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【小説】餃子とサウナ

その地名に、去年はなんのイメージもなかった。
漠然とおしゃれタウンなのは知っていたが、今や三軒茶屋はサウナと餃子の街だ。

駒の湯という、老夫婦がやっている銭湯。惑星最高のサウナに入り、その足で向かいの餃子屋さんへ。焼きと茹ではマスト。チーズだの黒酢だの、変わり種も含めて制覇する。友達のてっちゃんを誘って、2週間に1回くらいのペースで通っていた。

もともと、サウナは嫌だった。なぜあんな暑いところに自分から入るのか理解不能だった。それでも、今では重度のサウナーである。サウナの真髄は、サウナではなく水風呂にあることを教わったのが最後だった。
餃子は元から大好きだけど、今となってはサウナと一緒じゃないと嫌だ。でも、味は正直そこまでわからない。餃子の形をしていて、ニンニクの存在感を少しだけ感じる味が好きだけど、こだわるほどの理解はない。だから、冷凍餃子でも十分美味しくいただける。このためだけに、一人暮らし歴一年が経った今になって、フライパンの蓋を買った。

サウナ一回七百五十円、餃子屋さんに行けばプラス二千円くらい。だいたい合わせて三千円。こちらは水道代と冷凍餃子代、多分三百円もしないくらい。どっちが経済的かと言われれば比べるまでもないけれど、二週間に一回の三千円の贅沢がいかに良いリフレッシュだったのか、今ではよくわかる。近所に住むてっちゃんと顔を合わせれば、サウナの話ばかりしている。

焦らされた分、次にサウナで「ととのった」時どうなってしまうのか。怖くて、楽しみで、仕方ない。

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