7世紀以降の仏教

問題

難易度: ★★★★☆
7世紀以降のインドでは仏教が衰退し、ヒンドゥー教が幅広い階層に定着した。仏教が衰退した理由を,60字以内で説明しなさい。

配点: 4点 オリジナル(2020)

採点基準

衰退理由には実は2つの原因があります。それらを把握していますか?という問題です。このような問題が出された場合、バクティ運動によって仏教が衰退した、という説明だけでは半分の点数しか取れません。理解度が試される問題であり、合否が分かれる問題でもありますね!

・仏教内で密教が興ったことに触れていれば +1点
・密教がヒンドゥー教との違いを曖昧にしたことに触れていれば +1点
・バクティ運動による仏教否定が強まったことに触れていれば +2点

解説

バクティ運動の拡大

ヒンドゥー教におけるバクティとは、「最高神への絶対的帰依」を意味する用語で、6世紀頃から流行りをみせはじめたのですが、もともとは経典にかかれていた思想でした。これがグプタ朝期から増え始めた吟遊詩人の活動も相まって、6世紀には一気にその思想が南インドを中心に拡大した、という背景があります。バクティ運動とは、ヴィシュヌ神やウパニシャッド哲学のブラフマン・アートマンといった知識を知らなくても、神を信頼し、愛しさえすれば救済される、という訓えを信じ、その態度を遵守する、という運動になります。故に神への絶対的帰依のもと、ヒンドゥー教以外の仏教・ジャイナ教などの他宗教すら許さず、ヒンドゥー教徒は仏教を弾圧するようになりました。6世紀以降、インドの仏教徒人口が減り続けた理由はここにあります。現代でもインドといえば、仏教よりはヒンドゥー教を想起しちゃいますよね。

密教

バクティ運動によって衰退が加速した仏教ですが、同時に変革が起きていました。当時、「修行をし続けることで、何かよくわからんけど超常的な力が働き、救済される」という思想が生まれたのです。これは同時期にヒンドゥー教にも似たような思想が流行したので、仏教もそれを真似たものだと理解しておくとよさそうですね。この「なんかよくわからんけど超常的な力の恩恵を受けること」をタントリズムといいます。難関私立大学も併願で受ける受験生は覚えておいても損はないでしょう。

このタントリズム的な思想を取り入れた仏教のことを「密教」と呼びます。結果として、タントリズムを取り入れたヒンドゥー教と似たようなことを唱え始めたので、両者の違いが曖昧になり、「同じような修行を積むことで救われるなら、多くの人が信仰しているヒンドゥー教徒になれば変な迫害も受けずに済むし、仏教信仰は辞めておこう。」と考える人が増え、ますます衰退に拍車がかかったのですね。

解答例

密教が誕生し、ヒンドゥー教との違いが曖昧になり、かつバクティ運動によって仏教が広く否定されるようになったため。(55)

ここから先は

0字

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?