見出し画像

使用価値経済について

どうも、reiichiです。

今回は、モノの使用価値が重視される社会と、

それがどのような社会であるのか、

どのような目的を持つのかについて書きます。


よろしくお願いします。


使用価値と価値の対立

商品には使用価値と価値が存在し、

使用価値はその有用性を表し、

価値は市場でどれだけの貨幣量と交換できるのかを表す。


商品を常に生産し、

貨幣を無限に増殖させることが目的である資本主義社会では

使用価値よりも価値の方が重視されるようになり、

つまりモノの有用性よりも

モノが売れるかどうかが重視される。


そしてこれが

資本主義社会における

不平等や危機の原因となっている。


医療の例

医療を例として論じたい。

医療を使用価値の観点から見ると

それには「人間の健康を維持する」という有用性を持つ。

しかし、

医療を価値の観点から見ると

医療機関はビジネスとなり、

提供する医療サービスは商品として扱われ、

「人間の健康を維持する」という本来の有用性よりも、

「医療からいくら儲けられるか」が重視されるようになる。


これが、

「お金がなければ病気の治療を受けられない」という状況を作り、

不平等を発生させている。


健康的な生活はお金がないと得られない希少なものとして扱われ、

一部の人間だけが健康的な生活を送り、

それ以外の人間にはその権利が保障されなくなる。


実際、

医療が巨大なビジネスとして確立しているアメリカでは

医療を受けられる人と受けられない人の格差が拡大している。


このような不平等や危機を逃れるためには

利益の追求を優先とする社会から

社会的有用性の追求を優先とする社会への転換が必要である。


使用価値のある「モノ」の適応範囲

使用価値はモノの有用性を表すが、

この「モノ」がどの範囲まで適応できるのかという

疑問が存在する。

これについて、

「有用性があるかどうか」を中心に考えれば

「モノ」は物理的な「モノ」だけでなく、

非物質的な「モノ」にも適応できるようになるだろう。


つまり、

有用性があれば食べ物や住宅などの物理的なモノだけでなく、

医療や教育などサービスの領域にも

使用価値の論理は適応できる。


使用価値とコモンズ

人間にとって有用性のあるモノが中心となる社会が

使用価値経済である。


そして、

有用性のあるモノは

それを利用してお金儲けをするのではなく、

人々が管理し合い、共有するべきである。

そして、

全ての人間がそれにアクセスできるようにするべきである。

この、

我々が共有すべき社会的有用性のあるモノを「コモンズ」とする。


コモンズについて議論する際に、

どこまでの範囲をコモンズとして見なすべきなのかという議論がある。


しかし、

そもそもコモンズの範囲を決めること自体が無意味な議論であり、

むしろコモンズの領域をいかにして広げるのかを議論するべきである。


例えば「食」をコモンズとして捉えるべきと言えば

食料は全ての人々が生きていく中で必要であるからイメージしやすいが、

「オリンピック」コモンズとして捉えてみれば

利益目的のオリンピックから

「世界中の人々とスポーツを楽しむ」という

オリンピックの有用性が重視されるようになり、

新しいオリンピックの在り方を実現できる可能性を生むことができる。


オリンピックも、

利益のために存在するより

単に世界中の人々とスポーツを楽しむためにある方が

魅力的であろう。


あらゆるモノをコモンズとして捉えることで

お金が支配する社会から

人々の共同関係が支配する社会へと移行できる。

それにより、

経済成長や利益などにとらわれない

新たな豊かさを形成することができるようになる。


これが、使用価値経済の構想であり、目的である。



参考にしたもの

斎藤幸平(2020)『人新世の「資本論」』集英社新書

石崎悦史(2017)『使用価値を日本語で研究する意義と限界ーマルクスの一文を事例としてー』関東学院大学経済経営学会研究論集




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?