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「オープンにしたって、楽しく生きていける。」周囲を幸せな空気に巻き込んだ、二人のありのままの姿。<大方なつみ/土屋あさみ インタビュー>#13


「一生結婚なんてしないんだろうな、
 と思っていたけどお互いに出会えて考え方が変わった。」


こう口を揃えて話すのは、いつ会っても仲が良く笑顔でいっぱいの2人、大方なつみさんと、土屋あさみさん。彼女たちは2016年、早稲田大学の学園祭にて公開結婚式を執り行ったカップル。

Re.ingプロジェクトのパートナーとしても、色々なアドバイスや意見をくれる二人に、今日は2人の結婚についてや、家族との関係性についてお聞きしました!

5年の月日をかけ、
少しずつ理解してもらえた二人の関係


ー二人は今、結婚していると思うのですが、出会いはどんな感じだったのでしょう。

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(左)大方なつみさん/(右)土屋朝美さん

なつみ「2011年くらいだったかな?もともとは大勢でのホームパーティーのような場で会ったのですが、その後友達4人で食事に行った時にとても仲良くなって。見た目もタイプだったけど、一緒にいて落ち着く人だなと感じてました。」

朝美「私も、最初から可愛いなと思ってて。でも私より9歳年下だったのと、実はその時はお互いにパートナーがいたので、すぐに付き合うっていう感じにはならなくて。付き合い始めるまでには、結構色々とありました。」


ー 大恋愛な感じだったんですね!どちらにもパートナーがいる状態で、お互いにっていうことは、すごく惹かれあったのですね。

朝美「そうですね、二人ともすごく相性がいいなというのは思っていたんだと思います。ただ、前にお付き合いしていた子とは既に付き合って2年経ってて、すごく落ち着いた関係で。なつみは、正直その頃若かったし、どちらかというと刺激的な恋愛という感じだったので、躊躇しました。だけど、一緒にいたいという気持ちは偽れなくて。」

なつみ「私は、初めの方からいいなと思っていたので一緒にいる時間がすごく楽しみでした。頻繁に会ったりはしてたのですが、きちんとけじめをつけて付き合おうという話になって。それから半年後に、同棲を始めました。」


ー 同棲するタイミングで、二人ともカミングアウトしてたんですか?

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朝美「私はしてなかったですね。実は、母が26歳の時に亡くなってしまって、最後まで言えなかったんです。父には、女の子とルームシェアをしているっていう話はしてたのですが、その時点ではカミングアウトはしていませんでした。一緒に旅行に連れていってくれたりしていたので、気づいているのかな?と思ってたんですけど、後から聞いたら全然気づいてなかったようでした。」

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なつみ「私は、母には19歳くらいから何度かカミングアウトを繰り返してて。初め、私が女の子が好きなんだよねっていう話をしたら『何を言っているの?冗談はやめてよ!』みたいな反応で、それ以降その話題はタブーになってしまったんです。それから何となくその話は避けるようになり、その後同棲を始めたっていう経緯でした。」

朝美「でも、別に関係を隠すことはしていなくて。なつみの実家で一緒にいる時にお母さんが帰ってきて、すごく気まずい雰囲気になっちゃったことがあって。」

なつみ「そうそう。それで『朝美とは真剣に付き合っているし、お母さんにも知ってほしい』って伝えたんですけど、『何おかしなこと言ってんの!火遊び程度のことでしょ!』って言われてしまって。すごく悲しかったですね。大好きなお母さんに、おかしいって言われるのはすごく苦しかった。その後も、パートナーっていうよりも “ 同居人の朝美ちゃん ”、としか言ってくれませんでした。」


ー でも、今ではお母さんもすごく理解してくださっているんですよね。何か、きっかけとかあったのでしょうか。

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なつみ「私自身、自分の大切な娘が、レズビアンだと知って、初めは認めたくないっていう気持ちもわかるんですよね。だけど、私は私だから変えられない。だから『女の子を好きっていう気持ちを、否定されちゃうとなつみ自身の存在を否定されているような気持ちになるよ』って伝えたんです。母が、私のことをすごく大事に思ってくれているからこそ、そのことを伝えたかった。朝美と二人でいること自体には、勿論否定的なことを言うわけではなかったので、私たちのありのままの姿を見てなのか、少しずつ母も受け入れようとしてくれるようになりました。」

