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Beatles『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(1967)

アルバム情報

アーティスト: Beatles
リリース日: 1967/6/1
レーベル: Parlophone(UK)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は24位でした。

メンバーの感想

The End End

 お手上げだ。非の打ちどころがない。ハタチを越えてから初めてスピッツの『ハヤブサ』を聴いた時の気持ちが蘇ってきた、みんな、これまでこんなアルバムがあることを、こんなバンドがあることを知った上でよくバンドをやる気になりましたね……
 マイナー調の楽曲ももちろんあるが基本的には賑やかでハッピーな音像を軸としてアルバムは進んでいく、けれど、どこかずっと正気でないというか、ドロドロしたものが付き纏っているように感じる。その点で、『Revolver』の方がシンプルに好ましく聴けたかもしれない。

コーメイ

 "ポール、一曲目、がなるんかい。"これが、毎回このアルバムを聴くと思うことである。「Sgt.」の2回目は、ジョンが歌っているけれども、冒頭で、騒ぐ―いい意味で―ポールを耳にするたびになぜか、このツッコミをしてしまう。
さておき、宙を舞うような音が多い。当然、LSDの影響を受けてのことだけれども、その中でもオーケストラを用いた演奏で、ある程度締めることもしている。
しかし、「A Day in the Life」で日常を紹介していったと思えば、最終的に、爆音で演奏を閉じた後、呪文のような言葉が続き、終わるという展開という混沌で終わる箇所に、興味を抱く。あれだけドラッグソング風の列挙があったにも拘らず、いや、むしろ、総仕上げとして特大ホームランをかっ飛ばすあたりに、"うわ、なんやこれ"と"でも、ええなあ"という相反する感想が、毎回出てくる。これが、一番このアルバムへの印象かもしれない。
あと、あの間延びしたリンゴのボーカル、ええやん。以上。

桜子

 この企画で何枚かビートルズを聴いてきたけれど、やっぱりバンドって、自分の身体ひとつじゃ想像つかないところに辿り着くところが面白いなぁと思う。何にでもなれるし、何になるか分からないし、どこまでも可能性がある、際限のない集合体だなぁって、このアルバム聴くと、夢見れる。

湘南ギャル

 今までなんとなく苦手なアルバムだと思ってたけどなんでだ?!めっちゃオモロいやんけ。ポップで明るい音が目立つけど、同量の狂気も混ぜ込まれているように思う。「Good Morning Good Morning」とか怖すぎる。目覚めたら憂鬱で動けなくて、それでも自分が動かないとアラームは鳴り止まなくて、カーテンの隙間から照りつける太陽に責められているような、そんな朝に一瞬でなる。そんな歌詞ではないんだろうが。この曲に限らず、夢の中で何かやらかした時みたいな、変な焦燥感と浮遊感がアルバムを通して続く。あとから全部嘘だってわかるからもう一回聴けるけど、本当だったら恐ろしくて近寄れないと思う。
 余談。Apple Musicで一部のジャケが動くようになり、そしてこのアルバムも例外ではない。最後の曲の最後の方、この動いてるやつらが喋ってるみたいに見える。これこそほんとに悪夢見そう。

しろみけさん

 ポールさん、ビーチ・ボーイズとか好きなのかな……笑 アルバム全体で架空のバンドを想像するの、コンセプトとしては新しいけど、何かしらのペルソナを介さないとビートルズとしてのコミュニケーションが出来ないってことでもあるなかなぁ、って。でも🍎とかめっちゃ良い曲だしてきたしね! ジョージくんはインドから出てこれないみたいだけど笑
 ……でもやっぱ、ライブしてくれないのは寂しい。あーあ、「A Day In The Life」も作っちゃったし、これで終わりでも、誰も何も言わないのになー。私のマシュマロにも、同じようなのいーっぱいきてる。今「All My Loving」とか聞いたら泣いちゃう。

談合坂

 至り切った感がある。今までなかった面白い音を鳴らし続けていてもビートルズビートルズしている。これまではやっぱり歴史的な文脈のことを傍で考え続けてしまったけど、このくらいの清々しさだったら聞きながら素直に興味を惹かれる。そのうえで時代的なことも想像したらこのアルバムのもつインパクトってかなりすごい……

 せっかくならビートルズを聴きながら読もうってことでノルウェイの森を「sgt.~」を流しながら読んでいた。そしたらあとがきで村上春樹が「この本は『sgt.~』聴きながら書きました。」って言っていて、めっちゃ震えた。最高の読書体験だし、一生忘れない。(2020/9/7 @neginegi0924のX(旧Twitter)の投稿より)

