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歴史事典アーカイブ:閃きをあなたに

歴史学の独立研究者が運営しています。専門家の研究書等を用いて、歴史のより確かな知識と魅力をしっかり紹介します。ウェブ上のコスパよい歴史事典アーカイブの構築を目指しています。月額5…
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2024年10月の記事一覧

(定期購読)皇帝フランツ2世と神聖ローマ帝国の終焉

 フランツ2世は神聖ローマ帝国の最後の皇帝(1768-1835:在位は1792-1806年)。オーストリア帝国の創設者でもあり、オーストリア皇帝としてはフランツ1世を名乗った(在位1804-35)。フランス革命の勃発後に皇帝となり、革命への干渉戦争を行った。だが、帝国内の混乱とナポレオン戦争により、むしろ神聖ローマ帝国の歴史に終止符を打つことになった。オーストリア帝国では、メッテルニッヒを宰相として重用した。 フランツ2世(Franz Ⅱ)の生涯  フランツ2世は神聖ロー

(定期購読)ロバート・ボイル:科学革命と実験主義

 ロバート・ボイルは17世紀イギリスの哲学者(1627ー1691)。ボイルの法則で知られる。だが、彼の功績はこれに限られていない。むしろ、これからみていくように、科学革命が勃興する時代において、実験主義の導入や科学活動の組織化で大きな貢献をした。ボイルの法則の発見はまさにその一環であった。 ボイル(Robert Boyle)の生涯  ボイルはアイルランドのリズモアで裕福な貴族の家庭に7男として生まれた。父は初代コーク伯である。母を幼くして亡くした。  ボイルはイートン・カ

(定期購読)神聖ローマ皇帝レオポルト1世:オーストリア・ハプスブルクの確立

 レオポルト1世は神聖ローマ帝国の皇帝(1640ー1705)。在位は長く、1658から1705年まで。この時期、フランスとオスマン帝国と厳しい闘いを強いられた。第二次ウィーン包囲を耐え、フランスを孤立させてどうにか乗り切った。他方、オーストリア・ハプスブルク家の所領で対抗宗教改革を敢行した。芸術の愛好家としても広く知られる。 レオポルト1世(Leopold I)の生涯  レオポルトはオーストリアのウィーンで神聖ローマ皇帝フェルディナント3世の次男として生まれた。本来は兄の

(定期購読)ウィクリフ:イギリスの宗教改革の先駆者

 ジョン・ウィクリフはイギリスの神学者(1330 ー1384 )。当時の教皇や教会の教義への批判を行い、異端とされた。ロラード派などに大きな影響を与えながら、晩年まで著述活動に打ち込んだ。死後はコンスタンツ公会議で異端として断罪された。フスとともに、16世紀の宗教改革の先駆者として知られる。  この記事では、まずその生涯を確認し、次にその思想をみていく。ウィクリフとロラード派との異同についてもみていく。 ウィクリフ(John Wycliffe)の生涯  ウィクリフはイギリ

(定期購読)リンカーン大統領:南北戦争と奴隷解放宣言

 エイブラハム・リンカーンは第16代アメリカ合衆国大統領(1809ー1865)。南北戦争という内戦が生じる中でアメリカ合衆国を維持し、奴隷解放宣言で国内の奴隷解放を実現した。その生涯と功績を説明する。さらに、奴隷解放宣言の和訳も載せる。 リンカーン(Abraham Lincoln)の生涯  リンカーンはケンタッキー州の貧しい農家で生まれた。当時のケンタッキー州は開拓地であったので、リンカーン一家は開拓農民だった。幼少期、リンカーンはしっかりした教育を受けられなかった。

(定期購読)アインシュタイン:相対性理論と核爆弾

 アルベルト・アインシュタインはドイツの物理学者(1879―1955)「奇跡の年」に一連の物理学論文を発表し、一躍名声をえた。一般相対性理論を発表し、ノーベル物理学賞を獲得した。  これが物理学以外の分野にも大きな影響を与えた。第二次世界大戦ではマンハッタン計画に関わった。戦後は核廃絶運動に邁進した。以下では、アインシュタインの詳細な年表も掲載する。 アインシュタイン(Albert Einstein)の生涯 アインシュタインはドイツのウルムで工場を営んでいたユダヤ人家庭に生

(定期購読)アルビジョワ十字軍(1209−29):異端への十字軍がもたらしたものとは?

