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【花は詠う】寄り添いの蒲公英 黒田勇吾


4月の母校の桜

その花は 静かに佇んでいた
始めは まだ花開かない 小さな蕾であった
気が付けば 太陽の光に照らされて
きみは 花びらを開いて 空を見ていた
一輪の 蒲公英

私の心の庭に 咲いた 励ましの黄色い花は
やがて 囁きはじめた
いや そうではない
遥か前から
ずっと囁いていたのだ
ただ私自身が その囁きに
気付く心が なかっただけだった

その優しき 囁きは
悲しみの涙を 流した人にだけ
聴こえるように 囁いていた
大丈夫 あなたは大丈夫
今のその苦闘は すべてに意味があるのよ
無駄なものは なにひとつないのよ

やがていつの間に 君の傍に
新しい蒲公英が 咲いていた
春の 眩しさが 増すにつれ
蒲公英は この道にも あの道にも
囁きの輪を 広げていった
それぞれの蒲公英は 囁いていた
大丈夫 大丈夫
あなたの苦闘は 私が見てきたから
だからもう少し 今の苦闘を楽しみましょう

蒲公英は 囁きの 花の絆を
たくさんの道に 広げていった
それぞれが 静かに 咲いていた
けっして声を 荒げることなく
けっして自己を 見せびらかすことなく

ある日 一番初めの君は
綿毛の純白に姿を変えていた
そう 旅立ちの準備の翼を 広げて
寄り添いの囁きが書かれた 手紙を持って
空へ 飛び立っていった

綿毛の蒲公英


小さな 小さな 一輪の花だった君は
また新たな使命を果たそうとして
飛翔していった
平和の心を 世界中に届けるための
優しい囁きが 書かれた手紙を 携えて
飛翔していった

青空の青が深まった 空に向かって
君は 風を味方にしながら 飛翔していった
        2023年 8月29日綿毛の蒲公英


旅立ち





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