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イカの塩辛を効かせたミートスパゲティ ピリ辛料理に相性の良いイタリア カラブリア州の赤ワイン

いつぞやに外でワインを飲んだ帰りにドン・キホーテでイカの塩辛、たこわさ、イカ明太の3点を購入し、イカの塩辛だけが冷蔵庫に残っていた。

酔った帰りにコンビニなどに寄って食べきれないおつまみやデザートを買い込む変な癖がなかなか抜けない・・・。結局、翌日以降に、アレ、こんなの買ってたっけ、と消化していくことになる。

賞味期限を少々過ぎてしまっていたのでイカの塩辛も加熱調理するかと思っていた頃合い、夕食にミートソーススパゲティが用意されていた。仕事あがりにひと風呂浴びて22時半頃の一人晩飯。家族は寝静まっていた。料理してくれた妻にはゴメンと思いつつ、イカの塩辛を皿に開け、大きめのバターをひとかけと一緒にレンジでチンして、ミートソーススパゲティにかけてみた。仕上げに黒胡椒を散らして。ミートソースをしっかりと味わった後の途中からの味変、そしてフードロス防止ということで妻も怒らないだろう。加熱されたイカの塩辛とバターにより料理のコクが引き上がり、思いのほか興味深い一品に仕上がった。

加熱されたイカの塩辛は風味が凝縮されてミートソースの料理のボリューム感にも負けず、重層的な風味を生み出し味覚を様々な角度から刺激する。魚介と肉類を一緒に料理することには少々抵抗があるが、ポルトガルにはアサリと豚肉のアレンテージョ風がある。豚バラ肉をニンニク、唐辛子とともに炒め、アサリと白ワインを入れて蒸し焼きにする家庭料理だ。魚介を楽しむ食文化を持つポルトガルの郷土料理でも魚介と肉をミックスすることがあるのだ。この郷土料理の存在が、ミートソーススパゲティにイカの塩辛をミックスする行為の背中押しとなった。
 
合わせるワインとして頭に浮かんだのは、先日料理してみたカルチジョリム(太刀魚のピリ辛煮)に完璧に調和したイタリア カラブリア州でリブランディが造るワインだ。ワイン漫画、神の雫にキムチに合うワインとして紹介されている。

リブランディ, グラヴェッロ, ヴァル・ディ・ネート・ロッソ 2018, 3,614円
Librandi, Gravello, Val di Neto Rosso, IGT

リブランディはティレニア海とイオニア海に挟まれたイタリア半島のつま先部分に位置するカラブリア州を代表するワイナリー。ワインに使われるガリオッポはイタリアで最も古いブドウのひとつ。その語源はギリシャ語で「美しい足」を意味する言葉に由来。古代ギリシャにて、オリンピックの勝者に賞品として与えていたワイン「クリミサ」は、ガリオッポから造られていたという説もある。ガリオッポに国際品種カベルネ・ソーヴィニョンをブレンドしたワイン。
コアには力強い黒み、エッジはほのかにレンガがかり落ち着いた印象。
香りにはカシスリキュール、チェリーリキュール、プラムジャムなどの完熟した力強い果実香。爽快なメントール香、鼻が乾くように感じるほのかに潮風のようなニュアンスや貝殻のフレーバーを含む力強いフレーバー、ブラックペッパー、ダークチョコレートに明瞭にバニラも絡む。
風味にはパワフルな果実味ながらやや落ち着きはじめか香りから想像されるほど攻撃的ではない、ミネラルや塩味を強く感じ舌が乾くよう。パワフルな酸味、しっかりと存在感はあるがカベルネほど強くなくタンニンのバランスが素晴らしい、鼻腔をほのかに磯の香りが抜けていく、余韻にはややビターなタッチが舌に残る、アルコールボリュームを感じる力強いボディ。
イカの塩辛のミートスパゲティに。ワインのパワフルで深淵な世界にすっと癖の強いはずのイカの磯と肝の風味が吸い込まれ、ワインの塩味とトマトソースにより完全に一体化。ミートソースに下支えされつつバターが絡んだイカの塩辛は、パワフルなワインにも圧し潰されずにしっかりと余韻に残る。相性: ★★★★★
 
続いて魚介によく合う、海沿いのトスカーナ州とリグーリア州にまたがるコッリ・ディ・ルーニのヴェルメンティーノ品種のワインにも合わせてみた。
 
ルナエ, エチケッタ グリージャ, コッリ・ディ・ルーニ, ヴェルメンティーノ, イタリア, 2021, 2,492円
LVNAE, Colli Di Luni, DOC, Vermentino, Italy, 2021, 12.5%

トスカーナ州とリグーリア州の境にワイナリーと畑をもつ。まさにコッリ・ディ・ルーニは両州にまたがる産地の呼称だ。ワイナリー名のルナエの由来はラテン語の「Lunae(月)」。古代ローマ時代、ワイナリーの土地の近くに「Luna(イタリア語で月)」という名の町があり、高品質なワインを造っていた町でもあったことにあやかった。
香りには青リンゴ、メロン、スイカズラ、ほのかにグァバ、白桃の果実香に白い花のフラワリーなフレーバーが豊かに、穏やかに混じる潮の香りがワインのフレーバーを完成させる。
風味にはみずみずしいピュアな青リンゴジュースを思わせる清々しくハリのある果実味、酸味は中庸からやや穏やか、余韻にほのかに舌にフェノリックなタッチとほろ苦さが心地よい。
イカの塩辛のミートスパゲティに。ワインの潮の香りがイカの肝の風味にもしっかりと寄り添う。全く喧嘩せず調和する。だがハリのある上品な口当たりのワインの果実味は、イカの肝の風味に調和しても高め合いに進むまでの発展はないか。相性: ★★★☆☆
 
太刀魚のピリ辛煮に続いてイカの塩辛のミートスパゲティにも完璧な相性を見せてくれたリブランディの赤ワイン。このワインは地場品種にガリオッポに国際品種のカベルネ・ソーヴィニョンがブレンドされているが、ガリオッポ100%のワインともピリ辛シーフードを合わせてみたい。

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