#9 サムエル記第一

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レジュメ。

※「※」や「⇒」で書いてる記述は、このNoteを書いてる者のメモです。他はレジュメのコピペです。

1.はじめに

(1)書名
①本来は「サムエル記」という一書である。
②七十人訳が便宜的に第一と第二に分けた。
③それ以降、その習慣が定着した(ヘブル語聖書も同様)。
④「サムエル記」という書名は、サムエルが著者だからではない。
⑤サムエルが最初に登場し、中心人物として活躍するので、この名が付いた。

(2)著者
①サムエル記第一は、1:1~25:1までサムエルが書いた可能性がある。
*25:1で、サムエルは死んでいる。
②サムエルの下で学んだ預言者のひとりが、まとめた可能性もある。
*サムエルが書き残した資料を利用した。
③祭司エブヤタル(アビアタル)が、資料をまとめた可能性もある。
*彼は、ダビデと行動をともにしている(22:20~23参照)。

(3)内容
①サムエル記全体は、前1120年頃から約150年間の出来事を記している。
*士師の時代から王政時代への移行を説明する非常に重要な書である。
※使徒行伝が無いと、教会の成立過程が分からないのと同様に重要
※リンク、つなぎの書
②士師記の時代(混乱した時代)が約300年間続いた。
*政治的、宗教的、道徳的崩壊が進んだ時代
*士21:25
Jdg 21:25 そのころ、イスラエルには王がなく、めいめいが自分の目に正しいと見えることを行っていた。
③祭司たちでさえも堕落した時代
④国が崩壊の危機に直面した時、神の介入があった。
⑤ハンナの祈りに答えて、神はサムエルをイスラエルに与えた。
⑥サムエルのリーダーシップの下、国は立ち直って行く。
⑦サムエルの息子たちは、後継者になる器ではなかった。
⑧そこから、イスラエルは王政に移行する。
⑨サウルが初代の王、ダビデが二代目の王となった。
⑩サムエル記第一は、サムエル、サウル、そしてダビデの物語である。

2.アウトライン

1.サムエルの物語(1~9章)
(1)誕生(1:1~2:11)
(2)召命(2:12~3:21)
(3)契約の箱(4:1~7:17)
(4)王を求める民(8:1~9:27)

2.サウルの物語(10~15章)
(1)油注ぎ(10:1~11:15)
(2)サムエルの告別の辞(12:1~25)
(3)不従順の罪(13:1~15:35)

3.ダビデの物語(16~30章)
(1)油注ぎ(16:1~13)
(2)王宮での奉仕(16:14~23)
(3)ゴリヤテとの戦い(17:1~58)
(4)ミカルとの結婚(18:1~30)
(5)逃亡生活(19:1~26:25)
(6)ペリシテの地での生活(27:1~30:31)
(7)サウルの死(31:1~13)

3.結論(物語の背後に神学的意味がある)
(1)祈りの重要性
(2)王国の誕生
(3)預言者の出現

サムエル記第一を通して、イエス・キリストによる救いの土台について考える。

Ⅰ.サムエルの物語( 1 ~ 9 章)

1 .誕生( 1 : 1 ~ 2 : 11 )

(1)エルカナには2人の妻(ペニンナとハンナ)がいた。
①ハンナは不妊の女であり、ペニンナの陰湿ないじめに会っていた。
②人間的に見れば不幸なことが、神の計画のために用いられる。

(2)ハンナは、シロにある幕屋で祈り、【主】に誓願を立てた。
①もし男の子が与えられるなら、その子を幕屋で仕える者として捧げる。
②つまり、その男の子を「生まれながらのナジル人」にするということ。

(3)男の子が誕生し、サムエルと命名された。
①母親が命名した。
②サムエルとは、「神が聞いてくださった」という意味である。
③幼子が乳離れすると(およそ3歳)、ハンナはその子を【主】に捧げた。
④サムエルは、偉大な士師、祭司、預言者となる。
※サムエルはレビ族ではなく、エフライム族だったが例外。

(4)ハンナの賛歌
①この賛歌は、人生の逆転を経験した者が【主】の恵みをほめ歌ったもの。
②メシア的王国の預言も含んでいる。
③1サム2:10
1Sa 2:10 【主】は、はむかう者を打ち砕き、/その者に、天から雷鳴を響かせられます。/【主】は地の果て果てまでさばき、/ご自分の王に力を授け、/主に油そそがれた者の角を高く上げられます。」
④マリアの賛歌(ルカ1:46~55)は、ハンナの賛歌から影響を受けている。

2 .召命( 2 : 12 ~ 3 : 21 )

