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平成を去った一人の狂った天才の話

そろそろ前を向かなければならないと思っている。

私とは一切関係のない、亡くなった当時存在すら知らなかった人間にここまで引きずられることがあるなんて思いもしなかった。出会ったこともないのに、その死に涙することがあるなんて予想もしていなかった。亡くなってから存在を知ったのだから、もう二度とその人から新しい何かが生み出されることはないのだという現実を心のどこかで未だ受け入れられていない自分が恐ろしい。勿論、遠い存在だからこそ、考え続けることができているのだと思う。そして、私は彼が波にのまれていく姿を見たわけでもない。実感がないのも当然だ。

天才、という陳腐かつ特別な言葉で彼を表していいのかもわからないが、「彼は天才だった」と彼と関わったほとんどの人間が口にしているのだからそこは敢えて倣おう。彼は天才だった、と。

あまりにもこんな趣味の話題ばかり話していたらいい加減「不快だ」と言われそうなものだが(現にリアルでは一回言われたし)、ここは私のnoteで、私の文章の世界で、フォロワーもあまりいないので許してほしい。あと、読む人はここからURLの嵐なので押すも押さないも自由である。一応、押さなくてもわかるように話していくよう気を付けたい。

皆彼を天才だった、というわけだが、私はあまり彼をそう呼びたくはない。「彼はこういう点で優れていたのだ」という形で語っていきたいと思う。ちなみに、私にとって彼は推しではないし、大好きだというわけでも、彼に対して愛が溢れているわけでもない。そんな私にとっても彼は強い印象を残し、魅力あふれる人間に映っていた。ただそれだけの話だ。

ここからは彼の魅力について語っていきたいと思う。

①単純な能力値の高さ

本当に能力値が高い。IQは200を超えているし、体力も運動能力も高く、大きくてくだらない企画をたくさん出し、それでいて編集能力も高く、センスも抜群。最初投稿を始めた当初は「カミ」とグループのメンバーから呼ばれていたくらいには、能力値がえぐい。

②時にとんでもなくバカなところ

そんな彼は、どうしたらいいのかわからないくらいバカな行動をするときがある。突然とんでもないデカいジャングルジムや浴槽を買ってきたり、好きなディズニーキャラクターを聞かれて「しまじろう」とものすごいニヤニヤ顔で答えてみたり、ありえないくらいバカな行動で全員の予想を超えてくるのだ。また、彼はあまりいじられないキャラではあるのだが、唯一いじられるポイントが「多重人格疑惑」というもので、話している最中や酔っぱらっている時にとんでも行動をしだすので、結構面白がられていた。その羞恥心をどこかに置いて来てしまったような行動も、彼の魅力の一つだ。と同時に、彼は狂人化することはあっても絶対に迷惑行為や犯罪まがいの一線は超えない。そこが何よりも「変わり者になりたくて迷惑行為をする多くのバカ」との差なのかもしれない。

③空気を一瞬にして掌握する力

彼を知る人ならなんとなくわかるかもしれない。この能力は非常に紙一重だった。彼は本当にあまりにもあっさりと空気を掌握するので、「彼が笑ったことが全員にとって面白いこと」「彼が『あー…』という反応をしたときは、なんとなく言われた側はがっかりすること」がよくあったし、生放送でも彼がぴりつくと空気が凍ることがあって、私は生で見ていないはずなのに腹をきりきりさせたものである。その逆に、他の三人がどうもぴりついた雰囲気になっていた時に、彼がひょっこり顔を出して空気が総入れ替えされたこともあった。彼は結構ゆるっとした何も考えていなさそうな喋り方をするのだが、その話し方にも魅力が詰まっているのかもしれない。彼は本当に、あらゆる動画において、空気を掌握していた。話の流れ、オチまでの流れ、一瞬のうちに彼が風向きを変え、方向を決め、まるで自然な流れかのように、予め決められていた総意かのように全員がそこに従っていた。私は彼が政治家じゃなくて本当に良かったと思っている。彼が話すこと、おそらく全部もっともらしく聞こえて日本人全員流されて独裁政治になりそうだから。逆に言うと、それくらいのカリスマ性を彼は持っていた。

④人から愛される力

彼の人から愛される力は本当に異常だったんじゃないかと勝手に思っている。ファンの中には盲目的に彼を愛する人が、他のメンバーと比べ圧倒的多数いて(彼らはもはや信者と呼ばれていたので良いものだということはできないが)、彼らは自分の愛する彼が攻撃を受けようものならものすごい勢いで庇う人間たちだった。

