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外国人の新入社員の扱いに悩む日本人上司

最近は様々な企業で新卒の段階で外国人社員を採用するようになり、中には海外の大学を卒業してそのまま日本で就職するようなケースも見られるようになりました。

日本で働くことを選んだ外国人社員は基本的に日本文化への興味関心(特にマンガ、アニメ、ゲーム)が高く、一定レベルの日本語能力も備わっていましたが、やはり生まれ育った文化の違いにより周囲の日本人社員とのコミュニケーションがうまくいかず、中にはせっかく入社したのに職場に馴染めずに早期に退職してしまう人もいました。

一方で受け入れる側の日本人上司の方も外国人の新入社員の扱いに戸惑っており、異文化コミュニケーション研修の場でお話しを聞くと、以下のような悩みが多く聞かれました。

・周囲との協調性がなく、自分で勝手に進めてしまう
・もっと同期の日本人社員と交流してほしいのに、交流しようとしない
・自分の仕事以外には興味がなく、他の人が困っていても手伝おうとしない
・ちょっとしたお願いをすると、「それは私の仕事ではない」と断る

やはり共通しているのが、外国人社員は個人主義が強く、チーム意識が弱いという認識でした。

もちろん殆どの日本人上司の方は相手は日本人とは違うということは充分理解されており、いきなり外国人社員にチーム意識を求めるのではなく、「なぜ日本ではチーム意識を大事にするのか」をきちんと説明していましたが、それでも外国人社員に納得してもらうのが難しいとのことでした。

私はAKBのダンスをするために入社したのではありません!

ある企業では外国人社員本人に対しても「日本の企業文化」を理解するための研修を実施することになり、私が講師として外国人新入社員の方々に日本で働くうえでの悩みについて尋ねたところ、ある外国人新入社員から次のような不満をぶつけられました。

私の職場では毎年新入社員の歓迎会をやってくれるのですが、なぜか新卒の同期で余興の出し物をすることになり、毎週みんなで集まってAKBのダンスの練習をさせられています。しかも勤務時間内に歓迎会の練習をするのです。
歓迎会ならただパーティーをすればいいのに、なぜ余興までやるのかわかりません!
そもそも私はAKBのダンスをするために入社したのではありません!

この新入社員はアジア系の方で外見上は日本人とあまり変わらないのですが、アメリカで教育を受けてアメリカの大学を卒業しており、考え方は欧米人に近いものを持っています。

詳しくお話を聞くと、職場で以下のようなやりとりがあったことがわかりました。

◆なぜ歓迎会で余興をやるのか先輩や上司に尋ねたところ、「うちの部の伝統だから」という答えが返ってきた
◆なぜそんな伝統があるのか尋ねたところ、「部の結束を高めるためだ」と言われた
◆余興がなぜ部の結束を高めるのか尋ねたところ、「みんなで一つのことに取り組むことが大事だ」と言われた
◆なぜみんなで一つのことに取り組まないといけないのか尋ねたところ、さすがに先輩や上司も答えるのが面倒になり、「だって仕事にはチームワークが不可欠でしょ!」と言われてしまった

このとき気づいたことは、日本人上司は「チームで仕事をするのでチームワークが大事」という前提で話をしていたが、この外国人新入社員は「そもそもなぜ何でもかんでもチームで仕事をするのか?」から納得していなかったということでした。

そこで私は以下のような説明をしました。

前提として
・日本は島国で歴史的に農耕中心の文化であったので、村単位の集団生活が基本となる
・自然災害も多いため、村人が互いに助け合わないと生きていけない(困ったときはお互いさまという考え方)
・助け合うためには互いのことをよく知らないといけない(阿吽の呼吸)
その上で
・欧米でいう「チーム」とは、それぞれの役割が明確に決まっており、各自は自分の役割を最大限に果たすことが求められる(機能としてのチーム)
・一方で日本でいう「チーム」とは集団そのものであり、何をするにしても集団を維持することがもっとも重要である(コミュニティとしてのチーム)
そのため、歓迎会も余興も同期で集まってAKBを踊るのもすべてコミュニティを維持するための機能であり、まずは全員がコミュニティの一員であることを確認し合うのが目的である。(儀式的なもの)

ここまで説明して、その新入社員は納得までは至らなかったものの理解はできるようになり、一方的に抱いていた不満も少し軽減されました。(その後どうなったのかは私もわかりませんが)

この件で重要なことは、「チーム」という概念も人によっては認識が大きく異なるということでした。
下図のように外国人社員にとっての「チーム」はあくまで「機能」であるが、日本人上司にとっての「チーム」はコミュニティそのものであるため、そもそもの前提が大きく違っていたことが互いの「わかり合えない」につながっていました。

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このように、万国共通と思い込んでいた概念が実は全然違っていたということもあったりします。
例えば「納期」という概念も国によって重みが全然違います。

文化の異なる相手と一緒に仕事をする場合、「会社とは」「仕事とは」「同僚とは」「上司とは」といった具合に一つ一つの言葉の概念から確認し合うことが重要かもしれません。

以上ご参考になれば大変幸いです。

今回もお読みいただきありがとうございました。

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