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どれも瑞々しい"とらや ミッドタウンギャラリー 見て味わう 和菓子の食品サンプル"

小形羊羹がお行儀よく箱に並ぶ様子をみると、何とも幸せな気分になる。
長らく手土産やお年賀、御礼など大切なシーンで登場してきた"とらや"。
とらやの創業は室町時代後期に京都で創業。御所の御用を勤めていたが、東京遷都に伴い天皇にお供し、東京進出したのが明治2年。
六本木ミッドタウン店が誕生したのが、設計は東京の赤坂店と同じく、内藤廣建築設計事務所だ。
大きな暖簾が目印で、店舗の他に和菓子にとどまらず、和の文化の価値を広く伝えるためのギャラリーが併設されている。

ギャラリーの様子

今回の企画展は「和菓子の食品サンプル」。
食品サンプル、と聞くと喫茶店のショーウィンドウでフォークが宙に浮くスパゲティーが思い浮かぶが、意外にもとらやのような和菓子店でも包装されたものの中身や断面などを紹介するために食品サンプルが古くから用いられてきた。

1.製作ノウハウが赤裸々大公開

食品サンプルができるまで
水羊羹サンプルの工程

和菓子のサンプルが完成するまでの各工程が円盤状の展示によってひとつひとつ丁寧に読み取ることができる。食品サンプルの老舗で1980年創業の株式会社EBISUの協力の基、企業ノウハウを包み隠すことなく公開されている。
水羊羹はシリコン型を最初に作るとこは予想できるが、一度外側だけを固めた後に、丁寧に作った小豆を配置して内側に液を流し込み、再度固める。本物の水羊羹に匹敵する手間のかかり様だ。

2.瑞々しさの再現性

季節の羊羹
あんみつ いそべ餅
野菜

食品サンプルの魅力は本物そっくりな見た目や質感にある。そしてリアリティの再現として食品サンプルと相性が良いのが羊羹や寒天類などの水菓子だ。表面は艶のある黒光りやきれいな鶯色、断面はあんこのざらざら感が表現されている。黒豆の黒々した様子や餅に巻いてある海苔のシワやテカりもリアリティがあり、どれも美味しそうだ。

3.とらやらしさと進化

店頭のショーケース
ギャラリーの様子

内藤氏の設計による店内は、暖簾が際立つように白い内装で構成され、積層された穴あきブロックの壁はシンプルながら上品。それはとらやが作り出す和菓子にも通ずる気がする。
中央の回廊に面して穴あきブロックの壁の一部にガラスのショーケースがはめ込まれているのも控えめながら遊び心がある。
とらやらしさが与える安心感と時代に合わせて進化を惜しまない姿勢が空間デザインからも感じとれる。

サンプルの販売

店内には、食品サンプルといえばこれ、というフォークが宙に浮いたスパゲッティなどのサンプルキットが販売されている。
完成後の飾る場所が悩ましいが、機会があれば作ってみたい。


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