テーピングのやり方【基礎編】
スポーツ現場でよく使用するテーピング、膝や肘、足首などテレビで目にする機会も多いかもしれません。多くは関節に使用しており、その用途は”関節の安定”です。元々関節にはある程度の”遊び”があり、このおかげで関節はスムーズにゆとりを持って動くことができます。日常生活であれば問題なく動かせる関節も、スポーツ場面のような瞬間的に強い筋力を発揮する運動や、素早く可動域限界まで伸ばす動きの中では逆にこの”遊び”が命取りになります。”遊び”を出すために関節は、あえて不安定な環境にあるとも言え、不安定が故に関節周囲の組織や靱帯の怪我をしやすいからです。不安定な関節にテーピングを使用することで、スムーズな動きと関節可動域を引き替えに一時的な安定を得ることができます。それにより競技場面の怪我を防ぐ目的があります。
テープには大きく分けて”伸びる物”と”伸びない物”があります。前者はキネシオテープと呼ばれ関節の固定をするテープではなく、リンパ液・血液といった循環を促進し、痛みや凝りの改善に期待できます。また筋肉・皮膚の動きを円滑にし、よりスムーズな関節の動きや、関節可動域拡大効果があります。それに対し後者は非伸縮性テープと呼ばれ関節に強い安定を与える固定に特化したテープと言えます。
中でもキネシオテープは高い伸縮性が特徴で、この伸縮性により貼った部分の皮膚(表皮)を持ち上げ、滞留しているリンパ液や血液循環を改善させます。これにより老廃物は除去され、血液中に含まれる酸素や栄養素も行き渡るようになります。結果的に、自然治癒力も高まり、筋肉痛、関節痛、怪我や手術後の内出血から早期回復が可能になります。また血行が良くなることで慢性的な高血圧や自律神経系の乱れにも影響を及ぼすことができます。貼っておくだけで効果がありますので、普段の生活をしながら、無意識に改善・リハビリ要素を含んだ運動を行なうことが出来るのが最大のメリットです。
テーピングのリスクについて知っておく必要があります。非伸縮性テープはスポーツ用途以外で長時間使用・常時使用してしまうと関節可動域制限が生じる恐れがあります。関節安定のため固定を強めるといった物で、長時間使用すればするほど関節の動きは硬くなり、その分可動域制限を生じさせます。常用したりすれば尚更ですね。非伸縮性テープ使用の際には「競技場面が終了したら取り除く」「常用しない」ことが大切になります。また固定に伴う一時的な循環不良を早期に回復させるために温めたり、マッサージするなど使用後のケアも重要になります。
キネシオテープは筋肉の走行に合わせて、特定の筋肉の活用を高めたり弱めたりすることができます。そのため貼る位置や筋肉の走行に一定の知識がないと、意図せず筋活用にアンバランスを生じさせたり、怪我の原因になる恐れがあります。またリハビリ目的で長時間貼る事も珍しくないため皮膚トラブルが発生しやすく、かぶれやびらんなどの注意が必要です。キネシオテープは知識、理論を基に貼ることを勧めています。
両方に言えることですが、各メーカーによって撥水性・通気性および伸縮力などの違いもあります。正しい知識を基に用途に応じて使用していかないと、思わぬ怪我の原因にもなります。
一概にテーピングといってもテープの種類からその用途は様々です。理学療法士観点から考えると、やはりキネシオテープは非常に面白いですね。“無意識下で変化を起こせる”ということは脳卒中後の麻痺症状にも有効で、大脳皮質を介さず運動の誘導ができるボバースの“ハンドリング”に近いものを感じます。
ただ固定するといったイメージから、“痛みを取り除く、回復を早める、持続可能なリハビリができる”など応用ができるアプローチには可能性を感じますね。張り方はいつか動画で紹介しますね。