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作家ごっこ

24
超短編
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#短編小説

moonlit night

moonlit night

雲一つなく、月が輝く夜。
ここ最近、君と会う時はいつもこんな夜だ。

君が僕の誘いを断る時は、いつも決まって雨降りだった。
君からお誘いの連絡が来る時は、いつも決まって満月だった。

君と出会ってからもう数年が経つ。
前は天気なんて気にしていなかったはずだ。

待ち合わせの場所は、いつもの場所。
よくわからないモニュメントの前だ。
夜空からは、一ヶ月振りの満月が僕を眺めている。

君は、いつも少し

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ともに歩く

ともに歩く

今回の作品は、友達との共作です。
「キーワード決めて、それを使って一つの物語を作る」という遊びをしたところ、いい感じにできたので投稿することにしました。

【キーワード】
・帽子
・いちごミルク
・注射
・扇風機

このキーワードが、どこでどう使われるのか。
是非、最後まで読んでみてください。

寝ぼけ眼でカーテンを開けた。眩しい朝日が私を照らしていた。
朝起きてすぐ、スマホの通知がないかを確認す

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一度カーテンが閉まると…

一度カーテンが閉まると…

あの部屋に入る時は、冷静に、慎重に。
それが鉄則だ。

私は数枚の衣服を抱きかかえ、その部屋を見つめていた。
入口には門番が威圧感のある笑顔で立っている。一度入ってしまうと手ぶらで出ることは不可能なのではないかと思わせるほどの気迫だ。

もちろん、私もその気でここにやってきたのだが、いざ、あの部屋を前にすると本当に必要なのか、自分の身の丈に合っているのかを考えてしまう。何度も入口の前に立っては、ま

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←re start→

←re start→

満開の桜を見上げ、まだ少し堅い制服を馴染ませようと、肩や足を大げさに動かす。
桜の花に出会いを感じていたのは、もう数十年前の話。

いつからか散っていく桜を、くわえタバコでぼんやり見つめるようになった。

あの日の輝きは、もう目の中に残っていない。
少しくすんだ世界の中で生きている。

缶コーヒーを片手に喫煙所のベンチに座る。
たまに吹く風が心地いい。
コーヒーを飲もうとすると、桜の花びらが降って

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たった一度の帰り道

たった一度の帰り道

いつの間にかその旅は始まっていて、気がつけば 僕は歩いていた。

旅の途中、訳も分からずいろんな荷物を持たされた。僕にしか価値がわからないような石ころや花を拾った。

荷物はとにかく邪魔だったから途中で捨てた。誰かにゴミだと言われても、石ころや花を拾い続けた。どっちがほんとに必要かはわかっていた。
いや、ほんとはなんにもわかっていなかった。

少し歩くと気の合う旅人に出会った。
少し歩くと別れ道が

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