令和ビデオゲーム・グラウンドゼロ——アートハウス・ビデオゲームメディア

“ビデオゲームの世界は、あなたが知っているものよりずっと広大だ” 異色のゲームや作家と…

令和ビデオゲーム・グラウンドゼロ——アートハウス・ビデオゲームメディア

“ビデオゲームの世界は、あなたが知っているものよりずっと広大だ” 異色のゲームや作家と、他にない切り口のテキストで彩るアートハウス・ビデオゲームメディア。 お問い合わせ:reibizero(アットマーク)aol.com

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【シーズンテーマ・日常】劇的な出来事とは別の日々とは何かを、あえてビデオゲームで体験することで見えるもの

ビデオゲームでは何らかの劇的な体験をさせるために、劇的な状況や世界観を設定していることがほとんど。だが、あえて真逆の日常そのものを描いて見せるゲームもある。 シーズンテーマ「日常」で取り上げるタイトルでは、あえてゲームとして、普段は見過ごされてしまうような体験を取り扱っている。また、今後はこのテーマによるコラムやインタビューも予定。 ●日常のなかの、ある瞬間ここでは、普通は鑑みられることの少ない普段の生活のなかでの行為や感情を、あえて見直してみるアプローチのビデオゲームを

    • 両目洞窟人間以外のビデオゲーム感応小説集 Inspire『龍が如く8』

      人は0からものを生み出しているわけではない。自分の体験を元に作り出しているものだ。では、そんな元となる体験はビデオゲームからでも可能なのか? それが両目洞窟人間以外による、ゲームに感応した実験小説集。 今回のゲームは『龍が如く8』。新たなる舞台である熱帯の場所に感応し、不条理な物語が出現する。人が言葉も通じない場所に放置されたとき、どこへ行きつくのか……? 執筆 / 葛西祝 方言監修・全体チェック / 両目洞窟人間 「(聞き取れない言葉)キミヤス アサダ(聞き取れない言

      ¥500
      • 『Playing Kafka』— “カフカの小説とは、笑いと恐怖のコントだった”と無料で気づけるゲーム。プレイヤー自身が得体の知れないシステムとなり、『審判』や『城』の主人公の運命を操作するかのようなADV

        文学とビデオゲームの関係ということでは、数ある古典的な小説家のなかでもフランツ・カフカの小説ほどビデオゲームにインスパイアを与えたものはないように思う。しかし、ここまでの不条理文学の古典となりすぎることで、固いイメージが少なくないだろう。 『Playing Kafka』はそうではなく、「あの小説はよく考えたらコメディとホラーが混ざり合ったコントみたいなものだったのではないか?」と、ビデオゲームの力によってかの古典を再解釈させる力を持つ一作なのである。 そんな再解釈を無料で

        ¥300
        • ▼日常▼ファジーでファンタジーなチャイルドフッドメモリー『Five Years Old Memories』【月の裏側のビデオゲーム】

          ▲シーズンテーマ『日常』に参加しているテキストです 『Five Years Old Memories』は強く人に勧めたい、だけどできることなら自身の体験として多くを知らないまま触れてほしいと、同時に願いたくなる稀有な作品のひとつだ。まさに「体験」としか呼びようのない本作に漂う独自のプレイフィールは、どんな言葉をあてがおうとも説明し尽くしがたいむず痒い思いを抱かされる。 計7つのチャプターからなる本作は、それぞれに作者である小光氏が友人たちへ聞いた5歳ごろの記憶に関するイン

          ¥300
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        【シーズンテーマ・日常】劇的な出来事とは別の日々とは何かを、あえてビデオゲームで体験することで見えるもの

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        • 両目洞窟人間ビデオゲーム “感応”小説集
          6本
        • 『月の裏側のビデオゲーム』—未知のゲームを発掘する特集
          13本
        • レビュー
          3本
        • 『過ぎ去りし日に向けた花かご』——池田伸次・自叙伝
          4本
        • 『PAUSE, RESUME』あるゲームプレイの意識の流れ
          2本
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          2本

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          [ECHOSTASIS]合同レビュー・異形のFPS&アドベンチャーが導く、ビデオゲームの向こう側とは?

          [ECHOSTASIS]はENIGMA STUDIOによって開発されたSFホラーFPSだ。現実がアルゴリズムによって管理されるだけでなく、アルゴリズムの創造性・人間性によって構築される世界を提示するエニグマ3部作の完結作である。 これまでエニグマ3部作では1作目『ENIGMA MACHINE』や2作目『MOTHERED - A ROLE-PLAYING HORROR GAME』がテキストアドベンチャー形式を導入したり、典型的なウォーキングシミュレーター形式で出来ていたりする

          ¥300

          [ECHOSTASIS]合同レビュー・異形のFPS&アドベンチャーが導く、ビデオゲームの向こう側とは?

