前500年前後に起きた宗教の革新運動

問題

難易度:  ★★★☆☆
前500年前後のインドにおける宗教の革新運動について,次の語をすべて用いて,150字以内で説明しなさい。

種姓(ヴァルナ)制度  バラモン教
仏教  ジャイナ教

配点: 10点 岡山大学(1999)

採点基準

指定語句から意図を読み取り、上手く得点を稼ぎましょう。仏教とジャイナ教について触れてほしいことは指定語句からもわかりますが、バラモン教の内的な改革についても触れてなければ点数は半減してしまいます。

①仏教・ジャイナ教の登場
・バラモン教はヴァルナを軸にした宗教であることに触れていれば +2点
・商業の重要度が増したことに触れていたら +2点
・クシャトリア(あるいはヴァイシャ)からバラモン教への反発があったことに触れていたら +2点

②バラモン教内の改革
・バラモン教の儀礼が複雑化したことに触れていれば +2点
複雑化した儀礼を批判し、ウパニシャッド哲学が生まれたことに触れていれば +2点

③その他
・指定語句を使用しなかった場合、都度 -1点

解説

クシャトリア・ヴァイシャの勢力が増した背景

前1000年頃からヴァルナ制を軸にしたバラモン教が確立し、古代インド社会が形成されました。その中で最上位がバラモンになるわけですが、クシャトリア・ヴァイシャもバラモンと同じアーリア人種なんですね。特に、相対的に身分の低かったヴァイシャはバラモン・クシャトリアがやりたがらない日常業務を受け持つ層として、農業・商業に従事していました。

しかし、前6世紀ごろにもなると、農業技術の発展により人口は増え、都市が生まれ、都市と都市が併合しさらに大きな都市へと発展していきました。さらにはオリエント世界(当時のオリエントを支配していた勢力はアケメネス朝ペルシアですね)との接触もあり、商業が活発になりました。必然と大商人が誕生し、資産の面ではバラモンをも凌ぐ個人がヴァイシャの層からも出てきます。同様に商業都市を担うクシャトリア(王族)も同様に豊かになりました。

しかし、バラモンからの軽蔑の眼差しは変わることがなかったため、クシャトリア・ヴァイシャ層はやがてバラモン教に反発するようになりました。その中で悟りを開いた2人、ガウタマ=シッダールタとヴァルダマーナが新宗教を興しました。これら新宗教は商人を軽蔑せず否定もしないという思想を持っていたので、商人に受け入れられ、バラモン教の枠組みから商人が離れるという結果を生みました。

危機感を感じたバラモンはウパニシャッド哲学を編み出した

日常業務をになっていた層が次々と支配下から離れると、秩序維持が困難になっていきます。バラモン層の人々も痛い目をみると内省に励むようになったのでしょうか。形骸化・複雑化した宗教儀式一式を批判する声がバラモン内部からも上がるようになり、やがて梵我一如を目指すウパニシャッド哲学が編纂されます。「個人が悟りを開けるような努力をしましょう。ヴァルナ制とは、この世に生を受けたものがカルマの重さによって采配されるようにするための仕組みなのです。」といった考えに変えていきました。

解答例

後期ヴェーダ時代にバラモン教では種姓(ヴァルナ)制度が生まれ、前6世紀になると商業が活発化し、クシャトリア・ヴァイシャ勢力が拡大するとバラモンへの批判が高まり、仏教ジャイナ教が誕生した。バラモン教内でも複雑化した儀礼を批判し、ウパニシャッド哲学が生まれた。(129)

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