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イルミネーション観光

今年のイヴはぼっち。乗り込む車内はクリスマスムードかと思えば大体真っ黒コートの背中で埋め尽くされ大体イヤホンをして眠る。私は今日の夜ご飯何食べようか考えたりしながら温かい背もたれに身を委ねる。電気の通った電車の席に抱かれるXmasもある。

実家のXmasはイヴ。居間は畳。ツリーは買って貰えない。食卓には手作りエビフライが並ぶ。サンタを信じていてプレゼントをちゃんと手紙にし強請る。毎年違う種類のたまごっちが枕元に届く。一体何故、何個も所持したかったんだ。水色、白。もう、キャラ名はあまり覚えていない。小さくてやわやわで何とかっちって名前は覚えている。

Xmasについて覚えていることもある。イルミネーション観光。冬場、何歳までか父親、兄と夕食後にイルミネーションを廻る恒例行事。イルミネーション観光とは車の中から知らない家のイルミネーションを勝手に盗み見ることでちっぽけ。真っ暗闇にイルミネーションを見つける瞬間はツチノコでも見つけた喜び。「光ってるあれは水泳が一緒の○○君のお家」「結婚式場だから派手」「此処のお家、今年はやらなくなった」なんて言いながら。車内は温かいのにわざわざ窓を開けて覗きぴゅうと入ってくる冷たい風が、上気した頬を冷やす。ピカピカイルミネーションに心は踊る。おうちではあったかい炬燵、ケーキが待つ。

震災を機にイルミネーションのあるお家はぐんと減りイルミネーション観光をすることも少なくなる。「Xmasの思い出をまたやりたい」と言ったら父は付き合ってくれるだろうか。

東京の街はそもそも明るい。イルミネーションがあるから2割増しで明るいのにみんな暗い服を着る。サンタが赤いのは得策。大人になってイルミネーション観光は不可能。車窓からピカピカを探す。家に帰ったらあったかいご飯、炬燵もないけれど逞しいからコンビニスイーツでも買う。

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