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怖がりな私の乳がん生きのばし日記 ⑬抗がん剤とオンコタイプDXと私

2021年6月22日(続き)

抗がん剤か……と、ぐるぐる考えていると、先生が「オンコタイプDX」と紙に書いて、
「オンコタイプDXをすると、抗がん剤の効果がどれくらいあるかわかるけど」と続けた。

オンコタイプDXとは、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、リンパ転移なし(あるいはリンパ転移3個まで)の乳がん患者に適用される検査であり、手術の標本から21個の遺伝子を調べることによって、今後の再発の可能性をはじき出す。

再発の可能性が低ければ、ホルモン治療だけで問題なし
再発の可能性が高ければ、ホルモン治療に化学療法(抗がん剤)を加えた方
がいい、と判断される。

遺伝子検査なので、従来の病理結果に基づいた予測よりも精度が高く、ホルモン受容体陽性の乳がん患者にとって、予後を考えるうえで力強いツールである。
なのに、なぜこの検査を全員が受けないのかというと……アメリカの検査会社に依頼するため高額であり、日本では保険適用されていないので自費診療となって、費用が40万以上かかるというのがネックになっている。

つまり、ここで選択肢が3つ示された。

①このまま抗がん剤を受ける
②オンコタイプDXの結果を見てから、抗がん剤を検討する
③自分の意志で抗がん剤を拒否し、ホルモン療法だけで治療する

手術のときの「温存 or 全摘」の二択でもさんざん迷ったというのに……。
しかし、なんとしても再発・転移は避けたいので、③を選ぶのは怖い。
となると、①か②となる。もちろん抗がん剤には不安はある。でも40万は、私にとっては高額だ。いったいどうすればいいのか?

「抗がん剤をするなら、どういう治療になりますか?」と、先生に聞くと、
「TC療法」と、また紙に書いて説明してくれた。
TC療法ではタキソテールとエンドキサンの薬剤を、3週間ごとに4回点滴するらしい。さらに薬剤とあわせて、ジーラスタという白血球を増やす注射を打つ。4回か……それなら耐えられるかもしれない。けれど……
結局その場では決められず、いったん持ち帰って検討することにした。

オンコタイプDXを受けるべきか? 
オンコタイプDXを受けると、再発の可能性がスコア(数値)で示される。
15より下ならば、再発の可能性は低いとみなされ、25より上ならば、再発の可能性が高いため、抗がん剤が推奨される。

しかし、15から25のあいだはグレーゾーンとなり、抗がん剤をするかどうかは、自分で決めなければならない。閉経前ならグレーゾーンでも抗がん剤をした方がいいという見解もあれば、卵巣の働きを抑えるだけでじゅうぶんだという考えもある。つまり、40万払っても同じように迷うことになる。

病理検査の結果とオンコタイプDXによる再発スコアは、必ずしもパラレルではないが(そうでなければオンコタイプDXをする意味がない)、ある程度の相関関係はある。
となると、私の病理結果からは、迷う必要のない低スコアになる可能性は少ないのではないだろうか? グレーゾーンになった場合、抗がん剤しなくても大丈夫と言い切れる自信はない。

とにかく、なんとしても再発・転移は避けたい。
となると、もうオンコタイプDXするまでもなく、抗がん剤を受けた方がよいのではないだろうか?

とはいえ抗がん剤を受けるにせよ、再発スコアを知っておきたい気もする。やはりデータが多い方が、今後の治療に役立つのではないだろうか? 
それにしても、必要なデータなら保険適用してくれたらいいのに、と腹ただしくなってくる。ただでさえ、治療費でいっぱいいっぱいなうえに、当然ながら毎月の家賃も払わなければならないし、さらに40万とは……殺す気か!

父ヒロシに聞いてみると、
「そりゃ抗がん剤した方が安心やろな」との返事がすぐに返ってくる。
「抗がん剤が有効かどうか調べる検査もあるけど、40万かかるねん」
「お金のことは心配せんでええから、気になるなら検査もしたらええやん」
お金のことは心配せんでええからって、なに金持ちみたいなセリフ言うてんねん!と、ちょっとイラっとする。

ネットで調べたところ、最近は抗がん剤の副作用もかなり改善されているようで、抗がん剤しながら通勤して仕事を続けている人も多い。吐き気にもだえ苦しむというのは、過去の話のようだ(もちろん個人差はあるが)。
それに副作用には波があるようで、薬剤を投与されてから1週間くらいはしんどくても、あとの2週間でかなりおさまるようだ。
それならタイミングを選べば、9月のライブだって行けるかもしれない……

2021年6月29日

「抗がん剤どうする? オンコタイプする?」
診察室に入るやいなや、先生が聞いてくる。
「考えたんですけど……オンコタイプせずに、抗がん剤受けようかなと思って……グレーゾーンなら、どっちみち迷いそうだし……」と答えると、先生は
「ふうん」と頷き、首をかしげて考えながら
「それもいいかもね。スコアがよっぽど低いか、よっぽど高いかでないかぎり、また迷うかもしれないし。抗がん剤すれば、たとえ効果が1%でも再発予防になるしね」と言った。

「3週間のうち、しんどいのは1週間くらいなんですよね……」
「そうやね」
「9月のこの日のライブのチケットを取っているので、それに行けるように組んでほしいんですけど……」
「何のライブ? ユニコーン? 奥田民生の?」と先生に追及され、またも恥ずかしい思いを味わう。治療が終わるまで、あとどれだけ恥をかくのか?

それから先生はカレンダーを指で追って逆算して
「じゃあ7月27日からはじめたら、ちょうどいいんじゃない?」と提案してくれた。とりあえずライブには行けそうで安心する。
でも、しかし……これでよかったのだろうか?



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