アーリア人社会の中の先住民

問題

難易度: ★★★★☆
紀元前1500年頃からアーリア人が北インドに侵入し続け,インド先住民を支配・征服するようになった。彼らインド先住民はどのような特徴を持ち,アーリア人とどのような関係を保ったか,60字以内で説明しなさい。

配点: 4点 オリジナル(2020)

採点基準

前1500年からはほとんどアーリア人の時代ですから、先住民族だったドラヴィダ系民族のことについては深堀りをしていない受験生も多いのではないでしょうか。特にマイノリティにフォーカスを当てた問題を作ることが多い東大受験生は要チェックです。😎

①先住民の特徴
・ドラヴィダ系であることに触れていれば +1点
・タミル語を使用していたことに触れていれば +1点

②アーリア人との関係
・シュードラに位置していたことに触れていれば +1点
・農業あるいは商業に従事していたことに触れていれば +1点

解説

先住民族の特徴

古代インダス文明を担っていたとされるドラヴィダ系民族。アーリア人がインドで勢力を拡大する以前からインドに住んでいました。彼らはタミル語を使用しており、今でもスリランカや南インドの一部地域で話されていますね。教科書的な範囲だと、この「ドラヴィダ系であるこ」「タミル語を話していたこと」を答えられれば十分です。もう少し細かく解説すると、アーリア人は中央アジアからインドに侵入してきたインド=ヨーロッパ語族で、肌の色は白に近い黄色人種でした。一方でドラヴィダ系民族は黒っぽい肌の色をしていたため、アーリア人とは人種的に大きな違いがありました。

アーリア人との関係

アーリア人は紀元前1000年頃からヴァルナ制をつくります。このヴァルナ制とはバラモン教の中で確立した一種の社会階層を規定する法律のようなものです。ヴァルナとは「(肌の)色」を意味するため、アーリア人と先住民を区別することを強く主張した制度だということがわかるでしょう。つまりアーリア人が上位に、先住民は下位に位置するものですよ、と制度として作ってしまったのですね。よって先住民はシュードラに位置づけられ、アーリア人らがやりたがらない日常的な雑務(農業から汚い仕事まで)強いられました。この関係は現代まで続いており、一種の社会問題になっています。

余談

明確な法律はもうなくなりましたが、このシュードラ(あるいは不可触民)は現代にも存在します(地理も勉強している受験生なら知っています?)。現代シュードラ/不可触民に位置する人々は、過去3000年の間ずっと「就ける職業を定められ、それ以外のことは許されない」という環境にいました。なので、いつまで経っても裕福になれる人が出てきませんでした。しかし現代のグローバル化が進んだ社会で、これまでのインド社会が持ち得なかった産業が世界から輸入されました。それが情報技術(IT)です。ヴァルナ(厳密にはジャーティ)の規定には、このITを下位ヴァルナが務めてはならないという規定がない、かつこのITの世界で活躍できると裕福になれるという突破口が見えたため、こぞって情報工学の勉強をするようになり、インドはIT先進国となりました。現にGoogleなどの世界的なIT企業には下位ヴァルナにいた人々が多く在籍しています。もし何かしらの機会があってGoogleやAppleのイベントでインド人が登壇している映像などをみる場合、彼らの「肌の色」に注目してみるとよいかもしれませんね。

解答例

ドラヴィダ系民族でタミル語を用いた。アーリア人が作ったヴァルナ制に取り込まれ、主にシュードラに属し農業・商業に従事した。(60)

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