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Vol.「ラジオ電波と繋がれて」

Illustration&picture/text Shiratori Hiroki


すこしラジオについて展開しようとおもう。僕がラジオを聴くようになったのはたしかオードリのオールナイトニッポンだった気がする。不思議なことにきっかけを覚えていない。しかし今では綺麗なグラデーションでもって生活の一部になっているんで、僕にとってラジオとは不思議なものなのかもしれない。その不思議さが少しムズムズするから、こうやって文章に起こしあげるわけだけど、これといってパンチフレーズが出てくるわけじゃないから親戚が話す世間話くらいの粒立ちのない話だと思って読んでもらうと嬉しいです。もうすぐ年が明けるというのに僕はベンチしか無い公園のベンチに座ってる。

それでね、オードリーのオールナイトニッポンを聴きはじめたのは4年前だ。と思う。僕は音楽と近い距離で接している時間が多かったんだけど、それの反動というか、ちょっとした副作用というか、簡単に音楽が一切聴きなくない時期が乱周期で起こる。もちろん僕の携帯のマイリストの曲や、スーパーの店内曲も、あ、あと誰かの着メロも。全部うざいっていうかうるせえなと感じてしまう時期がある。たしか4年前にその深刻な周期に見舞われて、あるいはそういったおかげで、ラジオを聴くようになった。そしてオードリーのラジオを皮切りに、霜降り明星、ハライチ、菊池成孔、フワちゃん、ヒロコヒー、山下達郎、となんかまあ適当にいろんな時間にかけて、面白い世間話を聴くようになった。しかし最近では淘汰されてオードリーと霜降りとハライチが生存してる。王道ですみません。んでも好きなのだから仕方ない。この面白い世間話はけっこう僕を救ってくれた。なんか眠れない日とか、もうぜったい寝れない日とか、寝たくても目がバキバキの日とか。そんな日があるときに、ベットの脇にあるポケットラジオからラジオを聴いてた。初めは音楽からくる副作用だったんだけど、いつしか服用する日が増えていってしまって、気がついたらラジオ無しでは夜をどう過ごしたらいいかわかんなくなってしまったくらい。そんな訳でラジオが好きである。

そういえばこの公園は春になると桜が咲くんです。なので夜にここに座って今みたいにラジオを聴いているとそれはそれはいい気分で、よかったんですが、冬はしんどいなぁ。この時期は楓の葉が脇に落ちてる。あとこの公園のすぐそこの自販機はいつもホットのおしるこが品切れしている。公園の電灯が僕の座るベンチをぼんやりと映し出し、さながら、どしたんお前と心配になる風景画である。それらのせいか、さっき職質をされて警官の方に何をされてるんですか?と聴かれて咄嗟にお花見ですと答えたんだけどあれは逆効果だったかもしれない。あれはいつもより長い職質だったな。

冬のベンチしかない公園でお花見をしていた変人を装ってしまったささやかな興奮に浸りながら星がきれいなのと言っていた人を思い出してる。この前は満月なのと言ってくれたけど、全然満月じゃなかった。全然、満月じゃねぇーじゃんってマンガの吹き出しみたいに思わず口に出した。僕にとっては知らないことをよく知ってるのかもしれない。こうゆうことも全部筒抜けでお見通しなのかもしれない。それでもやっぱり満月じゃなくても教えてくれるのは嬉しい。公園で空を見ながら一人でにやにやとしてると職質されかねるので家に帰る。

帰り道の途中でタクシーを待っているサラリーマンがいた。スマホをいじりながら、時間を潰している。僕はそれを観ながら時間を潰している。じっくり観察するもんじゃないけど、おそらくだいぶお疲れようだ。ビジネスバックの角を電柱にコツコツと突いていて、たまに電柱に優しい頭突きをしてる。僕もよくするんであるあるなんだなって思う。そしてサラリーマンはたびたび唇に手を当てながらにやにやとしながら息を殺していた。偶然にも僕も同じタイミングで。その瞬間に失礼ながら嬉しくて、ポケットにあったカイロをぎゅっと握った。強く握ったからカイロの熱が伝わるのがわかる。喉元にはそれとは違う熱いものを感じた。もしかしたら星がきれいなのと言った人もそう感じたのかもしれない。そう思うというかそう思いたいと自分がわかるとカルテットのすずめちゃんでいうミゾミゾしてきた。さっき買ったコンビニのおでんの汁が冷めきっていたんでもう帰る。あとすげえ寒いし、家に帰る。

起きてこれを読んだけど、やはり、一人でにやにやする、はたまたミゾミゾするのはわるいもんじゃないですよね?職質されない程度に。


INFORMATION

白鳥ヒロ
2001年生まれの巳年


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