(1)祭司たちの堕落
①大祭司エリの息子たちは、よこしまな者たちであった。
*和解のいけにえを、私腹を肥やすために取っていた。
*道徳的罪を犯していた。
②エリは、子どもの教育を誤った。
③幼子サムエルは、自分にできる範囲で【主】の前に仕えていた。
④肉体的にも知的にも、成長し、神と人とに愛される人物となっていった。
⑤幼子イエスの成長を解説する言葉と非常によく似ている。
「イエスはますます知恵が進み、背たけも大きくなり、神と人とに愛された」
(ルカ2:52)
⑥時代は、祭司たちの時代から、預言者たちの時代に移行しようとしていた。
※祭司が堕落してるから移行していく。

(2)合計4回の【主】からの呼びかけ
①最初の3回は、エリからのものと誤解した。
②4回目に、「お話しください。しもべは聞いております」と応答した。
③この時から、サムエルは祭司として、また預言者として働くようになった。

3 .契約の箱( 4 : 1 ~ 7 : 17 )

(1)ペリシテ人との戦い
①指導者の誤った判断:契約の箱を戦場に運ぶ。
②イスラエルの歩兵3万人が倒れた。
③エリの息子、ホフニとピネハスが死んだ。
④神の箱(契約の箱)が奪われた。
⑤エリは、その衝撃で倒れ、死ぬ。

(2)神の箱は、ペリシテ人の偶像神ダゴンに勝利した。
①アシュドデ→ガテ→エクロンと回された。
※いずれもペリシテ人の町の名前
②最後は、イスラエル西端の地ベテ・シェメシュに戻された。

(3)ベテ・シェメシュの人たちは、箱の中を見て打たれた(=死んだ)。
①箱は、キリヤテ・エアリム(ユダの山地)に移された。
②アビナダブの家は、祝された。

(4)それから20年後に、サムエルの公の働きが始まった。
①ミツパ(エルサレムの北10キロ)でリバイバル集会が行われた。
②その直後、ペリシテ人が攻めて来るが、【主】は雷鳴によって勝利された。
③サムエルは、各地を巡回し、士師としての役割を果たした。
④ベテル、ギルガル、ミツパに「預言者のための学校」を設立した。

4 .王を求める民( 8 : 1 ~ 9 : 27 )

(1)サムエルの2人の息子(ヨエルとアビヤ)も、罪を犯していた。
①後継者がいない状態で、民は王を求めた。
②軍事的リーダーが欲しいという求めであった。
③内面の改革をしないで、外面だけを整えようとする動きである。

(2)サムエルは落胆した。
①王を求めることは、神を拒否したことである。
②王は、民に大きな犠牲を強いる。
③しかし民は、他のすべての国民のようになることを求めた。
※普通の国の国民のようになりたい、ってこと。

(3)神の許容的御心
①神は、イスラエルに王が必要となることを知っておられた。
②民が王を求める状況とタイミングが間違っていた。
③神は、サムエルとサウルの出会いを用意された。
※神はダビデを用意していたが、民が急いだのでサウルになった。

Ⅱ.サウルの物語( 10 ~ 15 章)

1 .油注ぎ( 10 : 1 ~ 11 : 15 )

(1)サムエルは秘密裏に、サウルに油注ぎをした。
①ヘブル語のメシアという言葉は、「油注がれた者」という意味。
②サウルは、劣等感と優越感の間を揺れ動く人物である。

(2)サウルは、アモン人との戦いに勝利し、民の信頼を得た。
①ギルガルで王権の更新が行なわれた。
②民は和解のいけにえを捧げ、「契約の食事」によってこれを喜んだ。

2 .サムエルの告別の辞( 12 : 1 ~ 25 )

(1)告別の辞の内容
①自らの役割の終了と、身の潔白を民に告げた。
②民の不従順を指摘した。

(2)サムエルが祈ると、時期はずれの雨が雷を伴って降って来た。
①士師の時代から王政への移行が完了した。

3 .不従順の罪( 13 : 1 ~ 15 : 35 )

(1)ギルガルでの不従順の罪
①サムエルの到着を待ちきれず、自ら全焼のいけにえを捧げた。

(2)息子ヨナタンの勝利を自分の手柄にした。

(3)アマレクを聖絶せよとの命令に違反した。
①遊牧の民アマレク人は、エサウの子孫だった(創世記36:12)。
②エジプトを出て荒野を旅する民を背後から襲った(出17:8〜16)。
③その事件から、すでに400年ほど経過していた。
④【主】はアブラハム契約のゆえに、アマレク人の聖絶をサウルに命じた。
※聖絶:完全に滅ぼして神にささげる,神のものとして完全に絶ち滅ぼす
⑤しかしサウルは、最上の羊を残し、王アガグを生かしておいた。
⑥サウルが王座から追われることが決まった。

