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筋トレで食欲を減らす最適なトレーニング強度とは?

 ダイエットや減量で我慢しなければならないのが「食欲」です。

 食欲に抗いながら、エネルギー摂取量を制限することによって理想の体型に近づくことができます。でも、食欲に抗うのは、辛いことですよね。

 そこで近年、注目されているのが筋トレによる食欲抑制効果です。

 食欲抑制効果を高めるトレーニング様式を検証したのがUNESPの研究報告です。

 筋トレによる食欲抑制効果は、レッグプレスのような単関節トレーニングよりもスクワットのような多関節トレーニングが有効であることが示唆されています(Freitas MC, 2021)。

 また、UNESPの研究報告では、食欲抑制効果に有効なトレーニング強度は、高強度トレーニングよりも中強度トレーニングで効果が高いことが報告されています(Freitas MC, 2020)。

 このように、現時点では「スクワットやベンチプレスなどの多関節トレーニングを中強度で行うこと」が筋トレ後の食欲抑制効果を高める方法論として提唱されているのです。

 しかし、低強度でのトレーニングよる効果の検証が行われていませんでした。

 そこで2022年12月、中強度と低強度のトレーニングによる食欲抑制効果について検証が行われたのです。


◆ 空腹感を抑えるトレーニング強度とは?


 国立台湾師範大学のLiuらは、中強度と低強度のトレーニングによる筋トレ後1時間での食欲反応について調査しました。

 若い男性(平均23±2歳)を被験者として、トレーニングを低強度で行うグループ、中強度で行うグループ、対照群の3つにランダムに分けました。強度やセット間の休憩時間は以下のように設定されています。

・中強度:8RMの85%の負荷で8回、4セット
・低強度:8RMの45%の負荷で15回、4セット
・セット間の休息間隔:90秒

 それぞれのグループて多関節トレーニング(デッドリフト、チェストプレス、スクワット、ロー)が行われ、筋トレ前、直後、30分後、1時間後に空腹感、食欲調整ホルモン(グレリン、ペプチドYY(PYY))、乳酸の濃度、自律神経系の活動が計測されました。

 その結果、筋トレ後の空腹感は対照群に比べて、中強度、低強度ともに直後、30分後、1時間後で減少し、両強度間での有意な差は認められませんでした。

Liu HW, 2022より筆者作成

 また、中強度および低強度は、グレリン濃度を減少、PYY濃度、乳酸濃度を増加させ、これらの変化に両強度間の有意差はありませんでした。

 これらの結果からLiuらは、総負荷量が同じであれば、低強度でも中強度のトレーニングと同じような食欲抑制効果を得られることが示唆されたとしています。

 このような筋トレによる食欲抑制のメカニズムとして、トレーニングによる乳酸の増加による食欲増強ホルモンであるグレリンの減少、食欲抑制ホルモンであるPYYの増加が寄与していると推察されています。

 

 Liuらの報告により、食欲を抑える筋トレ方程式が徐々に見いだされてきました。

トレーニング強度:中強度から低強度
トレーニング様式:スクワットやベンチプレスなどの多関節トレーニング

 筋トレによる食欲抑制効果については、効果がないという報告もあるため、今後はこれらの研究結果をまとめて解析するメタアナリシスの報告が待たれます。

 近年の研究報告では、筋トレには腹部を引き締める除脂肪の効果が示唆されています。
筋トレには「腹部を引き締める」除脂肪の効果がある!?

 筋トレを行うことによって自律神経系の交感神経が活性化され、カテコラミンが増加します。カテコラミンはアドレナリン受容体を介して、脂肪分解を促進しエネルギー合成を高めるホルモンです。このようなカテコラミンの作用によって除脂肪の効果が得らる可能性が推察されています。

 このような筋トレによる除脂肪効果に加えて、今回の食欲抑制効果が期待できれば、ダイエットや減量で筋トレを行うことは有効な方法と言えるかもしれませんね。

 


◆ 参考文献

Freitas MC, et al. Appetite Is Suppressed After Full-Body Resistance Exercise Compared With Split-Body Resistance Exercise: The Potential Influence of Lactate and Autonomic Modulation. J Strength Cond Res. 2021 Sep 1;35(9):2532-2540.

Freitas MC, et al. Hunger is suppressed after resistance exercise with moderate-load compared to high-load resistance exercise: the potential influence of metabolic and autonomic parameters. Appl Physiol Nutr Metab. 2020 Feb;45(2):180-186.

Liu HW, et al. Effects of acute resistance exercise with different loads on appetite, appetite hormones and autonomic nervous system responses in healthy young men. Appetite. 2022 Dec 17;182:106428.


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