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みなさまのたなごころ撰集

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これは私だけの、と云いながら、その宝箱とやらをどうしても人の目前でぱっと開けて見せたくなるというのは、どうやら生来人間に根を張っている欲求らしい。たなごころ撰集だなんて、それっぽ…
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2022年5月の記事一覧

小説『安楽死装置に並んだけれども一向に列が進まない』

小説『安楽死装置に並んだけれども一向に列が進まない』

 安楽死装置を無料で体験できると聞いて行くことにした。
 どうせもうこの世に未練はないのだ。自分が死ぬことで離れて暮らしている親にも保険金が入るだろう。こんなことで保険金をもらったって嬉しくはないだろうけれども、何はなくとも先立つ物は大切なのだ。
 会場に着いた。すでにものすごい行列だった。こんなにたくさんの人間が死のうとしているのかと思うとうんざりする。わたしばかりが死にたいのだと思っていたのに

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