熱帯坂

沖縄の海で熱帯魚たちから学んだこと

大学生の時、スキューバダイビングのライセンスを取りに1人で沖縄へ行った。なぜライセンスを取得しようと思ったかって?

ただの憧れである。

青い海、青い空…その中でダイビングをする私。

そんな空想を実現するために、沖縄へ飛んだ。

沖縄では、マンツーマンで指導を受けてライセンスを取得するコースに参加。結果的に、腹筋がなさ過ぎて、酸素ボンベを背負って歩くのもやっとな私にはマンツーマンが向いていた。だって、移動するだけで、ふつうの人の倍は時間がかかってたから。

まず初日は、机の上で知識を得、2日目から実際の海での授業が始まった。

生まれて初めて、海の下に潜った瞬間。

キレイだった。

私が暮らす世界とは別の世界が広がっていた。ブルー、緑、赤、黄色、ピンク…色とりどりの熱帯魚たち。スイスイと鋭敏に泳ぐ熱帯魚たち。

いや、ほんと、海の中では人間はなんて弱い存在なんだろうと思った。

熱帯魚様たちは、こんなにも自由に美しく、楽しげに暮らしているのに。

人間は海の中では呼吸さえまともにできない。

それまで私は、海の中にいる魚を見たことがなかった。

食卓に並んだ死んだ魚か、釣られて今にも死にそうな魚か、水槽に体をぶつけながら窮屈そうに泳ぐ魚しか。

この時初めて、海の中でいきいきと泳ぐ魚たちを見たのだ。そして、目の前でいきいきと泳ぐ熱帯魚様たちを見て思った。

「そっか、人間も一緒だ」って。

自分に適した環境にいれば、いきいきと泳げる(生きられる)のは、人間も一緒なんだって。

どんだけ一人でもがいて、頑張ったところで、何も変わらず苦しむことがある。けれど、自分がいる環境自体を変える、環境を整えることができれば、目の前の熱帯魚様たちのようにいきいきと泳ぐことができるんだって。


この沖縄ダイビング旅行以来、私は自分に適した環境の中で生きることを優先してきたように思う。

何か大事な決断をするとき、もっといきいきと生きたいと思ったとき、私の背中を押してくれるのは、いつも沖縄で見たあの熱帯魚たち。








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