葉山の寅次郎
数々の遍歴を経て辿り着いた自分の中での名機FujifilmのXT4の良さをフルに発揮できないまま購入から一年が経ち、流石に宝の持ち腐れ感が否めない状況を不甲斐なく感じ何処かに良い被写体はないものかとあれこれ検索していたら割と近場で「映え」なスポットを発見した。
実働時間こそ少ないので都合は付けやすい身ではあるが一日丸々休みという日がなかなか無くて近場であってもヒョイと気軽に撮影の旅、とはいかない。そんな折、勤務先がメンテナンス休館という絶好のタイミングを得たので数週間前からプランを練り決行当日を迎えた。前日までの天気予報は割と強めの曇り。連日続いている午後の天気急変の可能性もずっと示唆されていたが起床すると陽が差している。
これまでにも撮影当日に予報を覆し快晴、なんてことがよく起こったが今回も神様は味方してくれたようだ。快晴、とまではいかないが程よくプカプカと柔らかい雲が浮かび涼しい海風が吹いて暑いながらも心地好い撮影の旅となった。
そう、今回の目的地は「葉山」。一般人には無縁の高級リゾートだと思い込んでいたが降り立ってみると全くそんなことはない。勿論、ハイソサエティな方々向けの施設は点在しているので局所的に敷居の高さは感じるが漁港の周辺はおおらかで穏やかな空気に包まれていた。
お目当てのフォトジェニックなバス停を早々にカメラに収め、後はひたすら愛機と相性の良さそうな被写体を探して港や浜を歩いた。最近、お気に入りのフィルムシミュレーション「クラシックネガ」で海を撮ると何とも言えない深いグラデーションが現れ改めて青や緑との相性の良さを実感する。ただし赤は朱色に肌色は黄土色に転ぶので人物を健康的に撮るのには全く向いていない。
しかし「寅次郎」と名付けた人懐こいウミネコは例外だった。肉眼で見た有りのままの描写力に驚く。純白ではなく少し薄汚れた上半身(という言い方が合っているのか不明)も水墨画の墨のような色合いの羽も本当に見たまま。オールドレンズで撮ったので背景のグルグルボケも相まって唸るような質感の写真となった。
その写真をピークに何を撮ってもときめかなくなってしまったので早々に撮影終了し絶対食べて帰ろうと思っていた海鮮丼を貪るようにたいらげタイミング良く駆け込んだ湘南新宿ラインでは新宿まで爆睡。普段は寄らないKINOKUNIYAでおつとめ品のアップルパイをご褒美に買って帰った。
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