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          『Looped』終わりなき時の円環に閉じられた永遠の恋愛——に見せかけ、だらだら暮らすデタラメなカップルの日々を体験する

          時の円環に閉じ込められ、永遠に繰り返される恋愛の時間。それは本当に幸福なのか、あるいは甘い地獄なのか。でも、別に本人はそこまで問題にしてないし、ふたりの関係で傷つくこともなく、けっこう普通に生活してたりする適当さ。考えてみれば、それこそが誰もが望む恋愛の形かもしれない……これが『Looped』で体験できるすべてだ。 ビデオゲームで恋愛の体験は、さまざまなかたちで作られてきた。プレイヤーが自分のスキルを磨いて相手に振り向いてもらうシミュレーションとか、すでに恋愛が成就し、ふた

          『Looped』終わりなき時の円環に閉じられた永遠の恋愛——に見せかけ、だらだら暮らすデタラメなカップルの日々を体験する

          両目洞窟人間ビデオゲーム感応小説集 Inspire5『どうぶつの森&ホットラインマイアミ』

          人は0からものを生み出しているわけではない。自分の体験を元に作り出しているものだ。では、そんな元となる体験はビデオゲームからでも可能なのか? それが両目洞窟人間による、ゲームに感応した実験小説集。 今回はなんとふたつのゲームに感応した小説が誕生した。ほのぼのスローライフの『どうぶつの森』と、パラノイアックな殺戮アクション『ホットラインマイアミ』の二作だ。まったく雰囲気もゲームデザインも違うふたつのゲームの体験から、深い鬱に沈む女性の苦痛とやすらぎ、怒りと解放の物語が誕生する

          両目洞窟人間ビデオゲーム感応小説集 Inspire5『どうぶつの森&ホットラインマイアミ』

          「ヤンキーには2種類いる。根明なヤンキーと根暗なヤンキーのふたつだ」——ゲーム『The friends of Ringo Ishikawa』で思い出した、福井県の不良中学時代のこと

          初めて煙草を吸ったのは13歳の春。中学に上がったころだ。時間は夜の23時ごろだったと記憶している。家には先に寝た弟しかおらず、母はスナックの仕事で夜は不在、父は博打を打ちにいくのでこれまた不在という、典型的なネグレクト家庭で育った。1994年、福井県でのことだ。 煙草を吸ってみようと思ったのは確固たる意思があってしたことじゃない。ただ、なんとはなしに吸ってみたのだ。結果的には大いにむせ返り、弟を起こしてしまった。それだけのことだったが、この日が不良少年としての自分の誕生だっ

          「ヤンキーには2種類いる。根明なヤンキーと根暗なヤンキーのふたつだ」——ゲーム『The friends of Ringo Ishikawa』で思い出した、福井県の不良中学時代のこと

          両目洞窟人間ビデオゲーム “感応”小説集 ・Inspire 4『どこでもいっしょ』

          執筆・写真 / 両目洞窟人間 企画・編集・ヘッダーデザイン / 葛西祝 『すなぎもちゃん387』 「逆に聞くが、貴様にとって、すなぎもちゃんってなんだったんだわゃ」  電話の向こう、鈴を転がすような声で問われる。  僕は窓の向こうを目をやっているが、何も見ていない。  僕は口を開く。 「僕にとって、すなぎもちゃんは、」  2008年、高校二年の冬の終わり、深夜2時45分。  これが僕とすなぎもちゃんとの最後の会話だった。  2005年、中三の僕はすなぎもちゃんと暮らして

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          両目洞窟人間ビデオゲーム “感応”小説集 ・Inspire 4『どこでもいっしょ』

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          ▼実時間版トーク▼『アートハウス・ビデオゲームとは何か』

          本メディアを立ち上げて数か月経ち、あらためて “主流から反しているが、なんらかの強力なクリエイティビティを持つゲーム”を取り扱っていく方向として、これまでのAAAとインディーみたいなシンプルな構図とは違う、 “アートハウス”という観点でのビデオゲームとは何かをまとめるトーク。

          ▼実時間版トーク▼『アートハウス・ビデオゲームとは何か』

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          【NEWS】90年代陰界の伝説、完結。『クーロンズ・リゾーム』全8巻がWindows・Macにてリリース。『クーロンズ・ゲート』で残された伏線が、30年が経ったいま回収され、終わる。DL販売終了の可能性もあるため、購入はお早めに。

          1997年。香港がイギリスから中国へ返還される年にシンクロニシティを起こすかのようにプレイステーションにてリリースされた『クーロンズ・ゲート』は、デジタルメディアにて九龍城塞の混沌を再現した。 まだ商業媒体のフィールドで3DCGの表現が模索されているなかで、リアルな香港のネオンや土地の汚れをも描き切った本作は、後に現実の都市をモデルにしたオープンワールドやアドベンチャーを先行していたといえるかもしれない。とはいえ発売から30年近くが経ったが、いまだに比肩するタイトルは現れて

