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「いい面も悪い面も見ると、自分の答えを見つけられる」 ー シンガーソングライター・FiJA インタビュー

コロナの影響が世界的に広がり、「ニューノーマル」という言葉をよく目にするようになった。たしかに私たちの考え方、働き方、毎日の過ごし方は今までのものとは大きく変わった。でも多かれ少なかれ今までの社会で「普通」とされてきたものを黙認したことのある私は、目の前に広がる現状を「新しい普通」と呼ぶことができなかった。

Googleで「普通 意味」と打ち込んでみると、次のような定義が出てくる。

「いつ、どこにでもあるような、ありふれたものであること。他と特に異なる性質を持ってはいないさま。」

ありふれたものである「普通」には自分と他の誰かの共通性も内包されている。REINGでも「様々な人がいる”普通”」を当たり前にしようとしているが、そもそもどうやって私たちは新たな状況を「普通」と呼ぶようになるのだろう。

今回話を聞いたFiJAさんはフィリピンと日本にルーツを持つ、シンガーソングライターだ。いろんなタイプの人を交わらせるのが好きで、ミックスさせすぎた故にバンドを解散させてしまったこともあるらしい。固定観念ではなくそれぞれ人や物事とのコミュニケーションを大切にしてきた彼女の話は、私たちが新たな普通を考える上でのヒントを与えてくれた。

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フィージャ / FiJA
1996年・東京都生まれ。都内在住シンガーソングライター。アメリカ留学でのゴスペル聖歌隊経験から日本帰国後も Soul, Funk, R&B に入り込み、都内で様々なバンド、 イベント、セッション、バックコーラス等で活動中。
Instagram:@fijamusic

人と会うことは大事
でも同時にひとりでいることも大事

- コロナ禍でライブができないのって辛いですよね。どうやってエネルギーを発散させていたの?

FiJA : 全然できてない!この間2ヶ月ぶりくらいに生バンドに出て歌ったけど、もう楽しすぎて…。やっぱり生には変えられない。
とはいえ、自粛期間の中でも気づきがあった。人と会うことは大事。でも同時にひとりでいることも大事だなってこと。私友達と遊ぶのが大好きなんですよ。友達が暇だったらいつでもどこへでも行ってた。何をしても「誰かいればいいのになあ」って気持ちになるんですよね。コロナで人と会えなくなったからこそ、あのEP*を出せました。最初の曲はアコースティックの新曲で、全4曲合わせて1つの作品っていうコンセプト。誰かと一緒にいたい気持ちがテーマで、『Room for One More』って名前にしました。自粛期間にみんなも抱いたであろう「寂しい」って気持ちに寄り添うような生活感、ナチュラルな音を重要視しています。

*EP : シングルより長く、アルバムより短い収録作品。

- 曲づくりで大切にしていることは何ですか?

FiJA : 音楽の中で「セクシーさ」って超重要だと思ってて、それは相手や場所によってリズムや声の出し方が変わるところで感じる。私と同じように考える人は多いと思うけど、相手の気持ち、相手が気持ちいいポイント、どういう音が気持ちいいのかを考えながら歌ってる。
正直、自分でも音楽性が似てると思うアーティストはたくさんいます。なりたいアーティストの姿はいっぱいあるけど、正直自分がどれに当てはまるのかはまだわかってなくて。でもだからといって「やめるの?」っていうとそれも違う。音楽は私にとってうまく形にできない感情の表現方法だから、いろんなものをミックスさせて新しいものを作り出せたらいいなと思ってます。同じようなことをしているアーティストがいたとしても、「私」のことを好きになってくれる人は絶対にいると思うし、無駄なことは考えずに好きなことをやるようにしてるかな。

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人をミックスさせるのが大好き

- 「ミックス」の面白さはいつ頃から見出したんですか?

FiJA : 小さい頃から人をミックスさせるのが大好きなんですよ。数が多いわけじゃないけど超仲良い友達がいろんなクラスに1人はいて、みんなを実家に呼んで遊んだりしてました。でも、みんな私とは仲良いんだけど、お互いには友達じゃなくて。私が部屋から消えるとみんなが無言になることとかよくあった(笑)。親には「あのままにして大丈夫?」って怒られたりするんだけど、私は「みんな私と友達だし、仲良くなるっしょ」って感じで。

以前組んでたバンドもそれぞれ全然共通点のない7人を集めてつくりました。クラブで会った子、Tinderで見つけた子、高校の後輩、SNSで繋がってた人…年齢も国籍も全然違った。難しいのは、モラルやマナーの捉え方が人によって全然違ってたんですよね。例えば、遅刻を3~4時間してくるとか、連絡しないでその日の練習に来ないとか。普通に喧嘩ですね(笑)。バンドをやってた2~3年前は私も経験値が少なかったから、自分自身も勝手がわからなくて、気合いと根性でやってたけど…それでも何が何だかわからなくなってきて、「バンドとかもう全部やめる!」って感じで解散しました。私が集めたから私がバンドのリーダーだったんだけど、そこのコントロールが大変だったなあ。でもね、実験してみたかったんですよ。本当に共通性がないけど、「音楽やりたい」っていうひとつの思いで音楽をやったらどこまでやれんのかなって。

- 今はソロで活動してるけど、何か違いは感じる?

