【詩】虚蟬(うつしおみ)

Words Written by kentaro fujita c

いつかきっとお迎えが来ると思っていた
あなたは私が産まれたときから
おばあちゃんのままでした
大好きで、笑顔をたくさんくれる
私を肯定してくれる、おばあちゃんでした
 
学校に行けなくなったときも
進む道が見えなくて途方に暮れたときも
あなたはずっとあなたのままで
何を言うわけでもなく、見ていてくれました
突然やってきた
御別れの日は、暑い夏の夜のこと
覚悟はしていた
そろそろかもって話は聞いていた
でも、おばあちゃんがいた人生なんて
過ごしたことは無い
 
またいつか、あなたの来世に出逢える奇跡を願い
忌明けても、見守っていてほしい
七日を七回繰り返し、一度くるっと回って
今日、御空遠くへと旅立つ日がやって来た
きっと、明るい世界に往けるからね
大切に想うひとに、あなたに似ていると伝えたよ
どこか見てくれているようで、何を感じているか分からない
あなたに重ねてしまいました
 
 
産まれたときから
おばあちゃんは、おばあちゃんでした
迷惑をかけた、心配させた、
喜んでもらいたかった、
一番、出来の悪い孫でごめんね
期待に添えられなかったことへの後悔を
未だ拭いとれないまま、また、抜け殻になった
 
星を見上げれば、
微笑んで許してくれますか?
罪惜しさは、消え失せてくれますか?
恨まれてしまうかもしれない
 
私は、まだ、生きる
私は、もっと、先に行ける
私は、きっと、素直に生きられるようになる
あなたにいつか、再会するまで
胸を張って、再会できるまで
今宵、大切な人が教えてくれた
また生きて歩かなきゃ、笑顔取り戻さなきゃ
 
虚蟬、鳴き忘るる夏が去り、
御空遠く咲き誇ることなかれ
Utsushiomi, Nakiwasururu Natsuga sari
Misora, Toku Sakihokorukoto Nakare.

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