朝美「あとは、ラジオを始めたことも大きかったよね。」

なつみ「そうそう。今、パーソナリティを務めているShibuya Cross-FMのラジオ番組、L-Channelのお話を頂いた時、母に相談したんです。『今後いろんな人にLGBTのことを理解してもらうために、ラジオのお仕事を受けたい。私が、レズビアンだってことがオープンになるけどいいかな?』って。そしたら、母は『なつみがやりたいなら、私はいいけど・・・』って。その頃から、何か吹っ切れたのか、周囲に私のことを進んで話し始めて。この子、レズビアンなんだけどね、って。嬉しかったけど、ビックリしました(笑)。今では、1番の理解者です。」

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結婚式は、今でも二人をつなぐ
大切な思い出


ー 少しずつ、積み重ねてきた「理解してほしい」っていう気持ちと、二人の幸せな様子がきっとお母さんに伝わったんですよね。恋人関係から、結婚ってなった時に、プロポーズとかはあったんですか?

朝美「私たちには、なかったんです。ちょっと経験してみたかったけどな(笑)。でも、一緒に住むことになった時点から、自然と二人で生きていくんだっていう気持ちはありましたね。」

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なつみ「元々、添い遂げるような予感はしてたんですけど、一緒に住むと将来の話をすることが多くなって。例えばお金のこととか、子供のこととか。そんなことを話しているうちに結婚するんだな、って思うようになっていました。」


ー 早稲田の学園祭で、結婚式を挙げられましたよね。公開で結婚式をするって、勇気があることなのかなって。

なつみ「そうですね。最初、早稲田のインカレサークルの方から連絡をもらって誰か周りにいませんか?って言われたんです。でもスケジュールがあまりに直近で。そう考えた時に、もう私たちでやってしまおうよって。学生さんたちに、少しでも何か感じてもらえたらっていう気持ちがありました。」

朝美「そうですね。いい機会だなと思って。いずれは結婚式をやりたいと思っていたけど、せっかくだからやっちゃえ!と。それで、家族や友達も呼んで、最初は学園祭で。そのあと、1.5次会をしました。」

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//1.5次回の様子

ー 最近「結婚式はしない」っていう人も多いと思うんですけど、やってみて、何か気持ちの変化とかってありましたか?

朝美「覚悟ができました。皆に祝ってもらって、なつみとずっと一緒に生きていくんだっていう気持ちが、より固まったというか。あとは、お父さんにカミングアウトするきっかけになりましたね。実はなかなか、言うきっかけがなくて。最初は妹にカミングアウトしてて、彼女はすごく理解をしてくれていたんですけど、お父さんには言えていなかったので。でもびっくりするくらい自然に受け入れてくれました。それは、嬉しかったです。」

なつみ「朝美は、何度も結婚式の時のDVD見返すんですよ!(笑)。初めて家にきた友達には必ず見せる。」

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朝美「酔うと絶対に見たくなるよね。そして、誰に見せたかはもう覚えてないから、『この前見たよ!』って言われたり(笑)。」

ー 楽しい思い出って、二人のお守りみたいになるからいいですね!

なつみ「そうなんですよ!喧嘩した後に見たりするのは、すごくいいですね。大切で、幸せな思い出になりました。あと、正式に結婚ってなった時にお母さんが、いろんな人に『なつみが今度、女の子と結婚することになって』って話すようになったんです。その時、親戚のおばさんから『あら、私の周りにもそういう子がいるわよ』って言われたらしくって。案外普通に受け入れてもらえるものなんだなって思いました。自分自身の方に、受け入れてもらえないだろうな、って勝手に決めつけてたり、偏見があったのかもしれないなって。

朝美「最近、実家帰ると、お母さんは娘二人みたいな感じで受け入れてくれるよね。酔っ払って帰ると、こらー!って怒られたりとか。(笑)」

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LGBT支援への機運は高まるものの、
本質的な理解や制度改善には課題がある


ー 今、実際のところ日本では同性同士の婚姻関係は認められていないですよね。結婚という制度が使えないことで、現状困るなと思っていることってありますか?