FiJA : 名義はソロだけど一緒に曲をつくるアーティストがたくさんいて、結局バンドみたい。ただ、いろんなアーティストとセッションをするようになって「東京にミュージシャンってこんなにいるんだな」って思いました。どんどん人間を知っていく中で相手のレベルとか人間力とか音楽業界がどんな社会なのかが見えてきた気がします。ジャムセッションの人、ポップのメインストリームの人、その中でもみんな違うから一概には言えないんだけど。でも言えるのは、自分がやりたいと思ってることをやれるのはハッピーだよなってこと。それが仕事だとしても。

私、周りから嫌がられてるアーティストとセッションをしたことがあるんですけど、その人に人前で恥をかかされたんですよ。その時は「じゃあもう歌わないっす」って怒って、みんなの前で歌うはずだったのに歌えなくなっちゃって。でも理由を考えたら、その人がひたすら音楽を好きすぎることがわかったんです。その人本当は「あなたは能力はあるんだから、失敗して、学んでみたらいいよ」ってことが言いたかったんだと思うんだけど、「それは違う」とか「間違ってる」って言い方が強調されてしまうから、みんなの受け取り方も変わっちゃう。悪いことを言われる人にはどこか理由があるし、必ずしもその人が悪いわけではない。バランスなのかな、面白い。

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- FiJAさんは「嫌い」って切り捨てるのではなくて、誰に対しても「個性」って形を見出そうとしてる感じがしますね。

FiJA : 家の環境が理由かもしれない。私の両親はブチギレて物に当たることが多くて、警察は来るし、家族内で戦争が起きてる感じだったんですよ。最初は「怖い」って気持ちしかなくて思考停止してたんですけど、徐々に「なんでそんなことするの?」って考えるようになって。家族の行動が過激すぎて理由を探さなければ生きていけなかった。

全ての物事に「どうして?」って疑問を持つ心ってマジで大事だと思ってます。それを持つだけで相手や起きてる物事の理解がもっと深まるし、いい面も悪い面も総合的に見れるようになる。全部自分の見方で物事の見え方って変わるじゃない?コロナで一回どん底に行った時にバズったり、いろんな人に声をかけてもらったりしたこともあって、何かがいい方向にいくほど物事って良く見えるんだなって改めて気付かされた。そうやって「あ、これなんだな」って自分の中で答えを見つけられる感じがします。人生絶対"Ups and downs"だから、全部意味があるって信じてます。


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「全ての物事に『どうして?』って疑問を持つ心ってマジで大事だと思う。」

彼女は息をするように色々なことに問いを投げる中で、ひとつひとつ彼女なりの正解を見つけていました。彼女が疑問とともに紡いできた繋がりを辿っていると、この一言はそれぞれ異なる存在が交わるための魔法の合言葉のように聞こえてきます。

きっと私が「ニューノーマル」という言葉に違和感を覚えたのは、私が触れてこなかった誰かの視点をも新しさのラベルを貼ることでわかった気になるように感じたから。本当は「どうして?」の数だけいいことも悪いことも、正解も間違いも、それぞれ違う愛し方や繋がり方があっていい。問いの答えを出すのは目の前の相手でも他の誰かでもなく、問いを投げたその人自身だ。だって疑問を持つその視点は問う人のものでしかないでしょ?

彼女はいろんなものを自分なりに受け止める力も、それらを掛け合わせる力も、わからないことに向き合うタフネスも兼ね備えていました。答えがわからない状態って苦しいけれど、問いを立て続けることで自分にとっての答えを導き出すことができる。それに向き合った分だけ私たちは胸を張って自分と誰かにとっての答えを「普通」だと言えるようになるのかもしれません。社会で共有されている「普通」に目を向けるのは大切なこと。でもそれ以上にひとりひとりの物差しの先に見える普通について考えることも必要ではないかと思うのです。


Writer : Maki Kinoshita
Editer:Yuri Abo
Interviewer : Edo Oliver / Maki Kinoshita

REINGでは、自分自身と向き合いながら「自分らしい選択」を紡ぎ続けている人たちのインタビューを実施。今はまだ「普通」とされていない選択をしている人たちや、フォーカスされていない関係性を紡ぐ人たちのお話を通して、形やあるものにとらわれずに、自分らしさを見つけるヒントをお届けしています。

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