見出し画像

【Bistroメニュー開発】vol.2雇われコックの落とし穴

Bistroグランドメニューの改正の裏側を書いています。

前回は調理場の立場として、どういう事が大切かといったことや、強みを活かした尖ったメニューの考え方を自分なりに書いてみました。

しかし
こういう状況になると、舞い上がってしまい、変に意気込んで、自分の今までやりかった事を一気にやろうとしてしまいがち。

これは大いに危険な事だと思います。

自分は雇われだという事。
リスクをとっているオーナーシェフとは立場が違う。
それを忘れた立ち振る舞いをしてしまいがちです。

僕は過去、この事がわかっておらず、深く傷つき、絶望した経験があります。
その時に痛感した、雇われ料理人としての心得。
今回はその辺りを書きたいと思います。

ここを押さえておかないと、膨大な時間が無駄にし、身も心もダメージを負ってしまう事があるので要注意です。

やりがいが生まれ、愛情に変わるまでのプロセス。そして危険な落とし穴

料理人にとって、自分の作った料理が喜ばれることは、本当に嬉しいことです。
最初は、賄いで同じスタッフや、先輩に褒められた経験をし、
次は、自分の担当した料理が部分的にお客さんに喜ばれたり、
料理長となれば、全体的に美味しかったとお褒めの言葉をいただいたりすること。

そういった経験を繰り返せば繰り返すほど、自分の料理や店に対して愛情を持つようになります。

こんな声をもっと増やしたい!もっと良くしたい!
そう思うのはとても良いことで、自然な流れでもあります。

ーーー

が、ここで自分が正しいと思い込み、周りが見えなくなり突っ走ってしまうのはかなり危険な落とし穴です。

あくまで雇われ料理人、会社の歯車でしかない。
一度クールダウンし、気持ちを落ち着かせましょう

何故か?
自分のやりがいや愛情なんてものは、会社の状況によって、あっさりと流され、消されてしまうからです。

絶望した過去の経験談

前職、僕はこの事が理解していなかったためにとても痛い思いをしました

そこでは、高速道路のサービスエリアにある店舗で、繁忙期には一日1000名近くのお客様が訪れるような店舗でした。

提供しているものは、坦々麺や醤油ラーメン、あんかけ焼きそばといった麺飯もの。
あらかじめカットされた野菜や、外部の業者に委託した調味料を使って、現場ではそれらを使って提供していました。
あんかけはあらかじめ作っておいて、湯煎していました。

ところが、クレームばかりでした。
あんかけがぬるい、カット野菜特有の薬品臭がする、タレの味が美味しくない。

そこでオペレーションなど改善を重ね、少しずつ本来の形に戻していったのです。
野菜は現場でカットし、タレも現場で作成、そしてあんかけはオーダーが入ってから作る。
あんかけなんて出来立てが美味しいに決まっています。

それを続けた結果、徐々にクレームは減り、さらにはお褒めの声も増えたのです。
コストの面でも、現場で作成した方が安く、数字の面でも改善が見られました。

そして何より現場の感覚として、良い料理が出てるなっていう手応えを感じました。湯気の出方や料理の色艶が明らかに違いました。

その時料理長だった僕は、やっぱりなるべく自分達の手で仕込みをし、出来立てを提供する事がこの店の方向性だ!
と確信し、それをアルバイトスタッフにも言い続けていました。

まだまだとは思いつつも、過去よりは明らかに良くなっている自分の仕事にやりがいを感じ、店に対して愛情の気持ちが生まれ、さらに強くなっていきました。

そんな最中、オーナーからまさかの方向転換を強行されたのでした。

それは以前のように、カットした野菜に戻すどころか、あんかけなどは事前に作っておき冷凍パックしたものを使うという事でした。またタレなどは他店舗で仕込んだものが送られてくる事になりました。

なぜ?
それをやめたから良くなっていったんじゃないの?

僕は全く意味が分かりませんでしたが、強行されました。
納得がいかず、?のままアルバイトに説明しなければなりません。
当然アルバイトも?で、現場全員が?でした。

後にわかった話で、当時現場には伝えられていませんでしたが、この店舗はもうとっくに閉店することが決まっていたようなのです。

別件で、会社の新しいプロジェクトとして、冷凍食品をパックして販売するという話があったようで、それを試して、感触を得たかったのだということでした。

つまり会社としては、僕が愛情を注いでいた店舗はもう終わっていたのです。

まぁとはいえ、会社としても最後まで、頑張ってやりきってほしいという思いがあった事も事実。
なのでギリギリのタイミングになるまで、その事は現場には伏せられていたようでした。

理解は出来ましたが、悲しかった事は鮮明に覚えています。
僕は騙されたような気持ちななりました。
しかしそれはただ単に、僕が舞い上がっていただけだったんだなと反省しました。

3つの雇われの心得

  • 愛情を注ぎすぎるな。

  • 自分の意志や愛情など会社の意向で、あっさりと呑まれてしまう。

  • 嫌ならリスクをとって、自分でやるしかない。

だからといって何をやっても無駄なのか?
というとそんな事はないと思っています。
逆にそこさえ忘れなければ、会社のお金と時間を使ってノーリスクで新しい事が出来るのです。

やる気は出すけど、体重は乗せない。
あの時の絶望感はもう味わいたくありません。
楽しく!楽しく!(無理矢理!)

ただ、なんやかんやで、何品か採用され、新しく生まれる予定のメニューもあったりもしています。
次回は前に進んだ話をしていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?