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映画「月」を観てきました。

相模原障害者施設殺傷事件の映画です。
軽度知的障害・自閉症児の母であり、知的障害者施設の職員でもある自分の感じたことは、まず同じ立場の親御さんに向けたい。
2018年の映画「岬の兄妹」と同じですが、これは健常者と社会に向けて作られていると思います。当事者家族は、無理に観なくてよいと思います。

この映画は「問いかける」なんてものではない。
「突きつける」ですら生ぬるいと感じる、放たれる言葉の数々。
色んな想いと、自らの息子との20年の記憶とが交差しました。
ただ、私の子は軽度なので同列にはとても語れない。特別支援学校を出て以降の重度障害者は本当に社会から見えなくなる。家の中か、施設の中にいるから。

障害者題材では、韓国映画で実話ベースの
「トガニ 幼き瞳の告発」2011年
邦画では、
「学校III」1998年
「くちづけ」舞台初演2010年/映画2013年
「岬の兄妹」2018年
があり「くちづけ」が実際に起きた事件に着想されたもの。
「月」は「岬の兄妹」以上の踏み込んだ映像になっていると思います。

無差別殺人事件を起こす人間は、歴史に名を残すこと、話題になることを望んでる。だから、こんなふうに映画化するなんて、植松死刑囚を大喜びさせてしまうんだろう。そのことに対するジレンマを感じるけども、それでも製作されたことを、私は是としたいです。

何故なら、この映画は、
「あなたは何もしないの?」
がいくつかある問いかけの一つだと思うから。
小説にすること。映画にすること。演じること。それらすべてが、一つのアクションで、何もしないより、一歩前に踏み出していると思うから。
この題材を背負ったスタッフ陣と俳優の皆様の覚悟が伝わる映画でした。

ある側面について、思うことがあります。
この映画に映し出される 「意思の疎通が出来ない重度障害者」。
私たち健常者は、彼らに関わらないで生きることが出来る。
これまで通り、見なかったことにして生きることが出来ます。
でも、いつも思うんです。
誰ひとり本質的には無関係ではない。人ごとではない。

「意思の疎通が出来ない認知症の寝たきり老人」

それには、すべての人が「これから」なる可能性があるから。 
障害者になる未来は、誰の人生にもありえることだと思うんです。


▼「岬の兄妹」の感想はこちら


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