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台風の夜に

9 台風の夜に

台風が来るから今日の塾はお休みになります。
塾に入ってまもなく先生から聞かされた。


たしか秋頃。
外は暗くなったばかりの19:00頃だったと思う。
家から3駅先にあるフランチャイズではない、地元の比較的大きな塾。


何人かの友人が通っていたから
自分も行きたくなって、
親に頼んで行かせてもらった。


駅のホームで電車が来るのを待つ。
1つ前の駅で乗った友達と合流する。


並んでイスに座り、話す。
何を話したかなんて覚えていない。
けど、楽しくたくさんいろんな話をした。


自分以外の友達は他の習い事やボーイスカウトとかしていて、活動的だった。
学校でもその話になると、自分はついていけなくて、辛かった。


だから同じ塾に行けるのはうれしかった。
友達と同じ時間を過ごすのが楽しみだった。
一緒に電車に乗り、同じ事をしたいという想いが叶った。


「歩いて帰ろっか?」「いいね~。みんなで歩こう!」
雨は全く降りそうにない。
時間もある。
台風で塾も休み。


塾に1台しかない公衆電話の前には長い列ができていた。
たぶんみんな親に迎えを頼む電話をしているのだと思う。
僕らは最初から並ぶ気はなかった。


道順は難しくない。
親と車で何度も通っている道の脇を歩くだけ。
違うのは景色が超スローモーションで動いている事だけだった。


僕らはたっぷり時間をかけて、街灯をなんどもくぐった。


腕時計なんてしていないし、
そもそも何時間かかったなんで気にするつもりもなかった。


話したり、
黙ったり、
笑ったり、
走ったり、
訳の分からない時間は
あっという間に終わった。


僕にとっては、
友達と特別な時間を過ごす事ができた

最高に楽しい時間だった。


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