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タイのあら汁に熟成ムルソー

先般、久しぶりに実家に帰省。
港が近く、スーパーマーケットにも新鮮な魚が豊富に並ぶ。
子供のころはそれをありがたいとも何とも思わなかったが、魚料理が好きになり、また週末に台所に立つようになってから地元のスーパーに入ると、楽しい驚きがある。
全体的に東京のスーパーと比較してお買い得な価格、そして、ときどきびっくりするような破格のものが紛れている。
この日はタイのあら300円がそれだった。

そこそこの大きさのタイ10匹、さらに三枚おろしの残りとはいえ、身がたっぷり残っている。
見つけた瞬間に、今晩はあら汁だ!と心の中で飛び上がった。

タイのあらは、塩を少々降って料理酒でさっと洗う。
具材は大根、ニンジン、仕上げに細切りの長ネギでシンプルに。
鍋にネギ以外の具材を投入して、じっくり加熱。
丁寧にアクを取り取り、雑味のないタイの旨味を閉じ込めた至高のスープの完成を思い描く。
なんといってもタイ10匹分(あらではあるが)の旨味が詰まっているのだ。
さて、具材に火が通りアク取りも落ち着いてきたころ、控えめな量の味噌を溶かす。
味噌を控えた分、ほんの少し強めに塩を振る。
これで味噌のアタックが穏やかになり、塩で引き立てられたタイの旨味を存分に楽しめるはずだ。

さて、あら汁に合わせたのは2005年ヴィンテージのムルソー。
17年の熟成を経て果実味も穏やかに落ち着き、あら汁の旨味にぴったり寄り添ってくれそうだ。

Lou Dumont, Léa Sélection, Meursault, France, 2005, 13%
ゴールドがかったはっきりした色調。 
よく熟したリンゴ、リンゴジャム、りんごの甘露煮がほんのりと、17年の熟成を経たとは思えない力のある果実香、黄色い花や照りやハリのあるムルソーらしさもしっかり覗く。
しっかりと渋みを持ち力強く、やや穏やかに感じる酸味、ゆるゆると持続的な余韻、クリーミーなタッチがしっかりと余韻に残りリッチな風味を残す。

ワインは17年の熟成を経たとは思えないほどの果実香を携えていたが、風味は酸味も落ち着き、あら汁の旨味に寄り添ってしっかりと引き立ててくれた。
ワインの酸味が強めに出ると、あら汁の風味を抑え込んでしまうこれぐらい熟成していると、程よいトーンの酸味に落ち着き、和食の出汁にもしっかりと寄り添ってくれる。

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