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「あやかし学校の贄姫さま」第3話

シーン① あやかし学校・教室

実衣M「贄姫生活4日目」
実衣M「授業とか大変ことも多いけど、嬉しいこともある」
実衣M「お弁当がおいしい!!」

ひとつの机に椅子を寄せて、お昼ご飯を食べている実衣と猫娘のニャーコ。
実衣の前には、豪華な御重箱。

猫娘 「あんた、いつも豪華なごはん食べてるわよね」
実衣 「えふぁいひふぉがほふひひほるの(偉い人が用意してくれてるの)」
実衣はほっぺた丸くして食べ続けている。

実衣 「今日もおいひー♡」

チラッと教室の隅を見やる猫娘。
わっぱ飯(おかずは実衣のお重といっしょ)をひとりで食べているジロウがじーっと実衣を睨んでいる。

猫娘 「それ、ほんとに偉い人が用意してる?」
実衣 「どういうこと?」

猫娘 「たとえばー、教室にいる誰かさんがぁー、贄姫に好いてもらおうと毎日頑張って作っているとかぁー(大声)」

ガタッと、急に立ち上がるジロウ。
わっぱ飯抱えて慌てて逃げていく。

実衣 「?」もぐもぐ

シーン② 実衣の自宅前

翌日。登校直前。
実衣がサイトウさんがドアを開けているハイヤーに乗ろうとしている。

?? 「本当にお嬢様してるんだな」
実衣 「?」

振り向くと、そこにはスポーツ少年な幼馴染。

実衣 「あ、たっちゃん!」
実衣M「彼は幼馴染の宮本竜也。幼稚園の頃からの付き合いだ」

竜也は「あ、どーも」とサイトウさんと会釈している。

実衣 「たっちゃん元気そうだね!」
竜也 「それはオレのセリフだろうが」

のんきな実衣に、竜也はデコピン。

竜也 「これでも心配してたんだぞ」
竜也 「病院で取り違えられて、生みの親がすんげえ金持ちだと発覚したから、今の家族と生活しながらもお嬢様学校に通うことになったっていうから……」
実衣 (すべてお任せの転校だったけど、わたし、そんな設定になってたの!?)

竜也 「まあ、元気ならいいけどさ……」少し恥ずかしそう

竜也 「それよりおまえ、太った?」
ガーンッ、とショックを受ける実衣。

シーン③ あやかし学校・再び教室

その日のお昼休みも、実衣と猫娘は今日も一緒に食べている。
だけど、今日は実衣の箸が進んでいない。

猫娘 「あら、もう食べないの?」
実衣 「うん……あげる」

お重を差し出す実衣。
猫娘、隅のジロウをチラチラ気にしながら。

猫娘 「好き嫌いはよくないわよー」
実衣 「そういうわけじゃないんだけど……わたし、気付いちゃったの」しょんぼり

実衣 「わたしって、贄姫として総大将さんに食べられる運命なんでしょ?」
猫娘 「まぁねぇ……」
実衣 「つまり、このお弁当も罠だったんだよ……」

実衣 「わたしを太らせて、おいしく食べる気なんだー!!」

わぁーんと泣き出す実衣。
すると、また教室のジロウがガタッと立ち上がって教室から逃げていく。
それを気にせず、机につっぷして泣く実衣。
そんな実衣の背中を、シキがポンッと叩く。

シキ 「そういうことでしたら、僕が協力しましょう!」

『人間女子のトリセツ☆令和版』を片手に、今日もキラキラしているシキ。

シーン④ あやかし学校・運動場

その日の放課後。
シキ 「実衣さんは体型にお悩みの様子!」
シキ 「それには、こちらでの運動がおすすめです!」

シキが「じゃーん」と見せるのは、模様のある帯のような布紐。

シキ 「その名を『蛇飛び』!」
シキ 「こうしてタイミングよく跳躍することで、体脂肪の燃焼をうながす運動です」
シキが手本を見せてくれる。普通の縄跳び。

実衣 (普通の縄跳びじゃん)

呆れる実衣の隣に、猫娘も同席。

猫娘 「昔はこの子も、ずんぐりむっくりだったからね。参考になると思うわよ」
クオ 「余計なことを言うなっ!」

実衣 (たしかに、縄跳びは全身運動っていうしね)
実衣 「よし、せっかくだからやるか!」

実衣はクオから縄(?)を受け取って、跳び始める。

実衣 「妖怪は帯で縄跳びするんだね」
クオ 「いや、蛇ですよ」
実衣 「ん?」

そのとき、実衣は布紐と目があった。
布紐の端が「シャーッ」と牙を見せる。

実衣 「ぎゃああああああああああ!」
クオ 「止まると毒で攻撃されますからね。強制的に拷問……コホン、運動するなら最適かと!」

実衣 「いやあああ~」
猫娘 「こら! 危ない!!」

蛇の妖怪(蛇帯)を投げ捨てて逃亡する実衣。

シーンチェンジ
息を切らしながら、ついた先は調理室の裏。

実衣 「やっぱり妖怪なんてやだぁ……」

ぜえはあ息を切らしていると、
窓から調理室でジロウが本(『人間女子の大好きレシピ☆令和版』)を片手に料理しているのが見える。

ジロウ「カロリーとは、なんだ……?」
実衣 (あの人、総大将候補のひとりだ……)
実衣 (天狗のジロウさん……だっけ?)

