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「STARTING OVER」エレファントカシマシ 17th album レビュー

「STARTING OVER」 2008年(平成20年)1月30日発売

こんばんは。
前回に引き続き、今日もレビューしていきます。
今回は初のアルバムレビューです。長くなると思いますが、よかったら最後まで見てってください。
本当は昨日投稿の予定でしたが、忙しくて今日になってしまいました(-_-;)

「start over」とは「やり直す」という意味の動詞で、そのing形「starting over」とはつまり、「やり直し」という意味である。
タイトル通り、このアルバムの時期にエレカシはユニバーサルミュージックに移籍する。新たな場所で再スタート、というような意味が込められているのだろう。そしてこの作品でエレカシは再ブレイクを果たす。2000年発売のベストアルバム「sweet memory」以来、約7年ぶりにオリコンチャートトップ10入りを果たしたという。
中でも、再ブレイクするきっかけとなった曲は、「俺たちの明日」だろう。レコード会社移籍後初のシングルで、ウコンの力のCMソングとして起用されたこともあり、エレカシのアンセムかつ「今宵の月のように」以来のヒットソングとなった。

今考えれば、このアルバムは長いエレカシの歴史の中でも特に重要な役割を果たしていると言えよう。エピックからメジャーデビューし、その後ポニーキャニオン、そして東芝EMI、そしてユニバーサルミュージック。約36年の中での分岐点的なアルバムである。ここから、また新たなエレカシの音楽が誕生していったのだ。

このアルバムに収録されている楽曲たちは、全て完成度が高い。まさに捨て曲なしのアルバムだ。ファンでない方も一度は全曲通して聴いてみる価値がある。ちなみに、「桜の花、舞い上がる道を」はこのアルバムのアウトテイクである。

全曲長調であるため、アルバムを通して明るい雰囲気だ。

1.今はここが真ん中さ!
アルバムのオープニングにふさわしい曲。イントロから、もう魂のこもった演奏で、聞き手を一気に曲の世界に入り込ませてくれる。そして歌いだしからもう感情全開の歌声。
いつだって、今という瞬間は「ここ」が真ん中(中心または人の核)である。その「ここ」は人それぞれで、その人がいる場所だ。つまり、「今」が一番大事だ。

2.笑顔の未来へ
2008年の元日にリリースされた先行シングル。
冬景色を連想させる疾走感のあるメロディで、エレカシの冬ソングの1つであると思っている。しかし歌詞には「表はいつしか真夏の光」とあるので、実際はどうなのかわからない。
笑顔の未来とは、きっと明るい未来のことだろう。当時、レコード会社を移籍して新たなスタートを図ったバンドにとっても、きっと明るい未来を目指していたに違いない。

3.こうして部屋で寝転んでるとまるで死ぬのを待ってるみたい
前の2曲から一転し、重い雰囲気になる曲。スローテンポであり、Aメロの低音ボーカルがさらに曲の重い世界へと誘う。なんか浮遊感?がある歌。
しかし、このインパクト抜群の長いタイトルは何を意味するのだろうか?私が初めてこのタイトルを目にしたのは、エレカシのファンになりたての頃だったと思う(おそらく中3~高1の間?)。カラオケの選曲一覧で、何だこれはと、愕然した覚えがある。「死ぬのを待ってる!?、どういうこと!?」みたいな(笑)。
タイトルの意味について、歌詞を読んでみるに、暇すぎて死にそうなのかな?と思った。
この歌、ノンダイアトニックコードや四和音コードが多用されていて、コード進行がすごく独特である。そのため、曲自体も独特な雰囲気がある。
しかも最後の終わり方、何だあれは?いきなり曲が途切れる感じが面白い

4.リッスントゥザミュージック
明るいの中に切なさが見え隠れしている。明るいメロディーに、別れ際?の男女を歌ったスローテンポナンバー。
「本当はいっしょに笑いたいのに だけど笑えなくて」
「本当はいっしょに笑いたいのに ふたりはいつもひとり」
正に切ないフレーズである。
しかし、「リッスントゥザミュージック」(Listen to the music 和訳:音楽を聴く)というフレーズは何を表しているのだろうか?歌詞全体を見てもあまりピンとこない。(ただの洒落?)

5.まぬけなJohnny
前曲との隙間がなく、「リッスントゥザミュージック」が終わるとすぐ曲が始まる。
Johnnyって誰だろう?次回作「昇れる太陽」にも「ジョニーの彷徨」という歌があるが、同一人物?今のところこの2曲だが、いつか3曲目のジョニー〇〇という曲が作られるかもしれない。そしたらジョニー3部作になるね。
歌詞の主人公はJohnnyかと思いきや、最後のフレーズ「お前が好きだった まぬけなJohnny」で、あれっ?てなる。このフレーズの語り手は誰?最後の最後で主人公変わってる?そういうわけで、この歌は主な登場人物が3人いると思われる。Johnny、逃げた女、Johnnyが好きだったって言った第3者
ん? ここで思ったが、最後のパートの歌詞はもしやJohnnyのその逃げた女目線だったりして?「好きだった」って過去形だから。
どちらにせよ真相は不明である。

6.さよならパーティー
「俺たちの明日」のカップリング曲。
「パーティー」って何のことだろう?歌詞自体は前向きな感じだが、内容があまり読めない。エレカシに時々ある、難解ソングである。この歌はアルバムの真ん中の歌であり、それこそアルバム内の分岐点的な雰囲気がある。

