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「恋愛もジェンダー問題も、待ちの姿勢ではなく前進する力を」ー MICOが語る、自分自身で物語を進める女の子のあり方

最近、自分の女の子らしさを必要以上に歪めていないかと考える。小さい頃は「女の子らしい」という言葉が苦手だった。女の子として生まれ、自分のことを女の子だと思っているけれど、”女の子の自分”は自分らしさには繋がらないと思っていたからだ。

今回話を聞いたのはセルフプロデュースでシンガーとして活躍するMICOさん。「女の子として生まれてきて、女の子ど真ん中なことも好きで、だけどそのことに違和感も抱く」と語る彼女は、ソロプロジェクトSHE IS SUMMERで女の子のリアルな気持ちを歌ってきた。既存の像とは異なる女の子像を発信してきたSHE IS SUMMERも2021年4月に完結。女の子のあり方は無限大なのだと教えてくれた彼女に、これからの女の子像はどうなっていくと考えているのか、話を聞いた。

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MICO
2013年、エレクトロポップユニット”ふぇのたす”のボーカルとしてデビュー。2015年に解散後、翌年2016年にリアルなガールズマインドを歌い、演じるソロプロジェクト”SHE IS SUMMER”を発足。2021年、”SHE IS SUMMER”プロジェクトを完結させ、現在、作詞提供や、多岐にわたるプロデュース活動などを行いながら、次のプロジェクトに向けて準備中。

ー Micoさんが音楽を始めた経緯から教えていただけますか?

Mico:子供の頃から周囲とのギャップを感じることが多くて。思春期に学校が嫌になって、高校にはほぼ通ってなかったんです。その時期は本当にすることがなくて、なんとなく歌詞を書いてみたのが音楽活動のきっかけ。昔から「作ることが好きだな」という感覚があったので、学校の音楽で習う知識レベルでしたが、歌詞を先に描いてみて、それにメロディもつけました。その後、当時読んでいた雑誌の裏に載っていた新人発掘オーディションに応募してみたんです。私は特別音楽に詳しいわけでもないし、歌が上手いわけでもない。何かで差をつけようと、部屋を自分なりに精一杯飾り付けてビデオテープを送りました。映像付きで音源を送ったのは私だけだったらしくて、「こいつ面白いかも」という感じでオーディションを通過することになり。それがシンガーソングライターとしての始まりでした。

ー シンガーソングライターとして、そこからの活動は?

Mico:2013年にバンドを結成して3年間活動したのちに解散し、2016年からSHE IS SUMMERというソロプロジェクトを始めました。映画『500日のサマー』のヒロインが持つ既存の女性像とは違う、破天荒でとても魅力的なキャラクターに憧れて、彼女のような女の子らしさを大切したいという思いからプロジェクト名を付けました。この5年間で「サマー」という女の子像をスタッフやクリエイターの仲間たちと一緒に作ってきたんですけど、自分がいろんな女の子になったような感覚があって。楽曲、ミュージックビデオごとにそのとき表現したいキャラクター像を演じてきましたが、それぞれがパズルみたいに自分の中にはまっていって。徐々にこれは「サマー」ではなくまぎれもない自分自身に出会えた気がして、SHE IS SUMMERを2021年4月で完結することを決断しました。

偶像になりきれないからこそ、
見つけたのは「コラージュ的な一貫性」

ー いろんな女の子を演じてきたなかで、特にご自身と重なるキャラクターはありましたか?

Mico:正直どれも自分だと感じるのでわからないんですよね。アーティストってイメージを貫くことを求められているような気がするけど、私は人間っぽさが強すぎて偶像になりきれないと思った。物心ついたときから子供服ブランドのモデルをしていて、ブランドごとに全然違う自分になることに違和感がなかったからかもしれない。本当の自分の姿でコミュニケーションをとりたいと思い、そちらに舵を切った感じです。今でもオリジナルな一貫性を見つけたいと思いつつ、それが洗練されたミニマルなスタイルではないことは明らか。いろんな要素を組み合わせながら形作られているのが私という人間だと思うので、この先もコラージュ的な一貫性になっていくんじゃないかと思います。

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ー 「コラージュ的な一貫性」ということですが、Micoさんのクリエーションの軸には「可愛らしさ」があるような印象を受けます。SHE IS SUMMERの活動初期と現在では可愛らしさの捉え方にどのような変化がありましたか?