みせざき

 こうして時系列に聴いてみると、時代を超越した鮮やかさ、輝き、完成度があり圧倒されてしまう。『Pet sounds』は一聴だけでは掴み切れない作品ではあったが、本作はもう聴いただけでポップス作品としての永続的な輝きを目の当たりにできる。
 曲によってキャラクターが完全に異なり、エッジの効いたギターやハープ、シタール、また何で作っているのか分からない幻想的なCG音源等、それぞれの楽器と音の主張と共に曲としての輪郭が完全に異なる。
 こんな名作なのに、肝心のコンセプト要素が最初と最後でしか徹底されていないというのもまた面白い。あとリンゴスターのドラムって思った数百倍独創的だというのも再確認できた。特に「A day in the life」のドラムとかかなり不規則なパターン、バスの使い方だと思った。

六月

 正直、小学生の時に初めて聴いた時は巷で言われるほどにアルバムとしての構成が凄いとは思えなかった(もちろんそれは、この後に出たこのアルバムの影響を受けた数多の作品を聴いていたからなのは明らかなのだけれど)。当時の耳に近くなってきている今は、その斬新さがより高い解像度を持って伝わってきた。それでもなお、一曲一曲の楽曲の完成度は他のアルバムに軍配が上がるという感想は変わらないのだけれど、何度か聴きなおして考えた結果、このアルバムだけ受け止め方が違って、アルバム全体で一曲というような、組曲のような聴き方をしてみるとよりわかるんじゃないかという結論に至った。意外とコンセプト・アルバムという枠組みにとらわれながらもそこまでの聴き方はしたことがなかったので、それで聴いてみると長い間モヤモヤしていたこのアルバムに対するあまり理解できないという感情がストンと腑に落ちたような思いになった。ポップ・ミュージックがクラシック音楽の領域に手をかけたという斬新さなのだな。
 あと、しっかり整理されたステレオミックスを聴いてみると、音がやっぱりすごいというか、同時代のバンドとは段違いにアイデアの出力に金と労力がかけられてるアルバムだなあと思う。これをサイケデリアの典型として子どもの頃初めて受け取ったから、その後のサイケデリック・ロックとされる他のアーティストのアルバムを聴いてもあまりピンとこなかったんだけれど、それもしょうがないというような気がする。ここまでのことを、ビートルズ以外に誰ができるだろうか。その意味でも、このアルバムは当時の最先端で、他の追随を許さないという言葉がピッタリな、最大級の衝撃として受け止められたんだろうな。

和田醉象

 このアルバムを初めて聴いたのは浪人時代のことだったように思う。高校の時の先生が私家版Beatlesのベストを作ってくれて、それをずっと聴いていたんだけど初めてアルバム単位で手を出したのはその浪人時代のTSUTAYAに行った時だった。
 正直なことを言うとその頃は結構地味なアルバムだと思っていた。なにしろ、私家版に人気曲を入れられていて、そこで触れた曲で十分になってしまっていたのだ。だからあまりアルバム全体を創刊する必要がなかった。
 だけどそこからBeatlesのリミックスプロジェクトが始まって、何か出るたびにBeatlesを聴くようになり、このアルバムにも取り組む機会が何度もあった。
 「Lovely Rita」みたいな曲って今までまったくなかったんだけど、アルバムのコンセプトのもとにこれまで作ってきた曲の流れすらも完全に断ち切ってしまって新しいBeatles層を作り上げてる。
 聞くたび思うけど「Good Morning Good Morning」の譜割どうなってんだ?プログレですらなく、こんな曲がポップソングとしてアルバムに存在しているのが本当に恐ろしい。

渡田

 ゆっくりの曲が多いから、聴いていて次はこういう音程になるだろうかとか、自然に予想したりもできるのだけれど、少しずつその予想が裏切られる。ドラムの大きな音が片耳にだけ聞こえたり、ぼんやりしたコーラスが入り込んだり、予想できない一点が細かく入り込んでいて、全体としては聞きやすくて置いていかれる感じがしない音楽なのに、常に予想外のことが起きるのが楽しい。
 妥協なく丁寧に作られた子供用絵本のように、素直な気持ちで、気負いなく楽しめるものだけれど、満足感は映画を見終わった時のようだった。

次回予告

次回は、Four Tops『Reach Out』を扱います。

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