もうちょっと素敵な例をあげるなら、彼はすごく生意気な後輩で、

この一連の会話を見てもらえればわかるくらいには、クソ生意気で、先輩に平気でタメ口を使うやつなのだが、とんでもなく愛されている。彼が深夜に「お願いしますよ~〇〇さんにしか頼めないんですよ…」と言って呼べば、先輩は「お~エイジ何だよ~、わかったよ今すぐ準備して行くよ~」と二つ返事で嬉しそうに来てくれる。

サムネださいな。

とにかく、彼は愛される才能を持っていた。と同時に、愛する才能もすごかった。

⑤人を愛する力

人、特にメンバーに対する愛は、彼が一番強いものを持っていたと私は感じている。多くの動画で、彼はメンバーの些細な変化に即座に気づき、指摘し、支えてきた。

こんな真面目な語り口でネタ動画のURL貼ると変な気分になるな。

例えばこの動画では、彼は本当に瞬時にメンバーの変化に気づく。他二人のメンバーは言われてもまだ気づけないような小さな変化に気づく(ボーナストラック参照)。どれほどの愛を持ってメンバーのことを見つめているか、その裏側を想像するとなんとも言えない気分になる。おそらくそのことに、メンバーはあまり気づいていなかったんじゃなかろうか。どれほどの愛のこもった視線が、自分たちのことを見つめていたかなんて。海鮮が苦手なのに、そのことをスタッフにすら気づかれずに、隠すのが上手だった彼。なんたる魅力だろう。

こうやって書くと改めてわかる。全ての特徴がまるで鮮血のように鮮やかで、強すぎる。勢いが強すぎるのだ。彼の生き方は80%が刺激で構成されていたと言っても過言ではないくらいだし、彼の選んだ生き方自体が、彼をあまりにも最大限に輝かせすぎていた気がする。向いている職業で、自分の最高頂の才能を余すところなくぶつけて、他の人が進む何倍もの速さで走り抜けていったのだ。

このグループは歌も何曲か出していて、基本的に歌詞は自分で書いているようなのだが、「妄想」という曲の歌詞の彼のパートには「小指一つで動かす世界 なんかこの世界寂しいじゃん」という文字が躍る。彼は三人の大好きで大事な仲間に囲まれて、本当に幸せだったと思うし、彼もそのようなことは述べている。それでも、彼自身はどこか孤独だったのではないだろうか。だって彼の進んでいるスピードは他の三人とは全く違ったのだから。

マジで写真どうにかしろよって感じなのだが、これは彼が亡くなる三日前のツイートだ。下種の勘繰りと言われたらそれまでだが、正直感じるものがないと言ったらうそになる。勿論、彼が自分の死を予期していたとかそういうきな臭いことを言いたいわけではない。ただ、他にも「今日を生きれなかった奴の分まで強く生きろ」という名言を選び取ったりとか、生きた証を残すかのように言葉を残していったのが、すごく彼という人間らしい姿だなと思わされざるを得なかったというだけだ。

才能のある人間は神がほしがる、とはよく言われる言葉だが、才能の炎を燃やし尽くしていったんだという言葉の方がよく似合う人間だったんじゃないかな、なんて勝手に思ったりしている。髪の色も赤だしね。

髪の赤い彼を、三人がどれほど愛していたのか、髪の赤い彼が、どれほど三人を愛していたのか。このたった1時間ちょっとの優しいドキュメンタリーは、そこに焦点を当てて、三人の立ち直りと、その奥にうっすらとまだ見える絶望と、溢れることが留まらない彼へのどうしようもない気持ちを描いている。この写真、カメラ持っているのが赤髪の彼なんだって。本当にずるいよね、このグループは。

最後に、彼の幼馴染の日本語が弱い男の子のブログのURLを置いておこう。

『それじゃあまたね、いつも全然寝ないんだからちゃんと寝るんだよ。』

彼が末尾に記したこの一節が、本当に、本当に大好きだ。君は本当に、ずっと彼の近くで20年近くを過ごしてきたんだよね。こんなたった一文にこれだけの愛を込められるくらいの付き合いをしてきたんだよね。そう、思わせられる。その前のちょっとしたユーモアも、悲痛な叫びも、全部この一言に溢れる愛が優しく包み込んでいる気がする。

きっと彼を知ってからたった一か月しか経ってないのにこんなこと言っている私を知ったら、彼は照れ笑いを浮かべてほうれいせんくっきりさせながら「ほらー、お前らが俺の話したせいでまたこういう感じのファンが増えちゃったじゃんかよ」とか言うんじゃないかな。ニヤニヤしながらこのポエマー気取りファンを笑い飛ばしてくれ。

…一個だけえいちゃんの苦手なこと思い出したわ。歌と大喜利、だよね。(各自ツッコミ推奨)



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