朝美1番心配なのは、病院によって色々と理解の幅が違うことですね。大切な人が、1番大変な時に入れてもらえないっていうことがあるから。前はお家を借りるのも大変だったけど、その辺は少しずつ変わって来てます。物件によっては、今でも大家さんがNGというケースもありますが。ウェディングも保険も、ここ数年で理解度がすごく大きく変わって来た流れは感じます。」

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なつみ子供を産んだ時に、親として認められないのが心配です。物理的には、どちらかは血が繋がってないことになるから、戸籍で親って認められないと、それこそ子供が病気や怪我をした時、何もできない可能性があるんだなって。別の問題でいうと、同性のカップルは子供を望んでいるカップルも多いんですけど、少子化に繋がるって言う声があったりとか。」

ー 同性婚ができないからって、異性と結婚する理由になるわけがないのに・・・。

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なつみ「そうなんですよ!以前、あるTV番組で取材を受けた時『産んだ子供がレズビアンだったり、ゲイだったらどうしますか?』って聞かれたことがあって。びっくりしてしまって、『その子の意思を尊重します』としか言いようがなかったんですけど、まだまだ本当に理解されるのは難しいんだなって。国の制度って、人を守ってくれるものですよね。使いたくない人は使わなければ、いい話。でも誰かにとって、幸せになれるきっかけができるなら、法律として認めて欲しいなって思います。」


セクシュアリティに関係なく
幸せを決めるのは自分

ー カミングアウトと言っても、周囲の人にだけ伝えることと、メディアに出たりSNSで公表したりすることには大きな差があるように思います。二人は積極的に、発信をしてますよね。今の日本の社会では「勇気があるな」と思ったのですが、何か思いがあるのでしょうか。

なつみ「私にできることがあるなら、ちょっとでも+1の力にはなりたいなって思っているんです。背伸びをしたり、今までLGBTへの理解を切り拓いてこられた活動家のような方々みたいにはできなくても、今私ができることをやろうって。等身大の姿を見せることで、こんな感じでも、楽しく生きているんだよっていうことを伝えたいんですよね。“ セクシュアリティ=幸せの基準 ”って考えちゃう人っているんですよ。そうなると社会のせいにしたりしちゃうけど、何が幸せかって、本当は自分が決めることなんだと思うんです。セクシュアリティが理解されたところで、幸せだって思えない人だっていますよね。でも、私たちは、幸せに生きてるし!

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朝美「周りにまだ言えない、若い子もたくさんいると思うんです。私自身は男性と付き合ったり、自分を偽って、自分でもわけわかんなくなった時期があって。あと友達は恋バナとか話してくれているのに、自分は嘘をついているんだなって悩んだ時期もあったりして。もうめんどくさくて、ある日突然どうでもいいや!ってなったタイミングがあったんです。明るく、バカやりながらも、私たちらしく生きていくことはできる。だから、オープンにすることで自分たちらしくいたいし、こんな人たちもいるんだって知ってもらえて、少しでも何かのきっかけになったらなと思います。」

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ー お話してていつも、二人の姿を見て幸せな空気にみんなが巻き込まれているんじゃないかなって感じるんですよね。家族や周囲の理解を得ることも、色んな葛藤を経てのことだと思うのですが。

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//フォトウェディング

なつみ「そうだと嬉しいですね。周囲にカミングアウトしてから気づいたことは、人って思った以上に理解してくれるし、あたたかいなっていうことです。きっとこの人はわかってくれないだろうなって思う人もいたけど、そうじゃない人もいました。逆に、自分の物差しで相手を測ってしまっていたなって。」

朝美「最初は、相手のことを疑ってしまうこともありますね。ドキドキする。私は友達が最初でしたが一人ずつへの積み重ねがあって、安心感ができてから、オープンに言える様になりました。今は、むしろそれぞれの反応が面白いなって感じたりもします。」

なつみ「たまに面白い人いるよね!興味津々というか。まさに先週初めてあった子は、私たちのようなレズビアンのカップルに会ったのが初めてだったらしくって。『そんなことも聞く?』って思ったけど、全然嫌な気持ちではなかったです。知りたいって思ってくれているってことだから。」


ー 二人だからこそ、思い切って聞けるのかなと。きっとこれまでに人との人間関係を築くのに難しいハードルがあったからこそ、誰かと理解し合おう、お互いの違いを認めようよ、っていう気持ちがすごく大きい。二人の幸せな姿が、これからも周りの人達をHAPPYに繋げていくんだろうなって思います!

Interview&Writing
:Aska Otani @https://twitter.com/aska28d

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