7.starting over
タイトル曲で、アルバムの核となる曲だろう。歌詞はバンドのことを歌ってるかのようだ。1988年にメジャーデビューし、2007年にまた新たな再スタートを図るまでのエレカシの道筋を比喩的に表している。歌詞を全部解釈すると長くなるので、これに関してはまた後日談。

8.翳りゆく部屋
ユーミンのカバー曲。エレカシ史上初のカバー音源である。カバー曲であるため、本来ならアルバムの雰囲気に合わず、この曲だけ浮くはずなのだ。しかし、これは非常にアルバムのコンセプトにマッチしている。そう、どのアーティストの歌でも、宮本が歌うことで、彼のまたはエレカシの歌になるのだ。自身の歌声(唯一無二の歌声)ひとつでどんな歌も自分のものにする。こんなシンガーが他にいるだろうか?俺は知らない

9.冬の朝
アコースティックギター一本の引き語りソング。演奏時間は短く3分を切っている。箸休め的な1曲。にしては完成度が高いと思う。耳に残るメロディーだが、歌うのが非常に難しい。それにコード進行も凝っている。引き語りのレパートリーにできたらすごい!
これまでの歌から、アルバムの、いやそもそもエレカシの核である「俺たちの明日」へと繋ぐ役割を担っている。

10.俺たちの明日
この曲をアルバムの後半に持ってきたのは、きっと深い意味があるだろう。もし「STARTING OVER」の1曲目がこれだったら、まあ別に悪くはないが、残りの9曲が普通のアルバム曲になっていたかもしれない。そのくらい、これまでの9曲はこの歌を待ちに待たせるための役割も担っているのだ。様々な物語が繰り広げられ、その先に、「さあ がんばろうぜ!」というフレーズ。私はこの流れが大好きだ。
この歌は、多くの人々を勇気づけ、そして救ってきた。「応援歌」という言葉はこの歌のためにあるものだろう。この歌を聴いて元気にならない人はおそらくいない。41歳になった宮本が書いたこの歌詞は、おそらく30代~40代の人の身に染みるのだろう(サラリーマンにグッとくる歌詞らしい)。よってこの歌詞は40歳前後になると共感できるようになるのかもしれない。
この歌は有名曲なので(ファン以外も知っている人が多い)、カラオケで歌うのも基本抵抗ない。しかし、歌唱難易度は非常に高く、mid2E~hiAあたりの声で力強く歌えることがこの歌を上手く歌う一番のカギとなる。それゆえ、この歌をマスターできたら、非常に気持ちが良いものだろう。私もまだあまり上手くは歌えない(後半でバテてしまう)ので、日々練習を重ねて、胸張って俺たちの明日が十八番だと言える日々を迎えに行こうと思う。

11.FLYER
アルバムのラストを飾るのにふさわしいスローテンポナンバー。きっとこの曲がアルバムのトップもしくは中盤に位置していたら、たぶん違和感あると思う。
「今日を越え明日へ」というフレーズから、タイトルのフライヤーとはきっと明日へ向かって飛び立つ人の意味だろう。「俺たちの明日」のコンセプトを上手く引き継いでると思う。

いかがだったでしょうか、「STARTING OVER」。これは本当に名盤中の名盤ですよね。このアルバムなくしてエレカシはまず語れません。

「今はここが真ん中さ!」(4分23秒)
収録アルバムは本作のみ
タイアップなし
調 ハ長調

「笑顔の未来へ」(4分50秒)
収録アルバム 「THE BEST 2007-2012 俺たちの明日」、「All Time Best Album THE FIGHTING MAN」
タイアップ 読売テレビ・日本テレビ系「ダウンタウンDX」2007年12月・2008年1月度エンディングテーマ
調 ホ長調

「こうして部屋で寝転んでるとまるで死ぬのを待ってるみたい」(4分53秒)
収録アルバムは本作のみ
タイアップなし
調 イ長調

「リッスントゥザミュージック」(4分39秒)
収録アルバム 「All Time Best Album THE FIGHTING MAN」
タイアップなし
調 ニ長調

「まぬけなJohnny」(5分15秒)
収録アルバムは本作のみ
タイアップなし
調 ホ長調(サビ以外)、ロ短調(サビ)

「さよならパーティー」(4分4秒)
収録アルバム シングル「俺たちの明日」のカップリング
タイアップなし
調 ニ長調

「starting over」(6分22秒)
収録アルバムは本作のみ
タイアップなし
調 イ長調

「翳りゆく部屋」(4分49秒)
収録アルバム 「All Time Best Album THE FIGHTING MAN」
タイアップなし
調 イ長調

「冬の朝」(2分16秒)
収録アルバムは本作のみ
タイアップなし
調 イ長調

「俺たちの明日」(6分17秒)
収録アルバム 「THE BEST 2007-2012 俺たちの明日」、「All Time Best Album THE FIGHTING MAN」
タイアップ ハウス食品「ウコンの力」CMソング、TBS系日曜劇場「集団左遷!!」テーマソング(2019年)
調 ホ長調

「FLYER」(3分51秒)
収録アルバムは本作のみ
タイアップなし
調 変イ長調

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