私とイチと将棋6
今回は将棋会館に初めて行った時の話です。
2019年6月22日
将棋をはじめたからには一度は総本山をみておこう!ということで、千駄ヶ谷にある将棋会館へ行くことにした。
新宿で乗り換えて、千駄ヶ谷駅へ行った。駅に将棋駒のモニュメントがあると聞いていたので、イチと一緒に探したけれど見つからなかった。
あとから駅の工事で一時的に撤去されていたことを知った。
将棋会館に着くと1階が売店になっており、棋書や将棋駒など将棋グッズがたくさん売っていた。私としては売店を見ているだけでもだいぶ時間が潰せそうだと思った。
2階が一般に解放されている将棋道場になっている。そこでは、大人も子どもも入り乱れて対局しており、なかなかの熱気だった。それから、子どもを引率している親もなかなか気合が入っており「あと一局がんばれ!」とか「やる気ないなら帰るぞ」など叱咤激励が飛び交っていた。
イチは少し不安そうにしていたけれど、受付を済ませて、手合いがつくと小学生のお兄さんに連れられて対局を始めた。
私はしばらく入口付近で様子をみていた。
するとイチが2人分の手合いカードをもって受付のほうに行ったので、どうやら勝ったらしい。
時々、「トイレに行きたい」と言いに来る以外は、私に話しかけることもなく、対局を繰り返した。
辺りが暗くなってきた頃、私からそろそろ帰ろうと声をかけた。手合いカードをみせてもらうと4勝5敗で13級の認定となっていた。
しかし、私はイチが手合いカードを持って受付に報告する様子を見て、勝ち負けを判断していたのだが、どうにも星の数が合わない。
イチに「3回目って負けだったの?」と聞いてみたところ、「勝ったよ」という。
カードの黒まると矛盾している…
「でもさ、このカードは黒まるで負けたことになってるよ?」
「ああ、僕、途中まで勝った方のカードを上にするって知らなかったから、それ多分テキトーだよ」
イチはたいして気する様子もなく答えた。
オイオイオイ…それじゃあ、棋力の認定もメチャクチャじゃないか…
そういえば、イチはTシャツも前後ろ逆に着るし、靴も左右逆だし、文字も鏡文字だったり、上下左右について無頓着だった…
この時は、イチが負けていたのに勝ちになってしまうということは起こらないので、単にイチがドジだったと思うだけで、このことについて深くは考えていなかった。
この日以降、年内に何度か将棋会館へ行き11級になった。しかし、2回目以降も時々カードの出し間違いがあったらしい。
私はふとあることに考えが至った。
将棋会館道場の控え室でのこと、親子が「あと一つで昇級だね、がんばってね!」みたいな会話をしていた。きっと、よくある光景だろう。
もし、イチがカードを出し間違えたことで、その子が昇級してしまったら?その子は喜べるだろうか?大事な瞬間を台無しにしてしまう可能性がある…
イチは将棋は指せるけど、人としてひとりで身の周りのことができない。その状態でこれ以上やらせるわけにはいかないと思った。
そのため、イチがTシャツを前後ろ逆に着なくなるまで、将棋会館道場へは行かないことにした。
幼稚園を卒園するまでにはまた行けるといいが…
つづく