Ⅲ.ダビデの物語( 16 ~ 30 章)

1 .油注ぎ( 16 : 1 ~ 13 )

(1)【主】はサムエルに、次期の王が誰であるかを示された。
①ベツレヘムのエッサイの息子たち
②8人兄弟の末っ子のダビデが選ばれた。

(2)油注ぎ
①サムエルは、兄弟たちの真ん中で、ダビデに油注ぎをした。
*ダビデとは、「愛された者」という意味である。
②【主】の霊がダビデに注がれた。
③同じ霊が、サウルから離れ去った。

(3)サウルの精神的な病
①悪霊の攻撃
②抑圧、不安、うつ状態、自殺願望、被害妄想の幻聴
③家来たちが琴の名手を呼ぶことを提案した。今で言う音楽療法である。
④家来の中にダビデのことを知っている者がいて、ダビデを推薦した。
*これは、神の摂理である。

2 .王宮での奉仕( 16 : 14 ~ 23 )

(1)ダビデを紹介した若者は、ダビデのことをこう描写した。
①琴の名手、勇士、戦士、ことばに分別のある人、体格の良い人。
②ダビデはまだ戦いに出たことはなかった。
③しかし、ライオンや熊などの野獣と戦っていたので、戦士と呼ばれた。

(2)サウルはダビデを気に入り、道具持ちとして召し抱えた。
①道具持ちとは、文字どおり王の武具を運ぶ者である。
②それはまた近衛兵でもある。
③ダビデが次期王として油注ぎを受けていることは、サウルはまだ知らない。
④ダビデが宮廷に住むのは、王になるための訓練でもある。
⑤ここで、【主】がサウルに悪霊を送った理由が、明らかになる。

3 .ゴリヤテとの戦い( 17 : 1 ~ 58 )

(1)ペリシテ人との戦い
①ペリシテ人は、代表戦士同士の戦いによる決着を提案した。
②ペリシテ側の代表戦士は巨人ゴリヤテ
*身長は3m近くあり、50kgを超える青銅の鎧で、完全武装をしていた。
③イスラエル人は意気消沈し、非常に恐れた。

(2)父の使いで戦場に行くダビデ
①ダビデは自分がゴリヤテと戦うと申し出た。
②兄のエリヤブは、軽蔑した。
③サウルは、ダビデを低く評価した。
*ダビデに自分の鎧を与えたが、ダビデはそれを脱いだ。
※サウルの鎧:自分に合ってない他人の鎧では勝てない。

(3)ダビデの戦略
①万軍の【主】の御名によって戦った。
②使い慣れた武器(石投げ)を使った。
③戦略があった。
※ゴリアテの額には鎧がかぶってなかったので、そこを狙って、脳しんとうを起こして、剣で突いた。

4 .ミカルとの結婚( 18 : 1 ~ 30 )

(1)ダビデは、サウルによって職業軍人として召し抱えられた。
①これ以降、サウルの側近として生活するようになる。

(2)サウルの息子ヨナタンは、ダビデを自分と同じほどに愛した。
①ダビデと兄弟契約を結んだ。

(3)しかしサウルは、ダビデを疑いの目で見るようになった。
①槍でダビデを殺そうとした。
②ダビデをペリシテ人との戦いに出し、戦死するように画策した。
③もし勝利すれば、娘のミカルを与えると約束した。
④結果的に、ミカルはダビデの妻となった。

※ミカル:契約の箱の前で踊るダビデを笑った人

5 .逃亡生活( 19 : 1 ~ 26 : 25 )

(1)サウルは再びダビデを殺そうとした(19章)。
(2)ヨナタンがダビデの逃亡を助けた(20章)。
(3)ダビデは、ノブとガテに逃れた(21章)。
①ノブは、幕屋のあった地。
②ガテは、ペリシテの5大都市のひとつ。
(4)サウルは(ダビデを助けた)祭司たち全員を虐殺した(22章)。
①エドム人ドエグの密告(のせいで虐殺された)
(5)ダビデはペリシテ人と戦い、サウルはダビデを追跡した(23章)。
(6)エン・ゲディの野でダビデはサウルの命を助けた(24章)。
(7)ダビデは、ナバル(という愚か者)の妻アビガイルと結婚した(25章)。
(8)ダビデは、ジフの荒野で再びサウルの命を助けた(26章)

