突然だが、君は雲海を見たことがあるかい? 文字通り雲の海で、つまり雲の上からしか見ることができない貴重な光景だ。 今朝も僕の目の前には見事な雲海が広がっている。 「いわじゅん、今日は雲海に見とれてる暇はないぞ。とっとと片付けて昼コースの準備せんといかんしな」 岩波淳、これが僕の名だ。淳は”あつし”と読むが、大峰大吾という先輩は僕を”いわじゅん”と呼ぶ。 僕はこの夏、意を決して実家を離れ、ここ『鷹峰温泉旅館』に住み込みバイトでやってきた。大吾先輩は勤続10年のベテ
私のスマートフォンは眠ることを知らない。 この子は知っている。 眠ってしまったら捨てられる、と。 この子は私にとって2代目のスマートフォン。 最新のスペックを搭載した優れモノ。 そうだ、この子には名前を授けよう。 どんな願いも叶えてくれる最強ガジェット。 ――浮かぶイメージはお決りの猫型ロボット。 いやないない。 とりあえず賢いやつなので『賢太郎』と命名しよう。 困った時には太郎を付ければ収まりがいい。これ日本人の常識? 私は『賢太郎』をSNS