Mico:当時も今も可愛いものはとっても好きなんですけど、昔はファッションを視覚的なものとしてしか捉えていなかった。女の子っぽさを全開にしていることで偏見を持たれた経験もあります。例えば、ガーリーな服を着てクラブにテクノを聴きに行ったりすると受け入れてもらえなかったり。私は真剣に音楽を聴きに来ているのに、それが伝わらないことがよくありました。SHE IS SUMMERに対しても「ガーリーな世界観を出しすぎると男性のファンがつかない」とか「可愛らしさはこのくらいの塩梅でいい」とか色々と話を聞いてきました。そういう経験を通して「ガーリーな服を着るってどんな風に見えるんだろう」って相対視することで、可愛らしさについての理解を少しずつ深めていったように思います。そして、自分が作り手になっていろいろな表現をしていくなかで、作られたものの背景や歴史、ストーリーを加味し始めると、ファッションは自分の分身を表現するためのものである、という捉え方に変わって。自分が何かを身にまとうこと自体に意味が生まれるという考え方へと変わっていきました。

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恋愛もジェンダー問題も
待ちの姿勢ではなく前進するメッセージを

ー ファッションの捉え方が変わったという話がありましたが、ご自身が作り手になったことで他にはどのような変化がありましたか?

Mico:難しい質問ですが…。私は昔、気が強いし、こだわりも強いし、自分の手が入っていないのが嫌なコントロールフリークだったんですよ。でも、それではスケールが大きくなっていかないことに気づいて。バンド時代に全部を手放す練習をしようと思ったんです。バンドはリーダーが作詞・作曲全部やっていて、私の声もビジュアルも私ではない誰かが調理する。調理されたものを演じることに徹していたのがバンド時代でした。そのとき人は人生の中で何回でも生まれ変われるんだって知って。その感覚を手に入れた後にSHE IS SUMMERを立ち上げたので、自分はさらに生まれ変われるしその変化を自分で作れるっていう感覚があった。その感覚の違いは大きかったと思います。


ただ、嘘をつきたくないっていう気持ちの強さだけはずっと変わらない。作り手になり、いま社会で起こっていることを知る作業の大切さを意識した時に、ファンの子たちにもそれを伝えたいと思いました。SHE IS SUMMERに出会ってくれた人たちの中には、ジェンダーの問題があるということを日常的にそこまで意識せずに生きていける人もいると思う。だけど、自分が直接的に困っていなくても、問題の存在を知るだけで実際に悩んでいる人たちがより生きやすい環境づくりに繋がる。今は全く違うところにいる女の子たちがそういう問題や情報に触れる機会が少しでもあることが大事。そう考えると、私にできるのはハブとなって情報を渡し合うことなのかなと感じています。

ー 感覚の変化とともに、製作にはどのような変化がありましたか?

Mico:作り方の幅が広がりました。まず、SHE IS SUMMERでガーリーな世界観を全開にするようになって、バンドの頃と比べると女の子のリスナーの応援が増えました。活動初期から待ちの姿勢ではない女の子のラブソングをたくさん歌ってたんですよ。SHE IS SUMMERの曲の中でも一番聴かれている曲は最初にリリースした『とびきりのおしゃれして別れ話を』なんです。恋愛においては女性が待たなきゃいけないとか、男性主導で進まなきゃいけないといった感覚を私は持っていなかった。だからこそ、友達から誠実ではない恋人との恋愛相談を聞くたびに「別れなよ」と辛辣なことを言っていたのですが、それが「代わりに言ってくれた気がしてすっきりした」って好評で。その体験をそのまま歌にしてみたら、「ずっとモヤモヤしていたのがこの曲を聞いて決心がつきました」とか「前を見れるようになりました」と女の子のリスナーがメッセージをくれるようになって。歌詞の内容はセンシティブで、カテゴライズできないすごく微妙な気持ち。曲自体は明るくてキャッチーなメロディで、音楽的な背景が特別強いわけではない。POPソングとしての良さを持って積極性のあるメッセージを求めて聴いてくれる女の子の方が多いのかなと感じました。一方で活動を続けていくなかで、音楽的な背景も含めた作品を作りたい思いがどんどん強くなっていきました。聴く音楽の幅が広がり、歌いたい内容に合わせて音を選ぶようになったことで、異なる層のリスナーも私の歌を聴いてくれるようになった気がします。


