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豊かな色彩"ピカソとその時代ベルリン国立ベルクグリューン展"

上野駅の公園口を出ると、演奏会や美術鑑賞、科学博物館や動物園に向かう多くの人たちで溢れ返っている。もちろん、当てもなく散歩をする人や近所の大学生もいる。
私はそんなバラバラの目的で集まってくる人たちで賑わう上野公園の様が結構好きだ。
そして私はかなり頻繁に上野公園へ行っている。先日動物園へ行く途中に西洋美術館でピカソ展が始まったことを知り、やっと最近行くことができた。
今回は、ピカソを中心としたベルリン国立ベルクグリューン美術館のコレクションが見られる。
ドイツ生まれの美術正ハインツ・ベルクグリューンは、パリで画商を営みながら、世界有数の個人コレクションを作り上げた。現在はドイツ政府が主要作品を購入し、ベルクグリューン美術館のコレクションとして保管されている。その中の97点が今回展示され、そのうち76点が日本初公開となる。


国立西洋美術館正面
美術館2階への階段

ル・コルビュジェの美術館について触れると長くなってしまうので、それは別の機会にするとして、コレクションの中心となる3名について見ていきたい。

1.時空を越えるパブロ・ピカソ

黄色のセーター
闘牛士と裸婦

長年に渡り多くの作品を残したピカソ。その中で作風は次々と変わり、時代毎に分類されている。今回その各時代の変遷がわかる作品が見られ、さらに日本初公開となるのが35点もあった。
ピカソの作風として特に印象的なのが「キュビズム」だ。キュビズムは、20世紀初頭に1つの対象を複数の視点から見たイメージとして、1枚の絵に集約して表現する技法だ。「黄色のセーター」が描かれたのは1939年、有名なゲルニカぎ描かれてから2年後だ。この頃はキュビズム以降シュールレアリズム時代より後の時期だが、キュビズムの技法をベースとして、それ以降の時代の画風が融合され、自由な柔らかい表現で描かれている気がする。ブルーとイエロー、パープルの色彩も上品さと色気があって大好きな1枚だ。

2. 繊細な配色のパウル・クレー

モスクの入り口
平面の建築

ピカソと並びコレクションの柱となるパウルクレー。
以前スイスのベルンを訪れた際にパウルクレーセンターがあることを知り、彼はスイス人だと思っていたが、スイスに生まれながら、歴史的背景の基、スイス人の国籍ご取得出来ずドイツ人として亡くなったことを今回知った。バウハウスでカンディンスキらと共に10年ほど教鞭をとっていた。ヴァイオリンを長年親しんでいて、音楽のバックグラウンドは彼の作風によく表れていると思う。
彼もまたいくつかの作風を辿ったが、私が好きなのは点描画法で、発展系として描かれているのが「モスクの入り口」と「平面の建築」だ。「モスクの入り口」はペンにより縁取りされ、3400もの升目にさまざまな水彩による色が描かれている。平面だが、モザイクタイルのようにそれぞれの升目が凸面のように立体的に見える。優しい色みは、生まれ育ったスイスベルンの自然豊かな環境の記憶から生み出されたものではないかと私は思う。

3.色彩の切れ味抜群アンリ・マティス

ドラゴン

色彩の魔術師と呼ばれるアンリ・マティス。フランス人画家でフォービズム(野獣派)と呼ばれた。フォービズムは、原色を主体とし大胆な筆づかいで表現する作品を指す。ただフォービズムは短期間で終わり、彼はいくつかの作風を経て、線の単純化、色彩の純化を追求した結果、切り絵にたどり着いた。
彼が好きな草花や鳥が、心の趣くままに切り取られ、鮮やかな配色により浮かび上がる。
彼の作風は人生そのものと重ね合わせることができる。
セザンヌやゴッホから影響を受け、肉体を力強い曲線で描いたり、油彩で優雅に女性を描く。彼は年々自由な表現を追い求めていった。体力が衰えていった晩年は、ハサミによる行為で自ら感じるままをシンプルに表現している。見る側に想像させる余白も十分にありながら、強いメッセージ性もあるような気がする。

ル・コルビュジェによるスケッチ


全ての作品を見ると、コレクターとしてのベルクグリューン氏の美術に捧げる情熱を感じた。そして後世に多大な影響を与えた画家のこれらの作品を上野で見られるとはありがたい。

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