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山下達郎『RIDE ON TIME』(1980)
アルバム情報
アーティスト: 山下達郎
リリース日: 1980/9/19
レーベル: AIR/RVC(日本)
「50年の邦楽ベスト100」における順位は22位でした。
メンバーの感想
The End End
“映える”音になったな、という感想。私の知っているヤマタツになられた…うーん、決して嫌いではないんだけど、楽しむことはできるんだけど、なんか好きって言えない。お洒落であろうとしているものが肌に合わないのかもしれない。
どちらもほとんど知らない頃、うっすらしたイメージだけで“大瀧はいけるのにヤマタツはなんか得意じゃないんだよな…”と思っていたが、こうして並べて聴くとかなり別物だ。
桜子
陽キャ大好き!!
完璧主義者なんだろうなあって、楽曲に対する完成度や、いい意味での違和感のなさから感じます。その違和感の無さが”聴き易さ”になっているのがすごいなあって思います。名盤って色々定義があるだろうけど、やっぱり年齢や流行とは離れた軸で聴ける聴き易さが必要だと思いました。
俊介
恥ずかしながら初めて聴いたのですが、「西海岸で飲む、いつもの味。僕にとって新鮮みがないことが、成功の証だと思う。」なんて例のコピペを思い出すくらい、初めて聞いた感じが全くしない。
自分の中でぼやけてた古き良き初期シティポップの概念がそのまま形になってるみたい。
特段の感動はないけれど、気の赴くままに雑多に摂取してきたシティポップの点が、このアルバムを聞くことによって線で結ばれた気がする。いろんな意味で本ランキングにうってつけのアルバムだ。
湘南ギャル
SPACYを聴いた時は、これなんで100位以内に入ってんだ?と正直思ってしまったので、かなりビビりながら聴き始めた。そしたら開けてびっくり、一音目から良い。ダンス上手い人が、指先まで神経が行き届いている、みたいな褒め方をされることがあるけど、これはその音楽バージョン。好き嫌いとか語るのが畏れ多くなるような完成度だった。
しろみけさん
“SILENT SCREAMER”のギターソロとか“RIDE ON TIME”のサビ頭の「オッ→オッ↑オッ↓」とか、真っ直ぐクサイことするようになったの?って思った。クサイってのは貶してるわけではなく、例えば“雲のゆくえに”での薄く敷かれたシンセなんかは、シーサイドの雰囲気をわかりやすく演出する賑やかしみたいなもんで、ストイックでフックのない『SPACY』のころには考えられなかった要素の一つでもある。
つまり、ヤマタツはフレンドリーになったと思う。『SPACY』君は気難しすぎて話したくなかったけど、『RIDE ON TIME』君なら登下校の時に2人きりでも困らない程度にはコミュニケーションが取れる。これを「リスナーの目線を手に入れた」と捉えるか、それとも「ポップに迎合した」と捉えるかはその人次第。少なくとも自分は飽きることなく楽しく聞けた。
談合坂
洗練されてるってこういうことだなあと。リッチかつパキッとしたサウンドが好物なので大満足でした。
多くの人がこのアルバムを聴いたときに思い浮かべる景色は何かしらぎらついていてドラマチックなものなんだと思うのだけど、私が真っ先に思い浮かべるのは雨が降る昼下がりの山手通りとか都心環状線みたいに、退屈で殺伐とした都会。質量があるけど「何もない」、ただ通り過ぎるだけの場所が私は好き。
葱
うわー。めっちゃ聞きやすいじゃん。大瀧詠一が音を重ねて音響的挑戦をして、ヤマタツはコーラスを重ねてEarth, Wind & Fireら多幸感のあるファンクと接近していた、んですね。「SILENT SCREAMER」で歌い上げるヤマタツから中盤のブレイクビーツ?リズムセクション、ギターソロ、そしてコーラスとボーカルの掛け合い流れ込む一連の構成はライブを見に行ってるような臨場感があった。サイレントスクリィマァー♪♪
みせざき
明るさ、爽快、綺麗さ、そうした言葉が次々と自然に出てくるようなポップス。ポップスとして凄く完成されていて本当に透き通るような音楽だった。Rainy dayの様なしんみりしたスローな曲調は特に自分の好みでした。隠の要素がまるで無く、脳内で深く処理するのでなくそのまま通り過ぎてしまうような透明感を感じた。ただそうした透明感がもの凄い自分の好みかと言われれば、正直違うなとは感じた。ただ凄くダンサンブルなバンドサウンド、クリーンなギター、コーラスワークは聴けば聴くほど癖になる感覚を味わうことが出来た。
和田はるくに
先月の座談会の「やまたつは陽キャ」発言があった通り、私らの間ではある程度彼の作品に対して苦手意識を共有しているもんだと思っていた。それもあって、お勉強しようとライブ盤のJOYを聞いてみた。
ちょ〜ソウル。歌うまいって知っていたけど、凝り固まった苦手意識揺さぶられて中の寒天質出てくるくるくらいにはショックだった。
その経験があってから過去のアルバムを聴いたり、このアルバムを聞いた。見方を変えるだけでアルバムに肉体性がともなってくるもんだから音楽は面白い。「RIDE ON TIME」の後に青年の咆哮が聞こえる。
ただ、全面降伏したわけではなくて、受け付け難い瞬間(「夏への扉」とかはちょっと退屈だった)もあったけど、彼への解像度が上がった。これはちゃんとコンサートに行ってみたい。
渡田
自分が抱いていた山下達郎のイメージそのもののアルバム。
全部の音がはっきりしていて、どのパートの音も主役として聞こえる不思議なアルバム。
今までレビューした曲で多かった、無意識のうちに曲の印象を形作っている、おぼろげな音の存在がなく、どの音も意識せずにはいられない。どのパートのフレーズも、主張は激しくなく、慎ましげなリズムであるにもかかわらず、耳に心地よく残る。「いつか」と「RIDE ON TIME」の2曲では特にそう言った特徴を強く感じた。
バンドが互いに音を〝乗せあっている〟のではなくて〝組み合わせている〟イメージ。どんなジャンルの音楽を弾くにしても、そういう関係で誰かと音楽ができたらとても楽しいだろうし、良いものができるだろうとも思う。
次回予告
次回は、大滝詠一『ロング・バケイション』を扱います。
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