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女の子のあり方はもっとフラットに
自分自身で物語を進めて欲しい

ー 新しい女の子のあり方をラブソングという形で伝えているのが、Micoさんならではのメッセージの届け方ですね。

Mico:私、恋愛がものすごく好きなんですよ。自分の”物語”というものを進める力を持っている人の方が人生が豊かになるんじゃないかと考えるのですが、そのためには自分の人生自体に根拠もなく自信を持ったり、何かを信じるということをしていかなくちゃいけない。自分の人生でそれをできる人って意外と少ないけど、恋愛だとそれができる人が多い気がするんです。恋した相手と好きな映画が一緒なだけで「運命!」って思えたり、一つ一つの小さなことの特別さがどんどんドライブしていくあの感じって、恋愛のすごくいいところだと思う。私も恋愛で凹むことがあるけれど、周りの女の子の恋愛相談を聞きながら「そんなに消極的じゃなくてもいいよ」とも思う。好きになってしまったが最後、相手のすごく嫌なところを見たり自分のすごく嫌なところと向き合わざるをえないストーリーが展開したりするのが恋愛だけど、お互い傷つけ合うくらい深く関わることで、自分の勘違いや感情の欠落などが修復されていく。そういう素晴らしさがあると思うから、ラブソングで伝えてきました。SHE IS SUMMERは完結するけど、「みんながもっと前向きに向き合えるようになるといいな」っていうメッセージを込めて、待ちじゃなくて自分の物語として自分で前へ進めていくことをこれからも発信したいです。

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ー 最後に、既存の女の子像はこれからどうなっていくと思いますか?

Mico:私は女の子として生まれてきて、女の子ど真ん中なことも好きで、だけどそのことに違和感も抱くっていうちょっとヘンテコな立ち位置。だけど、感覚の中心として揺るぎないものはあって、どう生きてもそことは関わっていくだろうなと思っています。「女の子的」と言われたら実際そういうピースを持っているから否定はしないけど、だからといってそこに執着はないというか。女の子のあり方はもっと多様化していくと思うし、自分自身で物語を進める女の子が増えて欲しい。そうあって欲しいから、世の中の女の子を何かしらの形で応援し続けていけたらいいなと思います。


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「女の子のあり方はもっと多様化していくと思う」

誰よりも女の子らしさや可愛らしさについて考え抜き、SHE IS SUMMERの完結を発表したMicoさん。当時言語化できていなかったプロジェクトのコンセプトは「女の子!輝け!!」だったとブログで綴っていた。そして、昨年末にスタートしたYouTubeチャンネルでは「女の子を楽しむことも、忘れることも、批判も同調もせずに受け入れあえる、そんな社会になっていきますように」と祈りを込めたメッセージムービーを公開している。

Micoさんはたくさんの女の子が輝く背中を押した。そして、Micoさん自身も背中を押された女の子の一人だったのではないかと思う。小さい頃から好きだったというガーリーなものは、様々な人の意見や彼女自身の生まれ変わる変化を経て、彼女にしか語れないものになっている。軽やかに「女の子らしさ」を更新していく彼女を見ていると、自分の女の子らしさに少しだけ素直になれる気がした。これからのMicoさんに、目が離せない。

Writer : Maki Kinoshita
Editer:Yuri Abo
Photographer:Edo Oliver
Interviewer : Maki Kinoshita / Yuri Abo

REINGでは、自分自身と向き合いながら「自分らしい選択」を紡ぎ続けている人たちのインタビューを実施。今はまだ「普通」とされていない選択をしている人たちや、フォーカスされていない関係性を紡ぐ人たちのお話を通して、形やあるものにとらわれずに、自分らしさを見つけるヒントをお届けしています。

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