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夫がALSになってやってみたこと①      礒谷式力学療法

ホームページによると

礒谷療法は、股関節を矯正し、骨盤・背骨の歪みを正す療法です。全身のバランスを整えることにより、腰痛・肩こり・首のこり・ヘルニア・O脚・股関節などの痛みを緩和するばかりか、様々な疾病も改善します。 初見で、あなたの股関節の歪み具合を診断します。適切な施術を行い、股関節を中心に歪みを改善し全身のバランスを整えます。薬を使わず、身体に無理な負荷もかけず、痛みは無しで、人間の持つ自然免疫力を高める体に優しい療法が礒谷療法です。

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前向きなことを言ってくれた人は初めてでした。

夫はこれを、約6年間続けました。

ALSと診断されて3ヶ月経った頃、歩けるけれど腕は上がらず、息苦しさと飲み込みの悪さを訴えていました。そして右脳開発で有名な七田眞先生の著書の中に「般若心経を毎日100回唱えると奇跡が起こる」と書いてあったのを見て、毎日励んでいた痛々しい姿が忘れられません。

そんな時に友達から「癌や難病を治しているすごい先生がいるよ」という情報をもらい、すぐにそこに電話して事情を伝えました。するとあっさり「大丈夫ですよ。良くなりますよ。」と言ってくれたのです。

前向きなことを言ってくれた人は初めてでした。

夫は偶然にも、病気になる前から礒谷療法の本を読んでいて、理論のシンプルさと実績を高く評価していました。なのでこの話を聞いた時に、これしかない!と飛びついてしまったのです。


私たちは喜び勇んで通い始めました。他の患者さんからも、これでガンが治った、脳梗塞の後遺症が治った、膠原病が治った、腰痛が治ったなどの話を実際にたくさん聞き、期待に胸を膨らませました。

でも、週2回で2ヶ月ほど続けた頃には息苦しさがどんどん増していました。なかなか良くなる兆候が見られず、ついに私は「主人の病気は例外だということはないでしょうか?」と聞きました。

例外はないと言うけれど

すると「礒谷療法に例外はない!股関節を正しい場所に納めれば背骨がまっすぐになって、何の病気でもよくなるに決まってるじゃないか」と叱られ、ホッとしたのです。(冷静に考えると・・・?!)


今振り返ると、二人とも不安と恐怖に苛まれ、周りが見えなくなっていました。冷静な判断ができない状態です。

そしてそれから1ヶ月後、施術の帰りに呼吸困難になり救急搬送され人工呼吸器をつけることになりました。

呼吸器をつけてから5年半も通って

驚くべきことに、その後人工呼吸器を付けながら車椅子でさらに5年半以上通ったのです。他に方法がないと思い込み、不信感があっても手放せない極度のビビリ状態だったと思います。


結局、6年経っても症状は改善せず、とうとう「この病気だから治らない。気管切開をしたのが悪かった」と言われました。

でも気管切開しなければ死んでいました。


読んでくださっている方は、なんてひどい!と思われるかもしれません。私もその時は正直、かなり怒りを覚えました。

はあー??今更なによー!って。

しかし考えてみれば、あの頃病院で絶望的なことばかりを告げられる中、先生の前向きな言葉が私たちを支え、なんとかそこまで希望をつなげてくれたのです。それだけでもありがたいことでした。

それに背骨がまっすぐになり、体調が整ったのは間違いありません。常に顔色が良く、呼吸も安定していたのですから(あくまで、人工呼吸器をつけた上で)。


もう、なんでもいいや。全て必要な経過だったのだ。なにより、選んだのは自分たちの責任なのだから、と思うようになりました。

礒谷療法を卒業しました。

この経験と様々な学びからわかったのは、カラダに働きかけるだけではこの病気は治らないということ、誰かになんとかしてもらおうという依存的な姿勢では何も始まらないこと、これだけが正しいという主張には距離をおくようにしようということです。

たくさんのことを学ばせてもらい、さらに先に進むための後押しをもらいました。


私たちは礒谷療法を卒業しました。