ポッドキャストを配信していたら、とある患者さんに届いた話。
科学系のポッドキャスト番組を制作しているレンといいます。
僕は企業で働きながら趣味で配信をしている野良研究者です。
先日、とあるリスナーの方からのおたよりに心動かされ、涙が出た出来事がありました。
僕にとってはポッドキャスト自体、そして「伝える」という事を改めて考えるきっかけになった出来事だったので、ここに記録として残します。
免疫って面白い!という話
「科学や研究って、漫画とかアニメみたいなストーリーや面白さがあるよね」って事を喋りたくて、2021年4月からポッドキャスト製作を始めました。
ポッドキャストは平たく言うとネット配信する音声番組です。
SpotifyやApple podcast、Amazon musicなど様々なアプリで聴くことができます。
僕が製作している「サイエンマニア」という番組で「免疫と胸腺」というエピソードがありました。
この番組はゲスト(研究者が多い)を呼んで対談する形式です。
ヒトの体の免疫反応はどんな細胞が働いているのか?
ウイルスや菌が侵入してきたらどんな流れで体を守っているのか?
といった事をお話した内容でした。
その中で、以下のようなやりとりがありました。
僕はこの免疫システムのブレーキの仕組みが興味深く、一連のお話を笑いながら楽しく聞いていました。
(気になった方はこちらから聞いてほしいです)
そして、このエピソードに対して以下のようなおたよりをいただきました。
(匿名性を保つため、内容を一部省略改変しています。)
おたより
このおたよりを頂き、クレームではないと暖かい言葉も添えて意見をくれましたが、正直心の底から反省しました。
当然病気のことを笑ったつもりは1ミリもありませんし、免疫システムの面白さで笑っていたことは間違いないです。
しかし、言葉は受け手次第で伝わり方が変わります。
たとえ個人でやっているポッドキャストであれ、聞き手を悲しい気持ちにさせるのはそれを配信している人に責任があると思います。
基本的に配信活動は情報の流れがほぼ一方通行で、聞き手がどう感じたかわからずに突き進むことが多いように思います。
このような言葉を直接おたよりとして頂けたのは本当にありがたいと思いました。
収録当時の僕は「自己免疫疾患」に関連する免疫の話について、その現象の話や細胞の話をきく事、理解する事に夢中でした。
そしてその科学的な面白さで笑っていました。
ですが、「その病気と闘っている人」の想像を怠っていたように思います。
特に生物系の研究のお話では様々な関連疾患が出てくるため、その配慮ができていなかった点については番組ホストとして僕に落ち度があるなと思います。今後は配慮した配信をしていきます。
今回はおたよりを頂くことができたので気が付くことができましたが、何かを配信する事は知らず知らずのうちに誰かを傷つけてしまう可能性があるという事を痛感する出来事でした。
返事
この件についておたよりを紹介したこちらの回で音声を通して、謝罪と感謝を伝えました。
公開した時はこの内容が本人に届くか、どう伝わるのか不安でした。
すると再び、以下のおたよりが届きました。
涙が出ました。
自分でもよくわからなかったんですが、純粋に伝えてくれてうれしかったんだと思います。
最初の「少し悲しい気持ちになった」というおたよりを出すことですら勇気がいることだと思っていたので、こうして感じている事が聞けて本当によかったなと思いました。
そして、自分から勉強する事に繋がっていることや、元気が出るという言葉に、本当にやっててよかったなと感じました。
それと同時に、こういう方まで届けることが僕がやりたかった事なのかなと思いました。
科学の発信
科学の面白さを伝えたい!もっと広めたい!と言っている人は多いです。
これはいわゆるサイエンスコミュニケーションだと思います。
当然僕も同じ気持ちで、サイエンスコミュニケーションはもっともっと広まってほしいなと思っています。
ただ、僕はサイエンスコミュニケーションという言葉を自分の活動では全く使っていません。
なぜなら、この言葉を使わずに楽しく喋って、結果的に
「これってサイエンスコミュニケーションだったんだね」
が理想かなと思っているからです。
(あと固すぎるとヘンに壁ができそうなのと、ふざけてワイワイ関係ない雑談もしたいからとか色々ありますが、、、)
ある分野のお話を楽しくしゃべる。
そして聞き手がその分野について興味を持って、自分で知る。
今回のおたよりのやり取り、これが本当の意味でサイエンスコミュニケーションなんじゃないかなと思う出来事でした。
科学の発信は重要だと思う一方で、
「学術的な内容で人気を得たい」が先行して誇張した内容をエサにしたり、
誰かを過度に煽ったり傷つけたりする事で注目を集めようとする人も中にはいます。
そうした方は受け手の事をきちんと考えてみてほしいなと思いますが、
少なくとも僕は、自分が伝えていける範囲で興味を持ってもらう事、楽しんでもらう事を大事にして、まだまだ未熟ではありますがこれからも番組を続けていこうと思いました。
さいごに
拙い文章をここまで読んでいただき、ありがとうございました。
もし同じポッドキャスト配信者の方がいれば、こういった配慮やリスナーの方と向き合う事の大切さなどを考えるきっかけにしてもらえたら嬉しいです。
そしてリスナーの方やポッドキャスト配信を応援している方は、何か感じた事を優しさを持ってその配信者に伝えるのは良いことだと思います。
(もちろん誹謗中傷はダメです)
音声番組は、コミュニケーションですね。
この記事の内容は、後日またポッドキャスト内でも触れる予定です。
自分の思考を整理する意味でも、一度文字におこしたかったためこの記事を書くに至りました。
これからも楽しく科学おしゃべりする番組を続けます。
サイエンマニア
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