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2020.3.29以降のプロレスライフ

はじめに

2020.3.29

関東圏内に大雪の降る中、私は自宅で絶望にうちひしがれていた。
外出できなかったのは、大雪のせいではない。未知のウイルスが猛威をふるっていたからだ。

2020年春、中国で見つかった新型コロナウイルスが日本へと上陸した。

私が一番好きなプロレスも影響を受け、3月に入ると、興行の延期ないし中止がバタバタと出始めた。幸い、業界にクラスター等で感染者が出たわけではなかったものの、会場や自治体から中止を要請されたりしたことで、興行の流れが止まった。


同年3月末、毎年春の恒例行事となっていたプロレスリングZERO1の靖国神社が、靖国神社側の提案もあって興行延期となった。

手元にあったチケットが宙に浮き、私は真裏に行われるプロレスリング・ノア後楽園ホール大会のチケットを押さえた。
外出自粛がメディア等で叫ばれていた時期にあって、この行動は不謹慎だったろう。
でも、誰かに止められたりとか、私の身に余程の事が無い限りは行くつもりでいたので、行動に迷いは無かった。

しかし、私は興行に行けなくなった。
大会数日前に、ノア後楽園ホール大会の無観客開催が発表されたからだ。

冒頭の2020.3.29は、私が観戦する予定だった日付である。


絶望と希望の淵で

私が2015年春にプロレスを好きになってからというもの、コロナ禍以前まで(屋外大会の雨天中止を除き、)大会中止という事態に出くわしたことは1度もなかった。

それだけに、不可抗力で行けなくなった現実を前に私は酷く絶望した。

「この先、いつ生観戦が出来るのだろうか?」

「いったい、この絶望は何時明けるのだろうか?」

そんな不安の中、サムライTVにて、先述した無観客のノア後楽園ホール大会を中継することがアナウンスされていた。
当時、自宅に視聴環境のあった私は、外で大雪の降る中、昼の後楽園中継を画面越しから見つめていた。

この日のノア後楽園ホール大会は、3月頭に横浜文化体育館で予定されたタイトルマッチのみをスライドする形で行われた。
コロナ禍で中止・延期となった横浜文体大会からカウントすると、都合2度もコロナで中止を余儀なくされていたのである。

そんな中で執り行われたタイトルマッチは、全4試合ながら記憶に焼き付いている。

無観客の会場で行われる場外乱闘に対して、客先へ「下がって!」とアナウンスするセコンドの選手達。

出場予定の無かった選手達が、ファンに向けてエールを送る幕間。


極めつけは、メインイベントで行われた『潮崎豪vs藤田和之』のGHCヘビー級王座戦だった。
60分1本勝負にもかかわらず、序盤の30分以上を双方にらみ合い、微動だにしないという異様な光景は、無観客というシチュエーションを逆手に取る"伝説"となった。



この刺激的な大会を視聴した後の私は、自宅で興奮の余韻に浸っていた。
絶望の中に、僅かな希望を見出だす大会だったからである。


まとめ~無観客期間はキツかったけれど~

その後、コロナ禍による興行中止の余波は、興行が再開され出した2020年6月頃まで続くこととなる。
その間、緊急事態宣言の影響もあり、毎週のように足を運んで観戦していたプロレスという習慣が突如として止まってしまった私。

現実でもSNSでも、コロナ禍を機にプロレスから遠ざかった人は少なくない印象だ。その影響は今も続いている。

コロナ禍以降はテレワークの奨励が進められたものの、2020年当時の私が勤めていた会社の仕事内容は、現場対応や物流業に近いものがあり、テレワークに置換できないものだった。
故に、コロナ前と変わりなく自宅と職場を行き来する生活が続いたが、週末は外出できない状況。


この状況下で、好きだった趣味から遠ざかってしまう可能性は十分あったと思うけれど、それでも今現在まで好きでいられたのは運が良かった。

コロナ禍では、プロレス以外の趣味を見つけられたことも大きかった。
今まで聴いていなかったバンドの旧譜を通販で漁ったり、気晴らしに料理したり…。
何もないところから、楽しむ術を学ぶことができた。



この経験を経て、コロナ禍以降の私は必ずしも空いた予定をプロレスだけで詰めなくなったし、休む時は休み、面白いと感じたイベントがあればプロレスよりも優先して行くようにした。
それは、決してマイナスのことではなく、目の前の楽しいことを大事にしたいと思う気持ちが強くなったからだ。

コロナ禍は巡り会いたくない事象だったけれど、この経験を無駄にしたくはない。

幸い、2023年より本格的にプロレス会場でも声出し応援が解禁され、以前に近い光景が取り戻された。
終息したわけではないけれど、前進は間違いなく出来ている。

2020.3.29に大雪の中、自宅でプロレスを見た経験を振り返り、私はそんな思いを感じているのであった…。

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