで。」
「・・・・。」

「ところで一体、彼は歳は幾つなんだよ?」とノベルト。
「さっきメディカルチェックの時に、1992年6月生まれって言ってたから・・(*2)」と、回転の悪い脳ミソ使って年齢を計算しようとすると、
「26歳ね。」とナタリー。
「は?!そんなわけないだろ!どう見ても(以下省略)」と相変わらずの口の悪いノベルト氏である。

ノベルトが興奮して早口で喋っているので、何言ってるかわからないと思ったら、思いっきりフランス語で喋っているではないか。
「だから、レナは毎年サハラマラソン出場して、色々と俺たちと日本人選手の間で動いてるだろ?パトリックに直談判して、これからは日本人選手の面倒を見る代わりにエントリー代を無料にしてもらうように交渉した方がいい。」と英語で言い直す。周りのスタッフもウンウンと頷いている。

そ、それは、あなた達が何かあるといつも私のところに来るからだよ・・。

というツッコミは心の中にしまって、
「ところで、彼の荷物がワルザザードに着いたら、ビバークに届けるみたいなことになってます?」
「は?何のことだ?」
「あ、(やっぱそうか)ならいいです。」


「喉が渇いて仕方がないから、自分のテントに戻りまーす。」
彼が大会本部テントにやって来ないうちに、そそくさと自分のテントに戻って行った。


(*1) 大会スタッフが使う寝袋は、ザックに詰めて自分で運ぶわけではなく、大会車両で運ぶわけだから、コンパクトであるかとか、軽量であるかとかそんなのは関係ない。
(*2) この後、自分のテントに戻ったら、衝撃の事実を知る。


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