見出し画像

【ドラマ・ショート】探偵・真島吾一『暗殺者の女』


真島探偵事務所へある女が飛び込んできた。

30歳くらいの女で濡れた長い髪を揺らし、黒いコートに身を包んでいたが、血を流し、右手にはナイフ、左手にはビジネスケース、持つ手には手錠が掛けられていた。

何やらとんでもなくヤバい状況から逃げてきたようだ。

探偵事務所の代表、真島吾一は女に駆け寄った。

真島「ど、どうしたんだ?!大丈夫ですか!?」

謎の女「こ、これを…」

女はコートのポケットから鍵を真島に渡した。

真島は鍵を受けとると、女は倒れこみ、真島が介抱する。

真島「救急車を呼びますから…」

謎の女「早く、これを…」
女は苦しそうな声で振り絞るように囁いき、ケースを真島に差し出した

真島「これは…何なんだ…そんな事より救急車を呼びます」

謎の女「だ、だめ…呼んじゃ、しばらくここにいさせて…」

真島「だって怪我しているじゃないか…」

謎の女「ここであなたが治療して…用意してほしいものがあるの…」

真島は感づいた、探偵という職業柄、この手の手合いをとっさに理解したのである。

真島「そうか、とりあえずベッドに運ぶよ…」

真島は女の右手に持つナイフを預かり、腕を肩に回しわき腹を抑え、ベッドのある部屋へ運んだ。女が渡した鍵は手錠とケースの鍵だった。

医師免許と弁護士資格を持つ真島は、彼女を治療した。幸い軽症だったので、手持ちの医療器具で傷口を縫合したのである。

治療が終わり、ベッドに寝ている女に真島は尋ねた。

真島「何があった?」

謎の女「助けてほしいの…」

真島「どう助ければいいんだ?…」
「それより、俺は真島、真島吾一だ。あんたの名は?」

謎の女「あなたの事は知ってるわ…だから来たの、私の名は未亜、金城未亜。ミアって呼んで」

真島「ミアさん、一体何があった話してごらん」

未亜「私は政府機関の人間なの、あなたは知っているわよね、あの暗殺一課を?」

真島「ああ、もちろん知ってるよ、政府公認の極秘組織の殺し屋、暗殺一課だろ」

美亜「ええ…」

真島「あんたはその一員ってわけだ、そうなんだな?」

美亜「そう…」頷く美亜。

状況を話し始める美亜 (回想シーン)

「私はあるミッション(任務)を遂行中だったの、それは隣国の諜報部員を暗殺するという任務だったんだけど、全て政府が用意したシナリオ通りの殺しだったんだけど、逆に私が殺されるという計画にすり替えられていたの…政府の目的は、口封じのため暗殺一課のメンバーを消す事だったの…私は暗殺一課の殺しの記録を持ってどうにかここまで逃げ切って来たのよ…」

真島「なるほど、で、その記録簿を持っている限り、またあんたを殺しに来るわけだな、そしてその記録簿をもとに政府と取引する気だな?」

美亜「そう、話しの解りが早いわね」

真島「その記録をマスコミに公表しない代わり自由の身にしてほしい、と」

美亜「ええ、あなたなら政府とのパイプを持っていると聞いているし、交渉を依頼したいと思ったの、やってくれるわね?」

真島「それはかなり難しいがね、依頼された仕事はこれまで全て成し遂げてきたからね、任せてくれ…」

美亜「ありがとう…」

真島「ただし、もうあんたは日本を出なければならない…国籍も変え、名前も変え、新たな人間にならなければならんがな…」

美亜「それは大丈夫、もう慣れてるわ、そういうの」

真島「だろうな…」



真島は独自のルートを使い、政府との交渉を行い、美亜を自由の身にし、殺し屋家業から身を引かせた。




彼女は、今頃何をしているだろうか…。



異国の地で幸せにしているだろうか…。


そして、ある日真島探偵事務所に差出人不明のエアーメールが届いた。


絵葉書で、青い海の上を飛ぶ鳥が描かれていた。


それは、美亜は幸せに生きている証明であると、真島は確信したのであった…。



第1話 終







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?