6 .ペリシテの地での生活( 27 : 1 ~ 30 : 31 )

(1)ダビデは、ガテの王アキシュのもとに身を寄せた。
①信仰の揺らぎが見える。
②ペリシテ人の軍勢に参加すれば、イスラエルの民と戦うようになる。

(2)サウルもまた最悪の状態になった。
①エン・ドルの霊媒女を訪問し、(死んでる)サムエルに会おうとした。
②霊媒師を用いるのは、律法違反である。
③本物のサムエルが登場したので、霊媒師は驚いた。
④サムエルは、王権はダビデに渡されたと告げた。

(3)ダビデは、ツィケラグを襲ったアマレク人を滅ぼした。
①当時、ダビデの軍勢は400人。

7 .サウルの死( 31 : 1 ~ 13 )

(1)ギルボア山でのペリシテ人との戦い
①サウルの4人の息子のうち3人までが戦死した。
*ヨナタン、アビナダブ、マルキ・シュア
②サウルは、ペリシテ軍の集中攻撃を受け、重傷を負った。
*剣の上に倒れ伏して、自殺した。

(2)ペリシテ人は、サウルの首を切り、武具をはぎ取った。
①サウルの首は、ダゴンの神殿にさらされた。
②武具はアシュタロテ神殿に納められた。
③首から下は、ベテ・シャンの城壁に打ち付けられた。
③サウルの3人の息子たちの遺体も、その城壁に打ち付けられた。

(3)ヤベシュ・ギルアデの住民が、それらの遺体を回収した。
①彼らは、遺体を火葬に付し、遺骨をその地に葬った。

※火葬は緊急的、例外的。奪われないように。

結論:歴史的事件の内にある神学的意味

1 .祈りの重要性

( 1 ) 1 サムの始まり
①ハンナの祈り
②取るに足りないひとりの女の祈りが、イスラエルの歴史を変えた。
③神は、サムエルという器をイスラエルに、また全人類に与えた。

( 2 ) 2 サムの終わり
①ダビデの祈り
②アラウナの麦打ち場を買い、そこに祭壇を築いてささげ物を捧げ、祈った。
③ここに、神殿が建つことになる。

( 3 )神は、小さな祈りに応えて、大きなことを始めてくださる。

3 .預言者の出現

( 1 )サムエル以前にも預言者と呼ばれる人たちがいた。
①アブラハムは預言者と呼ばれている(創 20 : 7 )。

( 2 )サムエルは「預言者の時代」の最初の預言者となった。

( 3 )士師たちの時代には、祭司たちが霊的指導者として任命された。
①しかし、祭司たちは堕落した。

( 4 )王政に移行する段階で、預言者たちが霊的指導者として任命された。
①霊的権威は、祭司から預言者に移行した。

2 .王国の誕生

※日本だと王国っていうのはほぼ無い。天皇と将軍、将軍と藩主というようなら、権力分散の構造になっていたため。集中してなかった。後醍醐天皇や信長は集中させようとしていた。

( 1 )イスラエルは、神政政治から王政に移行した。

( 2 )神の統治は、神が立てた王によって地上で執行される。
①神は、ダビデとその子孫たちを正当な王として任命された。
② 2 サム 7 章のダビデ契約は、非常な契約である。
※将来メシアとして到来して地上の王国(千年王国)を統治するのはダビデの子孫でないといけない、と、ここで決まった。

( 3 )ダビデ王国は、将来地上に成就する「神の国」の予表となる。
※千年王国の型

( 4 )理想の王国実現のために必要な 3 つのもの
①正義によって権威を行使する王
②神への信頼を土台に統治する王
③神への従順を土台に統治する王

( 5 )理想の王と理想の王国
①理想の王は、イエス・キリストである。
*イエス・キリストは、ダビデの子孫である。
②理想の王国は、メシア的王国(千年王国)である。
*これが、旧約聖書の預言のピークである。

( 6 )新約時代に生きる信者への希望
①マタ 3 : 1 ~ 2
Mat 3:1 そのころ、バプテスマのヨハネが現れ、ユダヤの荒野で教えを宣べて、言った。
Mat 3:2 「悔い改めなさい。天の御国が近づいたから。」
②「天の御国」とは、メシア的王国のことである。
③ユダヤ人たちは、イエスを拒否し、御国を受け取ることを拒否した。
④その結果、異邦人が救われる時代に入った。
⑤しかし、神の計画は挫折していない。
⑥メシアの再臨の先にある千年王国の希望は、今もイスラエルのものであり、私たち異邦人信者のものである。

感想

結構、面白いです。

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