 アルビジョワ十字軍は、1209−29年に異端とみなされたアルビジョワ派に対して南フランスに派遣された十字軍。十字軍といえばイスラム教徒を敵とみなして聖地を奪還する第一回十字軍が有名である。しかし、十字軍は同じキリスト教徒の異端勢力にたいしても派遣されたのである。このアルビジョワ十字軍の背景と展開、意義や影響を説明する。 アルビジョワ十字軍の背景 アルビジョワ派(カタリ派)とは  12世紀半ばあたりから、アルビジョワ派が活動を始めた。彼らは地域によって名称が異なり、カタリ

(定期購読)ナポレオン・ボナパルト3世

 ナポレオン・ボナパルト3世は19世紀フランスの大統領で皇帝(1808ー1873)。ルイ・ナポレオンとも呼ばれた。フランス第二共和政においては、著述活動などを通して支持を獲得し、大統領に選ばれた (1850ー1852)。クーデターによって帝政を誕生させ、皇帝に即位した (1852 ー1870)。  20年間の治世では、フランスの経済発展やインフラの近代化、クリミア戦争やイタリア統一戦争への関与などを行った。以下では、ナポレオン3世と日本の関係についてもみていく。 ナポレオン

(定期購読)ニッコロ・マキャヴェッリ: 近世イタリア政治の荒波を乗りきるために

 ニッコロ・マキャヴェッリはイタリアの政治家で理論家(1469 ー1527 )。当時のフィレンツェ共和国で、外交や軍事などの様々な役職をつとめた。古典古代の著作と政治家としての経験をもとに、著作を執筆した。最も有名な著書は、チェーザレ・ボルジアのような人物をモデルとした『君主論』である。イタリア戦争で悲劇的な状態にあるイタリアを救う新たな君主の出現を待望した。この記事では、『ローマ史論』や『フィレンツェ史』についても説明する。 マキャベリ(Niccolo Machiavel

(定期購読)マルシリオ・フィチーノ: プラトン主義の新たな波

 マルシリオ・フィチーノは15世紀イタリアの哲学者(1433 ー1499)。メディチ家に支えられながら、プラトンなどの古典古代の著作の翻訳と研究を行った。  プラトン・アカデミーの中心人物として活躍し、新プラトン主義の主な哲学者として知られる。キリスト教と古代哲学の総合を目指した。ほかにも、これからみていくように、あのエジプトの秘教的思想にも精通し、その普及にも大きく貢献した。 フィチーノの生涯 フィチーノはフィレンツェで、裕福な医師の家庭に生まれた。彼はラテン語とラテン文

(定期購読)宮本百合子:天才少女から女傑作家へ

 宮本百合子は大正と昭和の小説家(1899―1951)。学生時代に坪内逍遥に見出され、作家デビューし、天才少女ともてはやされた。アメリカ留学を経て結婚し、離婚した。その経験をへて、代表作『伸子』を公刊する。  ソ連に留学し、社会主義に大きな影響を受けた。帰国してプロレタリア文学活動に参加した。時代の荒波に逆らい、窮地に陥りながら、女傑の作家として成長していく。 宮本百合子(みやもとゆりこ)の生涯 宮本百合子は東京で建築家の家庭に生まれた。本名はユリである。父は著名な建築家の

(定期購読)有島武郎:大正の社会問題に向き合う

 有島武郎は大正時代の小説家(1878―1923)。アメリカに留学した後、白樺派の主な作家の一人となった。大正時代に作家活動を本格化し、『カインの末裔』や『或る女』などを公刊した。リアリズムの小説家として文名を高めた。同時に、アナーキズムや社会主義に感銘をうけた。その結果、これからみていくように、晩年には社会を驚嘆させるようなことをやってのけた。 有島武郎(ありしまたけお)の生涯 有島武郎は東京で官僚の家庭に生まれた。父は大蔵省の官吏である。弟には、同じく小説家の里見弴(と

(定期購読)フランシスコ・ザビエル:日本で最初のヨーロッパ宣教師

 フランシスコ・ザビエルはカトリックの修道士(1506ー1552)。スペインのナバラで生まれた。ロヨラとともにイエズス会の創立メンバーになった。ポルトガル王の要請で東アジアに宣教師として派遣される。当初の目的地ではなかった日本で最初のキリスト教の宣教師となった。ではなぜ日本に到来したのか。その理由とその後の活動をみていく。 ザビエル(Francisco Xavier)の生涯  フランシスコ・ザビエルは1506年、スペインで貴族の子として生まれた。1525年、当時の神学教育

【定期購読】若山牧水:酒好き・旅好きの歌詠み

 若山牧水は明治と昭和初期の歌人(1885―1928)。早くから短歌に関心をもち、制作した。20代なかばで歌集『別離』が成功を収め、歌人としての地位を確立した。酒と旅を愛し、それらに関する多くの短歌をつくった。また、味わいのある紀行文を多く世に送り出した。そこには牧水の人柄がにじみ出ているので、そのいくつかをこの記事で紹介しよう。 若山牧水(わかやまぼくすい)の生涯 若山牧水は宮崎県で医者の家庭に生まれた。本名は繁である。早くから和歌に関心をもち、中学生の頃には短歌を制作し