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筋トレ前の静的ストレッチは筋力増強の効果を低下させる最新エビデンス

 「筋トレ前に静的ストレッチングをすると、筋肥大の効果が損なわれる」

 2005年、ルイジアナ州立大学の研究により、筋トレ前の静的ストレッチは、運動回数(レップ数)を減らし、筋肥大の効果の指標となる総負荷量(強度×回数×セット数)を減少させることで筋肥大の効果が低下する可能性が示されました(Nelson AG, 2005)。

 この研究を皮切りに、筋トレ前の静的ストレッチング(静的ストレッチ)が筋肥大の効果を損ねる研究結果がつぎつぎと報告されています。

 サンパウロ大学の研究では、実際に筋トレ前に静的ストレッチをすると、運動回数が18%、総負荷量が23%減少することが報告されました(Barroso R, 2012)。

 さらに、カンピナス州立大学の研究では、筋トレのみでは筋断面積が12.7%増加したのに対して、筋トレ前に静的ストレッチを行うと7.2%の増加に留まることが報告されています(Junior RM, 2017)。

 これらの研究結果から、現在では、筋トレ前の静的ストレッチは筋肥大の効果を損ねることが示唆されているのです。

 そして、2022年12月、筋トレ前の静的ストレッチは筋肥大の効果だけでなく、筋力増強の効果も減少させる可能性があるという最新のメタアナリシスが報告されました。

*メタアナリシスとは、これまでの研究結果を統計的手法により全体としてどのような傾向があるかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究デザイン

 今回は、この最新のメタアナリシスの結果をご紹介しましょう。




◆ 筋力増強の効果が10%低下する?


 トレーニングの前に静的ストレッチングをすることは、今でも当たり前のように行われています。しかし、ここ10年のスポーツ科学の研究により、静的ストレッチを行うと、トレーニングのパフォーマンスが低下することが報告されてきました。

 そして、筋トレにおいては筋肥大の効果だけでなく、筋力増強の効果も減少していしまう可能性が示唆されているのです。

 その報告をしたのがパレルモ大学のThomasらです。

 2022年12月、Thomasらは筋トレ前の静的ストレッチによる筋力増強の効果への影響について検証された35の研究結果(被験者1,179名)をまとめて解析しました。

 筋トレは平均週3日、10週間行われ、トレーニング前に30秒×4セットの静的ストレッチが行われました。このような条件における筋力増強の効果への影響が解析されました。

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