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何もしなくてもいい?反抗心とコンプレックスを解いたママの言葉|Beauty Deep Dive 〜第一章 美の哲学とは〜

モデル・俳優として活動する傍、REINGコミュニティと共にジェンダーやセクシュアリティのテーマについて発信をしてくれている甲斐まりか。今月からREINGのnoteで連載エッセイをスタートします。テーマは「美という価値観」について。人生の大半を海外で過ごしたのち、2017年から日本でモデル活動をスタートしたまりか。美容雑誌や大手化粧品ブランドのイメージモデルを務めて来た彼女ならではの視点で、美しさについて語ります。まりかと読者の皆さんとのジャーニーの始まりです。


旅の始まりに寄せて

私が「美」という価値観・感覚・意識と向き合い始めたのは、ここ最近のこと。なんたって、もともとモデルとしてキャリアを築くことになるなんて私自身が一番思ってもみなかったし、雑誌やCMでキメキメの私を観たら小中高のクラスメイトなんてびっくりするはず。性格はどちらかと言えば、シャイな方でスポットライトを浴びるなんてとんでもないと思っていた。

そんな私もモデルの仕事を始めて早三年がたち、四年目の今は自信を持って自分が何をしているか言える。でもそんなマインドになれたのは、自分のコンプレックスや自分がいる業界での美の描かれ方や価値観、そしてモデルという職業ととことん向き合ってきたからだ。

この連載は、これまで私が語ってきた旅のことでも、ファッションやメイクのことでもなく、私自身が自分と向き合い、美という定義のない永遠の課題を問いかけ、様々なテーマに寄り添う記録。感覚的には、ちょっとプライベートな日記や匿名で投稿するブログに近いようなものになる。

私がいつも人間関係や友達との付き合い方で大事にしていることは、相手にオープンになってもらうにはまず自分をオープンにすること。だからと言ってオープンになるには、人それぞれペースもあるだろうから強制はしないし、いずれお互い自然に寄り添えるようになっていく瞬間をいつも大事にしている。だから読んでる皆さまにとって、一緒に自分自身と少しでも向き合い、語り合い、一歩づつ自分のことをもっと大切に自信を持って好きになれるようなジャーニーになれば一番、という願いを込めて。

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〜第一章  美の哲学とは〜

仕事では最先端の美とトレンドの中にいて、どんな自分が今求められているのか、今はどのようなトレンドがあるのか、常に自分の容姿とコンディションの照らし合わせ。職業柄、こういう部分は見せること少ないけど、たまに自信が無くなったり自分のコンプレックスに囚われちゃう時、ふと思い出すのはママが私にいつもかけていた言葉ー「何もしなくてもいいのよ、そのままのまりかが一番なんだから」。ちょうど多感なティーンだった私も流行りに乗って髪型を変えてみたりメイクをし始めたり、ちょっと背伸びしたファッションしてみたり。そんな私を見るたびに、ママは決まってそう言っていた。

当時、雑誌っ子だった私には憧れのモデルさんがいて、ティーン誌やメディアで見るトップモデルの彼女が可愛くて、髪形やファッションをそのまんま真似したし、彼女みたいになりたかった。今思えばその行為は自分の容姿をありのまま受け入れることとは真逆で、違う誰かになることで社会に溶け込もうという行為になっていたのだけど、理想と憧れの前ではママの言う「何もしなくてもいい」なんて言葉に「そういうことじゃない!全然わかってない!」という反抗心をもたざるを得なかった。

今になってみれば、ママの言っていた「何もしなくていい」とは(当時は物理的な意味に囚われていたが)他人や社会が作り上げた美の価値観に合わせて、自分をそれと比べ変えてしまうことへのアラートを意味していたのだと分かる。そんな私だからこそ、この業界での役割は、キラキラしたイメージに憧れさせることよりも、女性として、一人の人間として、偽りのない私自身が信じる「美意識」を発信することだと思う。かつて憧れていたモデルさんと同じポジションに今は自分がいて、そんな経験があったからこそ私にはできること・伝えられることがあると思う。ママの言葉がなぜこんなにも今の私に響くのか、そしてこの仕事をする上で何度その考え方に救われたことか。今回の連載で見つめ直すきっかけになった。

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美とは本来多様性が込められた、個々が惹かれる感覚や意識であるはずなのに、社会によって形成された美の形に囚われてしまう矛盾。私たち一人一人が自分にとって何が美しいのかを定義し、それを他人と比べることなく自分に自信を持ち、お互いをcelebrate(祝福)できれば、その心がありふれた社会こそがハッピーで美しいものなのではないか。社会で描かれている美のコンセプトや価値観に対して素直に共感できなかったり、そこに自分が当てはまらないと思ったら、それはそれでいい。なんたって、個性があるのが当たり前で、自分なりの美意識を見つければいいからだ。

自分の個性を受け入れるためには、自分と向き合い、自分のことを知るというプロセスがある。それをこの連載を通して、一歩づつ私と歩んで欲しい。私からのちょっとした旅路のお誘いです。


Text:甲斐まりか / Marika Kai
タイと日本のルーツを持つファッションモデル。タイ、ドイツ、イギリスと、人生の大半を海外で過ごしたのち、2017年から日本でモデル活動をスタート。Voceなどの雑誌、dejavuや資生堂などのイメージモデルを務める。さまざまなカルチャーに触れながら育った生い立ちから、オープンマインドな心と独特の視点を持つ。旅行と芸術への関心が強い。
Instagram: @mari_ka95
Twitter: @mari_ka95

Edit:Yuri Abo | Illustration:Ada

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