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          【NEWS】90年代陰界の伝説、完結。『クーロンズ・リゾーム』全8巻がWindows・Macにてリリース。『クーロンズ・ゲート』で残された伏線が、30年が経ったいま回収され、終わる。DL販売終了の可能性もあるため、購入はお早めに。

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          ▼日常▼『Neyasnoe』出口なき絶望は、やがて一篇の詩となる——ロシア“失われた世代”の暗闇を体験する異色ウォーキングシミュレーター【月の裏側のビデオゲーム】

          シーズンテーマ『日常』で特集しているタイトルです ある国の、ある場所に住む他人を想像するのはきっかけがなければ難しい。 ロシアによるウクライナへの侵略戦争が2022年に発生して以降、戦火のニュースから他人を想像するきっかけを与えたのは攻撃を受けるウクライナの市民の方だ。戦争に関する様々な報道や映画、テキスト、そしてビデオゲームも含めてウクライナ市民の生活を日本人が想像するきっかけは溢れている。だが、ロシアの市民についてはそうではない。 現在のニュースを追う限り、ロシアは

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          ▼日常▼『Neyasnoe』出口なき絶望は、やがて一篇の詩となる——ロシア“失われた世代”の暗闇を体験する異色ウォーキングシミュレーター【月の裏側のビデオゲーム】

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          店長はかつてヤクザだった。『VA-11 Hall-A』に似た、暴力の気配が渦巻く店で働いていた頃。『過ぎ去りし日に向けた花かご』第4回

           あなたは誰かに人生を変えられたことがある? 今にも吹き飛びそうっていう思春期の不安定な自分が、誰かによって強く支えられた経験は? 自分はある。 「一日を変え、一生を変えるカクテルを!」Cyberpunk Bartender Actionと銘打たれたビジュアルノベル『VA-11 Hall-A』では、バーテンダーの主人公「ジル」は店を始めるときにそう言う。  『VA-11 Hall-A』はさまざまな客との出会い、店のスタッフとの交流を通して、時に人を揺さぶり、あるいは自身が

          ¥500

          店長はかつてヤクザだった。『VA-11 Hall-A』に似た、暴力の気配が渦巻く店で働いていた頃。『過ぎ去りし日に向けた花かご』第4回

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          ここにビデオゲームが表現しうる、さらなる可能性がある——アートハウス系ビデオゲームを代表するイベント『A MAZE.2024』の注目作を追え。

          「A MAZE.」とは、アートハウス系ビデオゲームを特集する、ドイツ・ベルリンで開催されるイベントである。 まずアートハウスとは、既存のビデオゲーム産業で評価されるタイトルとは距離を置き、作家性や新しい表現手法のほか、より現実的・社会的なテーマを押し出したタイトルを意味している。それらを特集するA MAZE.とは、平たく言ってしまえば映画におけるカンヌ映画祭やベルリン映画祭みたいなものと考えてもらってもいいかもしれない(とはいえ映画におけるカンヌやベルリンは、国際的な映画販

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          ここにビデオゲームが表現しうる、さらなる可能性がある——アートハウス系ビデオゲームを代表するイベント『A MAZE.2024』の注目作を追え。

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          『酔っぱライジング』Nintendo Switchにはまだ可能性がある!孤高のゲームコントローラークリエイター・宮澤卓宏氏の最新作は、Switchの能力を引き出す一作【東京ゲームダンジョン5】

          東京ゲームダンジョン5に出展された、Switch用ゲーム『酔っ払いジング』はふざけたゲームである。「プレイヤーが実際に酔っ払いの千鳥足の動きをする間スーパーヒーローになる。そのヒーローの力で電撃を回避したり敵を吹っ飛ばしたりしてステージクリアだ」というゲームである。でもこれがSwitchに出てきたいることに、まず一笑いするまえに感動があった。 先日、任天堂の公式Twitterより、同社の代表取締役社長を務める古川俊太郎氏の名義でNintendo Switchの後継機種に関す

          『酔っぱライジング』Nintendo Switchにはまだ可能性がある!孤高のゲームコントローラークリエイター・宮澤卓宏氏の最新作は、Switchの能力を引き出す一作【東京ゲームダンジョン5】

          なんか、みんな、敗北してしまったね。そして、生き残りビトとは、ぜんぜん気の合う気がしないよ【PAUSE, RESUME #2】

          6行ずつ文章を綴ります。 いくつかのスクリーンショットを置きます。 新たなるゲーム実況であり、 新たなるゲームレビューの形なのです。 いいえ、そんな大言壮語は、持ち合わせてはいません。 ただ、こんな感情を写したくなっただけです。 企画・執筆 / 若葉庭 編集・ヘッダーデザイン / 葛西祝 駅では、誰かの背中を見ながら、歩いてる。いつも。 まあ、ながらスマホも、まぁ誰かの背中みたいなものだしね。 思考は、あーあ、とことん奪われてしまったなぁ。 もはや、わたし

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          なんか、みんな、敗北してしまったね。そして、生き残りビトとは、ぜんぜん気の合う気がしないよ【PAUSE, RESUME #2】

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