11)夫に言われて仕事を辞めたけれど、やっぱり私には専業主婦は無理!って思ったらどうしますか?
夫の浮気映像を見てしまい、一時的に精神が病んでしまったレイナだったが、そのあとは、夫への愛情を武器に、平静を装って、毎日を過ごしていた。
とはいえ、結婚するまでは、バリバリ働くキャリアウーマンだったレイナは、毎日を自宅で大人しく過ごすということが、かなり苦痛だった。
独身時代、毎日が激務で、ほぼ毎晩、終電で帰宅する日々を送っていたが、レイナは当時の仕事にやりがいを感じていたし、苦痛だと感じたことは一度もなかった。「仕事が辛い」とか「仕事を辞めたい」というような愚痴を言うこともなく、頑張ったら、頑張っただけ、きちんと評価してくれる、その会社が大好きだったし、ずっと働いていきたいと思っていた。
当時は、まだ20代半ばだったが、レイナは1000万以上の年収があったし、貯金もそれなりにあった。
だから、夫と知り合って、結婚するときも「玉の輿婚」だとは、微塵も感じていなかったが、いざ結婚、となった時に、夫の仕事の話や、家業の話を聞いたら、実は夫は経営者一族の長なんだと言うことがわかり、心外ながらも、周りからは「玉の輿婚」などと言われる様になった。
レイナはお金に困っていなかったし、これから先も、共働きで生活していけると思っていたので、まさか、夫から「結婚したら仕事を辞めてくれ」と言われるとは思っておらず、言われた時は、当然ながら、即答することはできなかった。
その際、レイナは夫に対して「私は専業主婦はできないよ、仕事してないと死んじゃうもん」と伝えていたが、それに対して、夫は「大丈夫。レイナには親父の会社を手伝ってもらうつもりだから」と言われたので、今の会社を辞めても、仕事を続けることができるのなら…と、大好きだった会社を辞めることに同意したのだった。
さすがに、前職を辞めてすぐに、夫の父親の経営する会社に入る、と言うわけではなかったらしく「1〜2ヶ月休んだら?」という夫の提案に従い、レイナは前職退職後、しばらくは自宅でゆっくりと羽根を伸ばすことにしていた。(その間に、例の映像事件が勃発するのだが、この記事内ではそれは割愛します)
ある日、夫から「ちょっとだけ仕事を手伝ってほしい」と言われたレイナは、喜んで会社に出向き、簡単な顧客データの入力業務を頼まれた。ブラインドタッチが当たり前だったレイナにとって、その仕事は、簡単で単純な作業だった。
夫からは、「2週間で仕上げてくれたらいいから」と言われていたが、およそ5000件の顧客データの入力に、そんな日数を費やすわけもなく、レイナは、その与えられた仕事を1日で終わらせてしまった。
作業をしている間、レイナは社内を見回し、どんな社員の方がいて、どんな仕事をしているのか、観察をしていたが、大企業で勤めていたレイナにとって、時間軸の違いや、スピード感の違いを目の当たりにしてしまい、自宅に戻ってきた夫から、会社の感想を聞かれた時に、正直に答えてしまった。
どうやらそれは、夫にとっては、痛いところを突かれた回答だったらしく、レイナの感想や、意見は、的を得ていたため、夫は難しい顔をした後、レイナが予想だにしなかった言葉を発した。
「やっぱりレイナは、うちの会社には入れることはできないな…」
「え?どういうこと?」
「やっぱりさ、レイナは大企業のトップを走ってきた人だから、うちみたいな中小企業の中に置くと、今いる女子社員との間に、衝突が生まれると思うんだよね」
「え、私、意見を求められたから言っただけで、それを直接、他の社員さんの前で言うつもりなんてないよ!」
「だろうな。お前は絶対に言わないだろうけど、それでも、俺が嫌なんだよ」
「え…、話が違うじゃん…」
「お前は何も悪く無いけど、レイナを入れると、うちの女子社員を3人辞めさせないといけないだろうからね」
恐らく夫は、自分の会社を守ろうとしたのだろう。
というより、レイナに自分の会社を貶されたと思ったのかもしれない。
全く、そんなつもりで伝えたわけではなかったのだが、恐らく、レイナの口から出てくる言葉を、事前に予想していたのだろう。
レイナが前職でトップを走っていたのは事実だった。
営業マンが1000人以上いるような企業で、常にトップを走り続け、このタイミングで退職するなんて!と、上層部にも散々引き止められたが、あくまでも寿退職という形をとったため、このタイミングを逃すと、いつ辞められるかわからない状態だったのも事実だった。
レイナが、当時の仕事を頑張っていたのを知っていたはずの夫が、レイナに仕事を辞めさせて、さらに予定していた、夫の父親の会社への入社の予定も、白紙にしようとしていた。
当時は、渋々その状況を受け入れたレイナだったが、今思えば、夫は最初から、レイナを会社に入れるつもりなどなかったんだろうと思う。
きっと、外で遅くまで仕事を頑張っている妻より、家で、家事をしっかりこなし、夫の帰りを静かに待つ妻であって欲しかったんだろう。
とはいえ、レイナがそういうタイプではないのは、当初から夫だって、わかっていたはず。
にも関わらず、夫がレイナを家に閉じ込めた行為は、後々の夫婦関係にも影響を及ぼすことになるとは、その時のレイナ夫婦は気付くことはできなかった。
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