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新宿二丁目のLITTLE BUSTERS

はじめに

私は、好きなプロレスの話から遠ざかりたくなる時・離れたい時に、自然と足を運びたくなる場所がある。

新宿二丁目にあるバー『TANTRA』だ。


毎週木曜~土曜の3日間に営業しており、残りの4日間は、女子プロレスラー・夏すみれが『ナツバー』という名前で店をオープンしている。
(ここでよく、乱闘劇やゲリラオファーが行われがち(笑))


私がこのTANTRAに足を運ぶようになったのは、幾つかの理由がある…。


二丁目に行きつけのバーが出来た、OiRAN時代

TANTRAのマスターとの出会いは、2019年春頃まで遡る。

当時、行きつけの新宿ゴールデン街にあるバーの人達が鰤を仕入れて振る舞うイベントを実施しており、その会場に選ばれたのがマスターのお店だった。
(通称:ぶりざんまい)


マスターと初めてお会いしたのも、この時だ。

ただ、当時は今と同じビルの1階に店を構えており、店名も『TANTRA』ではなく『OiRAN』という名前だった。

後から知った話なのだが、この一階では過去にIWAジャパンの会見が行われるなど、プロレスファンには所縁のある場所だったらしい。


このイベント以降、私はOiRANに足を運ぶ機会が徐々に増えていった。

広島の瀬戸田レモンを使用した名物のレモンサワーが美味しいこと。
(これは、TANTRAでも名物である)

マスターがおまかせで作ってくれた鉄板焼きが、とても美味しかったこと。

何より、趣味とか関係なく人が集まるような場が心地よかったこと。


個人的に、OiRANが今現在のTANTRAに引き継がれている空気感を確立した出来事は、映画『王様になれ』だったと思う。


the pillowsの30周年記念映画公開に因み、OiRANでコラボレーション企画を開催したところ、以降、店にはthe pillowsのファン=BUSTERSの面々が集うようになったのである。

それまでのOiRANは、映画とのコラボレーション企画やプロレス関係の印象が強かっただけに、この一件が店の雰囲気とかイメージを形作ったように思えてならない。


BUSTERS有志がOiRANに集まり、店内にthe pillowsの楽曲が流れる空間で歓談する光景は、1つのコンテンツで人が集まる空間の素晴らしさを体現しているようで、傍から見ていて羨望の念すら覚えたほどである。

私が冒頭で【好きなプロレスの話から遠ざかりたくなる時・離れたい時に、自然と足を運びたくなる場所】と述べたのは、この辺りにも起因している。

何故ならば、『王様になれ』によって、バーのイメージがプロレスに囚われないものになっていたし、他にもサッカーやフットサルといった話題も飛び交うOiRANの自由闊達な雰囲気に、私自身救われるところがあったからである。

プロレス以外の話題に触れたい時に、OiRANに対してこの上ない居心地の良さを感じていたのだ。


コロナ蔓延~閉店~移転再開で戻った景色

しかし、2020年に新型コロナウイルスが市中に蔓延し始めると、事態は一変した。

当時の飲食店の例に漏れず、緊急事態宣言による休業を余儀なくされた『OiRAN』。
その後、営業を再開して再び足を運べるようになったものの、2021年2月に閉店。


私の中では【二丁目に行く=OiRAN】というくらいには結び付きが強かっただけに、当時は喪失感を覚えた。「行きつけの場所が無くなるのは、これ程辛いことだったのか」と。
実際、OiRANが閉店してから暫くの間、私は一度も新宿二丁目に足を運ぶことが無かった。


そんな喪失感を抱えながらも、2021年11月、OiRANのあったビルの2階にTANTRAがオープンした。
OiRANのようなテーブル席は無いものの、全部カウンター席になったことで、店主や他者との会話など、距離感は以前より密になった。

TANTRAになってから頼んだ、お手製のカレーライス


TANTRAとして再オープンを遂げて以降は、営業日ではない日曜~水曜にナツバーとしてオープンしたり、選手イベントも開催されるようになったりと、店内の雰囲気はコロナ禍前と同じ所へと徐々に戻り始めてきた。

2022.1.3にTANTRAの人達と行った、ニューロティカ日本武道館
2022.9.1に行われた、全日本プロレスのユニット・GUNGNIR OF ANARCHYによるイベント


TANTRAのオープンから約2年が経とうとしていた2023.9.16、前述したBUSTERS有志により、the pillowsの結成記念日当日にBUSTERSが集結するイベントが行われた。


TANTRA開店後は、BUSTERSの面々が集まる機会は大々的に設けられてこなかった事もあり、個人的にはOiRAN時代を思い出さずにはいられなかった。

私自身、熱心にthe pillowsを聴いている人間ではないけれど、他のファンが楽しそうに話している空間と光景だけで、見ていて素敵だと思ってしまう。
その空間が再び戻ってきた事だけで、何だかとても嬉しくて懐かしい気持ちになったのである。


そんなイベントで、私自身新たな出会いがあった。
私が今まで聴いてきたけれど、現実世界で一度も遭遇した事のないロックバンド(GRAPEVINE)のファンの方に、この日初めてお会いすることが出来たのだ。

「好きなバンドは何ですか?」と訊かれたタイミングで、バンドの好きなアルバムから新譜の話題まで出来る存在に遭遇する。
こうした出会いも、音楽やサッカーなどの幅広い話題が出てくるTANTRAだからこそ生まれた奇跡なのかもしれない。


まとめ

プロレスの話題が嫌になった訳ではないけれど、プロレスの話題から離れておけるような居場所を作っておく事で、自分の好きな事との距離感を付かず離れずな所で維持できる。

最近、私はそんな事を感じるようになった。


好きな話題で多い情報量に疲弊しそうな時ほど、一度その話題から離れる事で心身や頭を整理しておくと、前のめりにならないという実感。

そんな時、自分にとってTANTRAという店は重要な場所になっている事に気付いたのだ。

好きな話題に対して、付かず離れずな距離感でいられる場が一つあるだけで、人生というものは充実していくのかもしれない。
纏まりのない言葉になるけれど、最近私が実感している事だ。

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