実衣はジロウのそばのお重に気がつく。
それは、自分が毎日お昼に食べていたお弁当箱。

実衣 (あの人が作ってくれていたの!?)
実衣 (一生懸命、人間の口に合う料理を覚えてくれたのかな?)
実衣、なんだか罪悪感。

そんなとき、頭上からこそこそと誰かの声。

妖怪 「人間だ……きゃは」
妖怪 「今なら誰もいない……きゃはは」
妖怪 「食べれる……きゃははは」
妖怪 「そうしたら、おれらが総大将……きゃはははは」

実衣 (この展開……なんか既視感が……)

実衣がおそるおそる見上げると、
人面樹(人の首のような花を咲かせた木)が「きゃははは」笑って、
実衣に襲いかかってくる。

実衣 「ぎゃああああああああ!」

思わず実衣が目を閉じたとき、
聞こえたのはザシュザシュッとした音とうめき声だけ。

???「目を開けていい。終わったぞ」

その声におそるおそる目を開ければ、刀をしまうジロウの姿。
人面樹はボロボロに斬られたあと。

ジロウ「学校でひとりになるな。候補から漏れても、あわよくば総大将の座を狙う輩はやまほどいる」

実衣 (助けてくれたんだ……)
実衣 「あ、ありがとうございます……」
ジロウ「……ふん」

耳を赤くしたジロウ。無言で立ち去ろうとする。
そんなジロウに、思わず声をかける実衣。

実衣 「クオみたいに、口説いてきたりしないの!?」
ジロウ「オレにそんな資格はない」

ジロウ「さっそく贄姫を害するような真似をしてしまった」
ジロウ「言い訳になってしまうが、肥えさそうというつもりはなかった」
ジロウ「ただ同胞がいない学校で、少しでも食事が心慰めになればと」

ジロウ「いや、それすらも言い訳だな」苦笑
ジロウ「総大将に選ばれるため、お前に付けいろうとしただけなんだから」

ジロウ「もう余計な真似はしないし、お前にも近づかない」
ジロウ「……すまなかった」

立ち去ろうとするジロウの腕を、実衣は引く。

実衣 「量だけ! 減らしてくれませんか!?」
実衣 「あなたのご飯、もっと食べたい……!」視線をそらしてテレ。

ジロウ「それは、オレと夫婦になりたいと……///」
実衣 「いや、それは違うから」真顔で拒否
実衣 (妖怪ってすぐ話が飛躍する!)

シーン⑤ あやかし学校・また教室

翌日のお昼休み。
猫娘だけでなく、ジロウとも一緒にお重の載った机を囲んでいる。

猫娘 「あらぁ。あたしもご相伴にあずかっていいわけ?」
ジロウ「その代わりといってはあれだが、オレが共にいれないときは、おまえが実衣のそばにいてやってほしい。実衣が一番心を開いているのがおまえだろう」
猫娘 「ま、対価が続く限りはいいかもね~」

そのとき、クオがジロウの襟首をひっぱる。

クオ 「貴様、抜け駆けを……」
ジロウ「実衣がオレも一緒がいいと所望したのだ」
ジロウ「妻の願いを叶えるのは、夫の務めだろう」
クオ 「まだ貴様の妻じゃないし、しかも、呼び捨て……」
ジロウ「もう将来を誓った仲だ。当然だろう?」
クオ 「きさま~っ! 俺様がずっと我慢していたことを~!」

クオが、ジロウを蛇で絞殺そうとけんかし始めたのをよそに、
猫娘がこそこそ実衣に尋ねてくる。

猫娘 「もう総大将決めたの?」
実衣 「いや? ぜんぜん」

だけど実衣はふたりのけんかなんか気にせず、今日もごはんに舌鼓。 

実衣 「今日もお弁当が美味しいなぁ♡」
猫娘 「あんた、すごく長生きしそうだわね」
実衣 「ふぉう(そう)?」

その様子を、離れた場所から見ていたリュウキ。
リュウキ 「なるほど……」
リュウキ 「おれも、ああやって仲良くなればいいんだな……」

3話、おしまい。


あらすじと第1話はこちら

第2話はこちら


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