君に春を思う~2020年春から一変した世界に向けて~
はじめに
私がプロレスの写真を会場で撮るようになってから、今でも忘れられない光景がある。
2020年2月2日・大日本プロレス上野野外音楽堂大会で行われた、「借り物競争」での一幕だ。
選手が観客から【ベンツ】、【ブランドのバッグ】など無茶な借り物を要求する中、レフェリーも無理だと匙を投げた選択肢がある。
前置きすると、私はこれを不謹慎だと断罪する気持ちなんて、全く以て無い。
何なら、私もこれを見てゲラゲラ笑っていた一人だったから…。
この写真を選んだのには、理由がある。
観客も私も、当時の借り物競争でゲラゲラ笑えていた光景が、約1ヶ月足らずで笑えない光景に変わってしまったという現実と哀しみが、この1枚に詰まっているような気がしてならないからだ。
当時の私は、ニュースで見ていても、【隣国で起きた対岸の火事】だと軽く見ていた節があるからこそ…。
(それは、とんだ間違いだったのだけれども)
"コロナから逃げるように観戦した"、2020年2月~3月
2020年2月~3月は、私のプヲタ歴でも忘れられない2ヶ月になった。
徐々に中止・延期になっていく興行…。
本命の大会が中止になり、チケットを押さえた大会も緊急事態宣言により中止…。
今振り返ると、緊急事態宣言で興行が行われなくなるギリギリまで、私は"コロナから逃げるようにして観戦スケジュールを入れていた"ような気がする。
同年3.29のZERO1靖国神社大会が開催延期になった直後、同日同時間帯のNOAH後楽園ホール大会のチケットを買ったものの、中止になった時の無力感は、今でも忘れることが出来ない。
そうした状況だからこそ、この時期は、私の中で胸を打たれた思い出も数多く生まれていった。
2.24に名古屋まで日帰りで観に行った、DDTプロレスリング→プロレスリング・ノアのハシゴ観戦。
ノアのメインで組まれた『杉浦貴vs清宮海斗』は、現時点で私が選手の名前を叫んだ最後の生観戦だった。
雪崩式オリンピック予選スラムの前後で「杉浦!」と叫んだり、試合後にガッツポーズした喜びは、今でも忘れられない。
3月に入って興行の延期・中止発表が相次ぐ中、予定通り興行を開催して、プロレスの面白さを見せてくれた、センダイガールズプロレスリングやZERO1、大日本プロレスetc。
GAORAが『感染防止対策』の一環で録画中継を取り止めた中、観戦しに行ったWRESTLE-1最後のビッグマッチ(3.15大田区総合体育館)。
約1年後にGAORAで同大会が中継された時は、「何故当時流さなかったのだろう」と思ったけれど(苦笑)。
私が緊急事態宣言前に見た最後の興行は、2020.3.21。
緊急事態宣言が明けて初めて行った興行は、2020.7.5。
この日付は今でも覚えている。
行けなかった約3ヶ月半は、プロレスを観れる環境が当たり前ではないことを芯から実感させられた期間でもある。
あの時を経験しているからこそ、私は生観戦に行けない日々でも前向きに捉えていけるようになった。
自粛期間当時、カメラに触る機会もガッツリ減っていたので、データとして残っている写真は飲食ばかり(笑)。
それでも、この時期に自炊や音楽にハマった事は、決して無駄ではなかったと今でも思う。
この時期の写真を見返していると、今でも懐かしくなるような思い出ばかりだ。
まとめ
新型コロナウイルス禍は、今も深い影を落としている。
後楽園ホールの飲食売店も、シャッターが閉まってから早2年が経つ。
当時売っていた万世のカツサンドは、今でも秋葉原の万世本店や駅売店に行けば手に入るけれど、レモンサワーやファイターチキンにありつけたり、会場内で飲食したりする機会は今も失われたままだ。
会場での声出しも、特殊なレギュレーション(※)が設けられた場合を除き、殆どの団体で禁止は継続。
※屋外、マスク完全着用etc
それでも、2020年春の【プロレスが見れなかった時期】を思えば、こうした規則は私にとって苦でもない。
規則が守られなかった為に、興行が見に行けなくなる事の方が圧倒的に辛いし、見れるだけでも本当にありがたいから…。
とはいえ、コロナ禍という逆境から生まれたのは、何もマイナスな事ばかりではない。
規定が曖昧だった時期に、センダイガールズやZERO1など、早い段階から手指の消毒や規制退場を盛り込んだ事。
コロナ禍以降では当たり前の光景も、私の中では2020年3月8日のセンダイガールズやZERO1が初出だったと記憶しているので、この辺りはパンチ田原氏の功績も大きいと私は思っている。
また、興行が行われない時期には、ツイキャスやZaikoといった配信プラットフォームを用いた事で、各団体の配信も充実しだした。
独自の配信サービスを有していない団体や個人の自主興行でも、配信視聴という選択肢が取れるようになった。
これも今では欠かせない存在だ。
そして何より、プロレスというジャンルを守ろうとする、関係者やファンの存在の逞しさ。
コロナ禍以降も複数の団体を見てきたけれど、団体の9割方は、おおよそのマナーが順守されているという実感がある。
NOAH日本武道館大会の時の関係者コメントも、私の中では忘れられない。
その2.12武道館大会は、H.I.P.さんから『お客さんのマナーもよく、感染対策もちゃんとやっているいい大会だった』という評価をいただき、武道館の館長さんにも『久しぶりにノアさんをやってよかった』と言っていただいたんですね。
2020年の春先に比べれば、少なくともプロレス界は確実に前進しているし、コロナ禍でも興行を回すノウハウが確立されつつある。
寂しいことも苛立つことも多い世の中ではありますが、この記事で私が何を言いたかったかというと…、
早くこういう景色が戻るといいねってこと!!
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