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少女漫画の瞳

目薬の効能なんて信じていなかった。

視力こそ弱いが結膜炎などの眼病の類にかかったことが片手の指で足りるほどなので目薬という代物に無縁な人生だった。その数少ない眼のトラブルで目薬を処方され上手くさせずに顔中ビシャビシャになってしまうのが大嫌いだった。

この数年、朝起きると眼球がカピカピに乾いていて瞬きをするのも辛い思いをしている。キッカケはコロナの後遺症の顔面麻痺だった。お医者さん曰く顔の筋肉が麻痺すると眼を開閉するのもままならなくなりその結果ドライアイが進行するので粘着性の強い目薬を処方しておきますとのこと。半信半疑で寝る前に塗ってみると翌朝楽だった。でも視界が白くなるほどの成分が気持ち悪くてすぐに辞めてしまった。

それから暫くして始まった朝起きると目がカサカサ病。どうやら寝ている間眼を開いているらしい。そう言えば昔、大学の寮生時代にルームメートから「お前は寝てる時に目が開いてて怖い」と指摘されたことがあった。

顔面麻痺よりもずっと前に僕は半眼を会得していたのだ。

悟りを開いた無の境地の半眼はそれは立派だと思うが、煩悩だらけの就寝時半眼はれっきとした障害だ。

そんな訳で濃度の濃い目薬を持ち歩くことになる。一日に10回ぐらい差すこともある。ルテイン40倍含有のサプリメントも併用して老眼も幾らか軽減し、目下ウルウル瞳を保てている。

ずっとウルウルしているので涙脆い情に厚い人だと勘違いされるのは嬉しい誤算である。

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